メールマガジン No.86(2018年7月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.86(2018年 7月号) 2018/7/31 

□□目次□□
1.文学研究科(文学部)新任教員あいさつ
2.「言の葉大賞」優秀賞(大学生部門)受賞報告
3.第31回初心者のための九州フランス語コンクール優勝報告
4.カープ観戦記
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より

 

1.文学研究科(文学部)新任教員あいさつ

  文学研究科(文学部)には今年度4月に3人の准教授の先生が着任いたしました。今回のメルマガでは、先生方の自己紹介をお届けいたします。

○応用哲学・古典学講座 倫理学分野 准教授 後藤雄太

 はじめまして、新任教員の後藤雄太です。
 出身地は岐阜県です。中高生のころから哲学・思想に関心を持つようになり、ここ広島大学文学部の哲学科に進学しました。学部時代はインド哲学を専攻しており、仏教における空の哲学を中心に学びました。

 大学院からは、人生や社会の問題により直接的にアプローチできる倫理学専攻に移り、学部時代における「空」への問題関心とも重なる「ニヒリズム」をテーマに研究を開始しました。主に手掛かりとした哲学者は、「ニヒリズム」を自身の哲学における重要なテーマとしたニーチェ、そしてニーチェのニヒリズム論を独自の観点から批判的に継承したハイデガーです。

 大学院修了後は、生命倫理や情報倫理など、いわゆる「応用倫理学」の研究も始めるようになります。生命倫理学的課題としては、終末期医療の在り方や死の受容の問題といった、現代における「死に関する問題」を研究する一方、人工妊娠中絶や優生思想といった「誕生に関する問題」にも取り組んでいます。また、 情報倫理学的課題としては、現代社会を席巻するインターネットやスマートフォンなどの情報技術との然るべき<距離>の取り方について研究しています。

 大学院修了以降、なかなか就職が決まらず、10年間ほど不安定な生活を送りました。ようやく北海道にある私立大学に採用され、7年間勤務し、今春、母校である広島大学に戻ってきました。育ててもらった母校への恩返しを多少なりともできればと考えています。

○欧米文学語学・言語学講座 フランス文学語学分野 准教授 マリ=ノエル・ボーヴィウ

 今年4月に、フランス文学語学講座に着任したマリ=ノエル・ボーヴィウと申します。
もともと日本文学と欧米の文学の繋がりに興味があり、比較文学を専攻し、フランスのリヨン第3大学大学院文学研究科を修了しました。今まで、芥川龍之介の晩年作品の中にある随筆らしいものや断章形式が見られる小説を研究対象にし、フランス文学理論を通して、外国文学の断章形式、アフォリズム、近代短編小説、または近代的な(非)物語性との関係を研究していました。

 博士論文では、芥川の作品における外国文学の直接的な影響と芥川の作品と外国文学との関係を、ジャンル、文体、作家の声の位置という観点から研究しました。つまり、大正文学の国際化と文学出版の近代化に伴って変わった芥川の文学観を探求することによって、世界文学における芥川の独特な断片の詩法を分析しました。

 今後は、大正時代以降の日本文学と近・現代の西洋文学における、アイロニーや簡潔さを生みだす方法、文学の媒体になっている雑誌の役割、そして、作家の言表姿勢という観点から、研究を展開させる予定です。

 フランス語教育の面では、青山学院大学や立命館大学で経験を重ねながら、言語の「響」ということを大切にするようになりました。具体的な響である発音と言葉の使い方から伝えられる比喩的な響まで、フランス語教育は広い意味での文学・文化を直接繋げていると思いますので、それを学生さんが感じられるようになる教育を行いたいと思います。
今後広島大学に少しでも寄与できるように 、日仏関係を通して日本とフランスを繋ぐ教育と研究を続けて参りたいと思います。

○地表圏システム学講座 地理学分野 准教授 後藤拓也

 2018年4月から地表圏システム学講座(地理学分野)に着任しました、後藤拓也と申します。昨年度までの10年間は、高知大学人文学部に勤務していました。このたび、母校である広島大学文学研究科の地理学教室で研究・教育に携わることとなり、大変光栄に思っています。

 私の専門分野は、人文地理学のうち「農業地理学」と呼ばれる研究領域です。卒業論文から一貫して、「アグリビジネス」と呼ばれる農業関連企業(食品企業や商社など)の活動が、国内外の農業地域にどのような影響を与えるのかを、フィールドワークにもとづいて明らかにしてきました。その一連の成果は、2013年に単著『アグリビジネスの地理学』(古今書院)として刊行させて頂きました。

 現在は、これまでの研究手法を活かして、日本政府が2000年代から進める「企業の農業参入」に着目し、それが農村地域に与える影響について研究しています。現代日本では、過疎化や高齢化によって農業の「担い手不足」が深刻化し、食品企業やコンビニエンスストアなどが新たな農業の担い手として注目されています。広島県を始めとする中国地方は、全国で最も早くから過疎化や高齢化が進んだため、多くの自治体がそれら企業を農業の担い手として重視しています。よって今後、広島県の農業・農村振興を考える上で、私の研究が少なからず貢献できるのではないかと思っています。

