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注目される最先端研究の一例(2010)
注目される最先端研究の一例
世界初、
折りたためる橋「モバイルブリッジ」の
プロトタイプ完成!

工学研究院
助教 有尾 一郎

2009年大学祭の架設実験風景(現在のモバイルブリッジは手摺完備)
災害時に迅速なインフラ復旧や被災者救助が可能になる「世界初、折りたためる橋モバイルブリッジ」の試作品を完成させました。既設の仮設橋は、大型車両を想定した重厚な構造と特殊性から、組み立てに数週間以上を要します。開発した試作品は、アルミ合金製の多重折畳み機構からなり、部材長さ1mのものを約8mまで1分弱で伸ばせます。もし橋が折りたためたら?強度を保ちながら折りたたむには?と研究を続け、少ない制御力、てこの原理、スマート構造概念を組み合わせることで試作品の開発へと結び付きました。モバイルブリッジが迅速な救助やライフラインの確保に役立つことが期待されます。

移植部からの細胞漏出を克服
軟骨欠損の患者に福音をもたらす
軟骨再生技術

医歯薬学総合研究科
教授 越智 光夫

磁力により細胞を軟骨欠損部に定着させた実験
膝に関節軟骨障害を有する患者は、日本国内で約1000万人と推定され、軟骨欠損の患者に負担の少ない根本的な治療の開発が求められています。欧米で開発された治療法の短所を克服し、世界に先駆け軟骨細胞の三次元培養を開発しました。これは、「第二世代自家培養軟骨」と呼ばれ、患者から採取した少量の軟骨細胞をゲル状の立体的な形に成形した後培養し、欠損部位に移植するものです。また、体に何度もメスを入れたくないことから、内視鏡下で注入する培養細胞に鉄粉を混ぜ、強力な磁石で骨の欠損部分に集めて、骨や軟骨を再生する治療法も開発(特許取得申請中)しました。

うまみ成分のコハク酸が
がん細胞の増殖や血管新生を抑制
コハク酸の疾病予防作用を初めて発見

生物圏科学研究科
教授 加藤 範久

コハク酸による血管新生(動脈片からの毛細血管の伸長)の抑制
コハク酸は貝類、清酒などのうまみ成分として知られています。そのコハク酸の生理作用として、抗腫瘍効果があることを世界で初めて発見しました。ラットに天然ポリフェノールであるエラグ酸やルチンなどを摂取させると、腸内発酵産物のコハク酸が著しく増加しました。そのコハク酸の増加が健康にどのような影響を及ぼすのか研究する過程で判明したものです。胃や大腸のがん細胞の増殖やがんの転移や浸潤に関わる血管新生がコハク酸により著しく抑制されることが実験で判明し、貝類などを素材とした新しい機能性食品の開発が期待できます。

音(おん)の歴史から、
日本語の現在(いま)を知る
-漢字の音(おん)は、外国語だった-

教育学研究科
教授 佐々木 勇

(左)親鸞加点「三帖和讃」(右)専修寺蔵「三帖和讃」声点図
(『増補 親鸞聖人眞蹟集成』(2005-2007年、法蔵館)による)

「音」と「訓」とを持ち、日本語を書くために欠かせない「漢字」は、かつては、外国の文字でした。その音も、外国語音でした。漢字音が外国語音であった時代も、現代日本の英語がそうであるように、使用者の学習の度合い、使用目的、使用の場の相違によって、声調(アクセント)を含めた音が異なっていたことを突き止めました。その研究成果をまとめた『平安鎌倉時代における日本漢音の研究』で、新村出賞(2009年度)を受賞しました。最近は、親鸞という一人物を取り上げ、親鸞が残した全資料の漢字音を明らかにすることで、鎌倉時代における音(おん)の位相差を解明することに取り組んでいます。


世界初、
ヒト型自閉症マウスモデルの
開発に成功!

医歯薬学総合研究科
教授 内匠 透

ヒト染色体異常をマウスでモデルする。
「ヒトゲノム計画」が終了した現在、さまざまな疾患の病態が分子レベルで明らかになってきましたが、精神疾患は今なお不明なままです。診断基準があるものの、血液検査や画像診断のような機械化できる客観的診断方法がない精神疾患に、分子生物学的にアプローチをしています。自閉症も他の多くの病気と同様、生物学的異常が原因で引き起こされる病気です。発生工学的手法を用いた「染色体変異マウス」によるヒト精神疾患モデルマウスの作製や遺伝学的解析、精神行動に異常を起こす候補遺伝子の探索・解析に取り組み「こころ」の病に迫っています。この研究により第46回ベルツ賞を受賞しました。

普遍的な仕組みを解明する基礎研究の成果
鉄鋼のように強い
汎用プラスチックの創製

総合科学研究科
特任教授 彦坂 正道

プラスチックシート中、最高強度

(注)iPP(NOC):本研究の成果のポリプロピレン超高性能樹脂

高分子材料は軽量・安価・高形成性という利点から広く利用されていますが、強度や耐熱性などの材料特性が金属などに比べて著しく劣ります。その解決につながる結晶性高分子の結晶化度増大の方策が探求されてきました。10年近い歳月を費やし「結晶の赤ん坊」であるナノ核生成の直接観察に成功し、結晶化初期のメカニズムを解明しました。融点以下に冷やした高分子の融液を引っ張って結晶化させるユニークな製法により、鉄鋼を超える比強度を持ち、安価でリサイクル可能なシート状の汎用プラスチックの創製に成功しました。高分子結晶化メカニズムの解明という基礎研究の成果の発展により得られた研究成果です。

【右図】(社)日本塑性加工学会編、「プラスチック成形加工データブック(第2版)」 日刊工業新聞社発行(初版発行:2002年1月28日)P39「弾性率」を基に編集

 (大学案内2010 p15-16より抜粋)