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広島大学利益相反ポリシー

I.大学の使命と産学連携・産学官連携の位置付け
 大学の基本的使命に、教育,研究に次ぐ第三の柱として、社会との連携がある。地域社会や国際社会に対し、大学の有する知的・人的・物的資源を積極的に開放・活用し、社会と密に連携した継続的なイノベーションによる未来社会の設計と建設に貢献することが、大学の基本的使命の一つとして位置付けられている。広島大学(以下「大学」という)も、「世界のトップレベルの特色ある総合大学」を目指しており、その一環として積極的に社会との連携を推進している。産学連携及び産学官連携(以下単に「産学連携」という)は、この社会連携の具体的な一形態である。そして、この産学連携は、大学にとって、次の意義を有している。即ち、


(1) 大学の研究成果を社会に移転して社会で活用されることは、大学の社会に対する貢献であり、国民生活の向上、即ち、国民の一層の豊かさと幸せに大学が貢献するものである。


(2) 大学の研究成果を社会に移転して社会で活用されることは、社会に目に見える形で大学の存在を示すものであり、大学の社会的認知度を高め、その存在を顕示し、関係諸機関を含めた社会的評価を高めるものである。


(3) 大学の研究成果を社会に移転して社会で活用されることは、次の研究資金の創出をもたらし、科学技術の継続的イノベーションを可能にするものである。


(4) 大学の研究成果を社会に移転して社会で活用されることは、研究者の社会的認知度を高め、その存在を顕示し、学内外の評価を高めると共に、報償として直接的に還元されることにより、研究マインドの向上をもたらし、質の高い研究成果の創出を誘引するものである。
かかる意味においても、産学連携は、大学にとって極めて大きな意義を有していると言わざるを得ない。


II. 産学連携と利益相反
 真理の探求を目的とし、人類共通の財産とするための研究成果の公表を原則とする大学と、適正利潤の追求を目的とし、各種営業機密を競争の源泉の一つとする企業とは、その基本的な性格や役割を異にしている。産学連携を進める上で、大学及び大学の教職員等が、産業界から知的財産権についての実施料等の形で収入を得たり、共同研究相手である特定の企業に対して所定の責任を負う事は当然に想定され、又、妥当なことである。しかしながら、大学と企業との上記性格の相違から、教職員等が企業との関係で生じる利益や責任が、大学における責任と衝突する状況も生じ得る。かかる状況が、いわゆる「利益相反(conflict of interest)」である。即ち、産学連携の推進に伴って生じる利益相反とは、「大学や教職員等が、企業等の外部から得る経済的利益等と大学本来の教育・研究上の責任が衝突する事」をいう。この利益相反には、連携企業からの研究資金の受け入れや技術移転収入或いは兼業企業の報酬等の主として金銭的な利益と、大学本来の教育・研究上の職務との相反(狭義の利益相反)と、兼業企業やコンサルティング企業に対する責務と、大学における本来の責務との相反(責務相反)とがあり、これらを総称して利益相反という。
 このように、利益相反は、産学連携を推進する上で日常的に生じる状況であり、法令違反の問題ではなく、又、この状況の発生自体が問題ではなく、要は、大学に対する社会的受容性(社会的信頼:integrity)の問題である。従って、大学が適切な対応を誤ると、大学自体の社会的信頼が損なわれ、結果として、産学連携の推進が阻害され、ひいては大学の使命である社会との連携も停滞することになる。係る観点から、大学としての利益相反に対する管理は、重要な項目であるといわざるを得ない。


III. 利益相反ポリシーの対象者
 利益相反ポリシーの対象者は、大学に雇用されている教員、職員、大学の設備を利用している者等、大学との関係において大学の就業規則に従うことを契約した者(以下「教職員等」という)であって、直接,間接に産学連携に携わる者とする。大学の学生、大学院生及びポストドクター(以下「学生等」という)は、一般的には大学とは雇用関係にないので本ポリシーの対象にはならないが、教職員等による教育・研究との関連が深く、教職員等の行う学外との共同研究や受託研究に参画する学生等はこのポリシーの対象者となる。


IV.利益相反の管理
 大学として、教職員等に発生する利益相反の管理を行い、利益相反問題を教職員等の個々人の問題とするのではなく、大学の問題として取り組むことにより、大学が産学連携に適切に関与して深刻な事態に陥ることを未然に防止する。同時に、利益相反についての社会への説明責任を大学が負うことを明確にし、これにより、教職員等が、安心して産学連携活動に取り組める環境を整備する。
 このための管理システムとしては、「望ましくない行為を列挙して禁止する」という行為規範型アプローチも考えられるが、係るアプローチは、産学連携自体にマイナスのイメージをもたらし、産学連携の健全な推進を阻害するおそれがある。又、同一の行為であっても、その背景や状況等により、多様なマネージメントが可能である。従って、産学連携を阻害しないために、「個別事情に応じて多様な解決方法を提案し、実施するための一定の手続きと体制を整備する」との考え方に立脚し、管理システムの構築を行う。


V. 利益相反管理体制
1. 利益相反委員会(仮称)の設置
 大学は、学内の利益相反の管理機関として、学内関係者(産学連携センター長等)及び学外有識者(顧問弁護士等)を委員とする「利益相反委員会」を設置する。当委員会では、主として自己申告制による教職員等の利益相反問題を審議し、大学としての判断を示す。但し、職務発明規則や技術移転規則に規定した発明者等への実施料収入についての報償金については、その多寡に拘らず、その収入自体を利益相反問題とはしない。尚、この審議事項及び判断結果は公開を原則とするが、固有名詞等のプライバシーに関する事項は、別段の事情がない限り公表しない。当委員会の運営等の詳細は、利益相反規則に定める。


2. 利益相反相談室(仮称)の設置
 大学は、教職員等の利益相反問題について、具体的な相談に対応する専門家によるカウンセリングを行うための「利益相反相談室」を必要に応じて設置する。この場合に、教職員等のプライバシー保護に十分な配慮を払うため、顧問弁護士等による学外専門家をカウンセラーとして採用することも視野に入れて人選を行う。尚、当相談室の詳細は、利益相反規則に定める。


3. 利益相反事務部門の設置
 大学は、上記利益相反委員会及び利益相反相談室の諸事務等を行うための利益相反事務部門を設ける。当事務部門において、教職員等からの利益相反自己申告制度の運営及び必要な調査並びに学内における利益相反問題についての啓発活動(セミナー、パンフレットの作成等)を行う。尚、当事務部門の運営等の詳細は、利益相反管理要領に定める。