 また、私が所属する地理学教室は、1967年からインドでの地域調査を継続しており、全国有数のインド研究拠点として確固たる地位を築いています。私も15年前に、恩師である岡橋秀典先生のもとで初めてインド調査に参加させて頂き、それ以来、インドの農業地域研究を続けてきました。インドでは1990年代からの経済発展に伴って食習慣が大きく変化し、日本と同じく、食品企業などのアグリビジネスが農業に関わるケースが増えています。それら企業群の活動が、インドの農村地域をどのように変容させているのかを明らかにすべく研究を続けています。

 今後も、日本とインドの農村においてフィールドワークを続け、農業地理学の研究成果を積み重ねていく所存です。それによって、農業や農村の地理学研究に関心を持つ学生を一人でも多く育て、伝統ある広島大学文学研究科の発展に貢献することができればと考えています。ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

2.「言の葉大賞」優秀賞(大学生部門)受賞報告

 一般社団法人「言の葉協会」(京都市)が主催する第8回「言の葉大賞」募集 において、文学研究科博士課程前期1年(日本文学語学)の長内綾乃さんが大学生部門の優秀賞を受賞されました。受賞された感想を寄せて頂きましたので紹介いたします。

○「言の葉大賞」を受賞して

 文学研究科の博士課程前期1の長内綾乃(おさないあやの)です。このたびは「言の葉大賞」の優秀賞をうっかり受賞してしまいました。そこで本メルマガに寄稿するよう依頼があったので、以下に応募の経緯でもお話ししようかと思います。

 さて、あれは昨年の大学院入試のころに遡ります。当時大学4年生のわたしはくすぶっていました。というのも、友達はやれ就活だの教採(教員採用試験)だのと多忙を極め、研究室で会っても履歴書を書いたり、参考書を広げていたりしていました。院試(大学院入試)を控えているわたしとは違って、すぐそこの将来のために頑張っている人たちがまぶしいと感じていました。

 そのような状況でわたしは、院試の勉強の傍ら趣味でエッセイを書いては投稿する、を繰り返していました。自分が置いてけぼりにされているような、なんとも言えないこの気持ちを何かで消化したかったのでしょう。とにかくたくさん書いては投稿していたので「言の葉大賞」に何を書いて投稿したのか全く覚えていませんでした。

 ただ、「言の葉大賞」に「何か」を投稿したことは覚えています。大学院の入試から合格発表までの一週間を利用して、大きなリュックを背負って、両肩にカメラをぶら下げて電車で九州を一周したときに、「言の葉大賞」の看板を見たからです。面白そうだなと、手帳に「言の葉大賞」と走り書きをし、旅から帰ってきてから原稿を書きました。たぶんそんな感じでとってしまった賞なのです。受賞してしまってたくさんの人がエッセイを読んだと声を掛けてくれましたが、なんとも恐れ多いことです。

 あのエッセイに登場した友達は生物生産学部を卒業し、福岡でJAの職員として働いています。卒業した今でも連絡を取り合い、ついこの間は広島まで遊びに来てくれました。今でももちろん大切な友達です。わたしはといいますと、大学院に進み研究に励む日々を送っています。先日は学会に行き、全国の研究者と研究者の卵を見てきました。将来研究職を志す身として、「このままではいけない。もっとハングリーに頭を柔らかくせねば。」と決意を新たに今後の大学院生活を送っていこうと考えております。

作品は、同協会のホームページ内でお読みいただけます。

第8回「言の葉大賞」優秀賞(大学生部門)の盾

第8回「言の葉大賞」優秀賞(大学生部門)の盾

3.第31回初心者のための九州フランス語コンクール優勝報告

 7月1日にアンスティチュ・フランセ九州(博多)で「第31回初心者のための九州フランス語コンクール」が開催され、文学部2年梶谷未来さんが優勝されました。また、2位、4位、7位にも広島大学の学生が入賞しました。優勝された梶谷さんに感想を寄せて頂きましたので紹介いたします。

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 今回このような賞をいただくことができ大変光栄に思います。
この大会に出場するにあたって、多くの方からご指導いただきました。中でもネイティブの先生による発音練習は自分にとって非常に良い経験となりました。フランス語では子音よりも母音を強く発することが重要であり、そうすることで日本語とは違った独特な響きが生まれます。そのことを私はこれまでほとんど意識したことがなかったので、この大会を通してフランス語をより自分のものにすることができ嬉しく思います。

 言語は単にコミュニケーションのツールとなるだけでなく、その言語が話されている地域の文化や習慣を知る手がかりともなります。日本人は会話の中でしばしば沈黙してしまうことがありますが、フランス人はそれを嫌います。言語を学習しているとそのような気づきに出会えるので面白いです。これからも楽しみながらフランス語の勉強を続けていこうと思います。

