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学部長のあいさつ

未来を見すえて


 生物生産学部長  谷 口 幸 三
 
 人類が農業を始めて1万年になります。狩猟採取の時代に比べて、より多くの食料を安定的に確保できるようになったことで、人口が増え、職業、階層の分化が促進され、古代文明が生まれました。古代文明はさらに農業の生産技術を高め、食料生産と人口を増やしましたが、他方では、森林の荒廃や土壌の流失などの環境破壊をひき起しました。地上に刻まれたさまざまな文明の多くは、同じような崩壊の経緯を辿りました。

 近代文明を生み出した産業革命以降、特にこの半世紀の間、世界の人口は爆発的な増加を示しました。食料の生産方法は国によって違いますが、世界全体として、農耕地の拡大と灌漑、化学肥料と農薬の利用、動植物の育種、機械化などさまざまな農業技術の改良を通して拡大してきました。しかし、温暖化ガスの増加と激しい気候変動を始め、熱帯雨林と生物多様性の減少、農耕地の塩害と土壌の流失、水不足など地球レベルでの環境問題が食料生産に影響を与えています。最近では、原油価格の高騰を契機に、トウモロコシのような作物からのエタノール生産が増え、食料とエネルギーが競合する時代になっています。

 私たちの生物生産学部では、生物のさまざまな機能を活用、強化して、食料生産や環境浄化にとどまらず、新たな微生物や動植物、有用なタンパク質の生産、機能性食品や医薬品の開発などによって、人間の生活の質と福祉を向上させ、人間を含む生物の環境を保全することを理念としています。そのための教育研究を通して、中国四国地域だけでなく国内外で活躍できる幅広い視野をもった人材を育てることを目標としています。

 教育課程として1年間を前期と後期に分け、入学から2年次前期までは、21世紀市民としての豊かな教養と社会的素養を身につけ、専門共通の幅広い基礎知識を学びます。2年次後期からは「生物圏環境学」、「水産生物科学」、「動物生産科学」、「食品科学」、「分子細胞機能学」のいずれかのコースに属し、その専門プログラムを学びます。学びの場には、大学の講義室や実験室だけでなく、農場や船、水産実験所、食品製造工場などの充実した附属施設、さらには地域や国内外のフィールドも活用します。各プログラムとも、少人数教育を特徴としており、専門的な知識技能を習得し、論理的な思考力、積極性、実践力、文章力、コミュニケーション能力を磨きます。

 東日本大震災と原子力発電事故は、これからの食料生産とエネルギー利用、環境保全のあり方だけでなく、文明のあり方について大きな問題を突きつけています。未来を担う皆さんが共に学び、考えていくことを願っております。