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所長メッセージ

Research Institute for Radiation Biology and Medicine

 原爆放射線医科学研究所(原医研)は、放射線影響・医科学分野における我が国最大の大学附置研究所として原爆医療を基盤に放射線影響の基礎研究から医療開発研究に関して世界をリードする研究成果を挙げて参りました。
  当研究所が推進してきた放射線影響・医科学研究は、今新しい時代を迎えつつあります。放射線被ばくによるゲノム損傷に対する修復機構や細胞応答機構が次々と明らかにされ、これらの機構がゲノムの恒常性を維持するための根幹的なメカニズムであると同時に、個体を様々なストレスから守る細胞の防御機構であることも明確になりました。同時に、新たな研究で解明されたメカニズムの活用により放射線障害の新しい治療法を開発する可能性が生まれています。原爆被爆者では、被爆後65年経過した現在でも、がん発症は増加を続けており、一度受けたゲノム障害により生涯持続する健康問題は、新しい学術が解明すべき大きな課題です。

                                                                   
  一方、社会的には、地球温暖化防止政策による原子力エネルギーの利用や産業、医療での放射線利用の激増が予想されています。ここで問題となる低線量放射線被ばくの健康問題は、学術的にも未だ解決されておらず、産業政策にも大きな影響を与える国際的な課題です。また、チェルノブイリ原発事故や東海村臨界被ばく事故の経験に加え、世界は核テロの脅威にも直面しており、WHOや国際原子力機関(IAEA)は、国際的な緊急被ばく医療体制の整備を進めています。広島大学は、我が国の緊急被ばく医療の拠点として文部科学省より「西日本ブロックの三次被ばく医療機関」に選定され、その実務活動を展開すると共に、国際的な緊急被ばく医療ネットワークである国際原子力機関(IAEA)のRANET、及びWHO-REMPANに参加し国際的な活動も実施しています。当研究所は、これらの活動の中心的役割を担い、研究活動の成果を社会に還元する活動にも取り組んでいます。


  この様な学術的、及び社会的動向により、当研究所の役割は益々重要なものになっています。当研究所では、21世紀COEプログラム「放射線災害医療の先端的研究教育拠点」の活動で得られた国際拠点としての基盤の上に、今後も新しい時代の要請に対応しつつ、先端的な放射線影響・医科学研究が行える世界トップレベルの国際研究教育拠点の形成を目指しています。この度、文部科学省が新たに創設した「全国共同利用・共同研究拠点」制度に応募し、文部科学大臣から「放射線影響・医科学研究拠点」として認定を受けることができました。本制度は、大学に設置されている研究施設のうち、全国の関連研究者が共同で利用・研究することにより、我が国の学術の発展に特に資する施設を、文部科学大臣が拠点として認定し、国全体の学術の発展を図ることを目的としています。研究所では、これまで研究所に蓄積してきた国際的な研究成果や研究施設・機器を幅広く公開し、共同研究活動を通じて積極的に我が国の放射線関連分野の学術研究の発展に貢献したいと考えます。


  同時に、これらの研究成果を大学院教育に還元し、当該分野の研究者や医師の育成を行います。原医研の教員が所属する大学院医歯薬学総合研究科では、放射線影響研究所や放射線医学総合研究所が参加した連携大学院が組織されており、全日本体制で世界最先端の研究に基づく教育ができる体制が整備されています。この大学院教育を通じて世界で活躍できる人材を育成して参ります。


  今後も原医研は、従来の活動に加え「放射線影響・医科学研究拠点」としても先端的な放射線障害の研究を通じた医療開発研究や安全研究を推進し、放射線領域の人材育成を進めて参ります。同時に、その成果を原爆被爆者や世界の被ばく者の医療に役立てて行きたいと思います。
  関係各位のご支援とご鞭撻をお願い申し上げます。

原爆放射線医科学研究所長 神谷研二