表彰される梶谷未来さん

表彰される梶谷未来さん

参加者全員での記念撮影

参加者全員での記念撮影

4.カープ観戦記【歴史文化学講座准教授(東洋史学分野)舩田善之】

 2018年7月27日金曜日、互助会による恒例のカープ観戦が行われた。観戦席は、昨年に引き続き、バーベキューを楽しみながら観戦できる団体席「ちょっとびっくりテラス」である。西日本豪雨被害の影響で、JR山陽本線が運転を取りやめている状況ではあったが、被災地を勇気づけるかのように首位独走中のカープを応援すべく、多くの会員と家族の方々がマツダスタジアムに集ったのであった。

 互助会のカープ観戦、実は曰く付きで、例年なぜか勝てない。今年こそはと期待しながら、授業終了後、他の参加者とともに東広島駅へ急ごうとするも、広大中央口にはタクシーが停まっていない。東広島駅で新幹線を1本逃すと次は1時間後である。一向にタクシーは姿を見せず一同焦り始めたところ、タイミングよく自家用車に乗って球場へ向かう参加者に拾って頂く。幸先いいぞと思いきや、山陽自動車は大渋滞。試合開始後それほど遅くない時間帯に到着できるかと思いきや大幅に遅れてしまうという、球場に着く前から試合とは関係ないところで逆転に次ぐ逆転、手に汗握る展開である(同乗者4人だけ)。

 車中一人がスマホで確認すると、カープは幸先よく初回裏に1点先制とのこと。期待は膨らむばかり。そのうち車内のテレビで中継が始まり、イニングが進んでいく。そして、3回裏、バティスタが満塁ホームラン!みんな喜ぶのだが、この盛り上がりを球場で体験できずに何とも微妙な雰囲気である。

 午後7時20分過ぎ、ようやくマツダスタジアムに到着。1杯目のビールの美味しいこと。そして、試合は中盤に入り、スコアは5-0のままで楽勝ムードである。ただ、カープの攻撃、チャンスはつくるものの得点は入らず試合は停滞気味に。もはや観戦・応援の方もそこそこに、ビールが進む(私だけ?)。

 しかし、終盤にもハイライトが二度訪れた。一つはご存じの通り、7回裏、試合を決定づけた田中の満塁ホームラン!球場の盛り上がりは最高潮に。そして、もう一つは、スラィリーのバズーカから放たれたTシャツが我々の観戦席まで届き、情報企画室の山本さんが見事掴み取ったのであった。

 試合は10-1の圧勝、互助会が観戦すれば敗戦というジンクスもついに解消された。この調子でリーグ優勝、そして日本シリーズ優勝を勝ち取り、豪雨被害からの復旧・復興に取り組んでいる広島の人びとに元気を与えてほしいと願うばかりである。

久々の勝利を確信して記念撮影

熱いグリルで肉を焼くT教授

スライリーバズーカでgetしたTシャツ

5.文学研究科(文学部)ニュース

○広島大学オープンキャンパス2018/研究室訪問及び受験相談を行います。

【日時】8月21日(火)・22日(水) 11:10~12:10及び11:10~15:00
【場所】文学研究科各研究室および大会議室

○第16回「文藝学校」講演会(文学部ゼミナール)を開催します。

【日時】8月25日(土)10:30~17:00
【会場】鳥取県米子市「本の学校」今井ブックセンター 2階 多目的ホール(鳥取県米子市新開2-3-10)

詳しくは、文学研究科HPをご覧ください。

○リテラ「21世紀の人文学」講座2018を開催します。

【テーマ】南ヨーロッパの言語と文学を楽しもう!
【日時】12月1日(土)13:30~16:40
【場所】広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階         
           マルチメディアスタジオ

※ 詳細は文学研究科HPでお知らせします。

6.広報・社会連携委員会より【広報・社会連携委員会委員 下岡友加】

 メールマガジン86号をお届けします。今号は文学研究科に着任された3名の新任教員の方からのご挨拶と、懸賞論文・コンクール受賞者の学生2名からの感想、さらにカープ観戦記を頂きました。貴重な声を寄せて下さった皆様、誠にありがとうございます。

 7月6日に発生した西日本豪雨災害において被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。広島大学も休講やバスの代行運行、ボランティアの派遣など、様々な対応に追われてきました。豪雨翌日、東広島キャンパスから広島市内の自宅まで約8時間かけて車で帰宅したときに見た光景は、原民喜の原爆小説「夏の花」においてカタカナ表記された、非人間的、非日常の世界を想起させるものでした。この出来事を「わがこと」として考える営為と智慧を持つことが、日常を突如失った人々の力になる、その最初の一歩なのではないでしょうか。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  久保田 啓一
編集長:広報・社会連携委員長  宮川 朗子
発行:広報・社会連携委員会

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