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柿渋の抗ノロウイルス作用の発見
 

ノロウイルス(Norovirus)を原因とする食中毒および感染性胃腸炎は全世界に広がっており、年間数十万人から数百万人に及ぶ患者が発生しているといわれています。
ノロウイルスによる胃腸炎は重症化することは稀で、死に至ることはほとんどありませんが、その症状は下痢、嘔吐、腹痛、発熱など激しいものです。
現在、ノロウイルス感染に対する有効な治療法(治療剤)はなく、その対処法は、十分な水分の補給と安静です。また、予防法として、食材等の加熱処理(85℃以上,1分間)や塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム等)、ヨード剤(ポピドンヨード等)、アルデヒド剤(グルタラール等)などによる消毒が挙げられています。

 
渋柿
 

しかし、これらの消毒剤は人体に有害であり、食品に混入することは許されないため、調理器具などの消毒に用いる際には厳格な注意が必要です。そのため、抗ノロウイルス作用を有するヒトに対してやさしく安全な消毒剤の開発が望まれてきました。

われわれは、アルタン株式会社(東京都)との共同研究で、これまでに柿渋(食品添加物名:柿タンニン)が強い抗ノロウイルス作用を示すことを明らかにし、「抗ノロウイルス剤、ノロウイルスに起因する非細菌性胃腸病の予防及び治療剤並びにノロウイルスの消毒方法」として特許の出願を行いました。

ヒトのノロウイルスは、ヒトの小腸内でのみ増殖するウイルスであり、これまでにノロウイルスを増殖させるためのモデル動物や培養細胞系は確立されていませんでした。そのため、ノロウイルスに対する消毒剤を開発するためには、培養可能な近縁のウイルス(ネコカリシウイルスなど)を用いるか人体実験によって抗ウイルス作用を調べる方法しかありませんでした。
われわれは、胃腸炎患者由来のノロウイルスを用いてウイルスゲノムを測定する逆転写PCR法(RT-PCR法)を利用し、ウイルスゲノムの消失を指標として抗ノロウイルス効果を調べました。その結果、柿渋にノロウイルスのゲノムを99%以上減少させる作用があることを突き止めました。

柿渋は、古くより中国では漢方薬、日本でも民間治療薬として用いられてきました。また、清酒の製造工程で清澄剤としても用いられており、食品あるいは食品添加物としての安全性に問題はありません。これまでに、すでに抗ノロウイルス作用を有する柿渋含有のアルコール製剤の開発にも成功しており、アルタン株式会社より業務用のスプレー式消毒剤として販売されています。今後、ノロウイルスによる急性胃腸炎の治療薬への応用も期待されます。

     
ゲノム(遺伝子)測定のためのリアルタイムPCR装置
ゲノム(遺伝子)測定のためのリアルタイムPCR装置
 
病原体を安全キャビネット内で扱っている様子
病原体を安全キャビネット内で扱っている様子
     

<この研究に関するお問合わせ先>
大学院生物圏科学研究科
教授 島本 整 
TEL:082-424-7897
E-mail: tadashis@hiroshima-u.ac.jp
(@は半角に変換してください)
研究室HP:http://home.hiroshima-u.ac.jp/fmh/shimamoto/dao_ben_yanHOME/dao_ben_yanHOME.html

     

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