理科とは何か、なぜそれを学ぶのか? ― 比較教育史的アプローチからの解明 ―

広島大学大学院教育学研究科自然システム教育学講座の図書室には、歴代の教授によって収集された理科教育を中心とした国内外の図書や雑誌、その他の教育に関する資料が多数所蔵されています。特に、19世紀の創刊時からの外国の雑誌等や明治期以降のわが国の初等・中等教育の理科教科書は、研究資料として非常に価値があり、研究はもとより授業でも活用されています。紹介する論文は、これらの所蔵されている貴重な国内外の歴史的資料を用いた研究成果の一部です。

研究者プロフィール

磯崎 哲夫 (いそざき てつお)
教授
大学院教育学研究科 自然システム教育学講座
研究分野 複合領域 / 科学教育・教育工学 / 科学教育 / 社会科学 / 教育学 / 教科教育学

論文1は、普段私たちが当たり前のように学校で学んでいる教科「理科」について、明治期に小学校に設置された経緯やその教科としての特色について考察した論文です。その際、教科としての理科の成立において、誰がイニシアティブをとり、どのような考え方に基づいていたのか、などを中心に分析しました。

学校で学ぶ理科は、欧米諸国の教科「科学(science)」を範として学校の教科として導入されたように思えます。しかし研究の結果、日本の理科は、単なる欧米諸国の学校で教えられていた科学をそのまま日本の学校に導入したのではなく、欧米諸国で自然科学や教育学を学んだ人たちのイニシアティブによって、日本の自然に対する伝統的な考え方などを考慮し、日本の教育の文脈に合わせて日本の教科として成立したことを明らかにしました。

明治20年代の小学校理科教科書

明治20年代の小学校理科教科書

大正期の生徒実験書

大正期の生徒実験書

論文2は、日本の理科学習の大きな特徴の1つである実験が、いつ、どのようにして本格的に学校で実施されるようになったのかを明らかにし、実験などを行う際の重要なポイントについて歴史的に考察した論文です。その際、当時のイギリスやアメリカの影響などについても検討しました。

大正期になり、熱心な理科教師達の努力やイギリスの実験室における教授法の紹介などもあり、法令で生徒自身が実施する実験のリストが作成されるとともに、補助金も支出され実験室が整備され始めました。当時の実験等の実態や諸外国における状況から、たとえ実験室や法令が整備されたとしても、やはり理科教師が実験の成否の鍵になることが明らかになりました。

以上の2本の論文は、なぜ学校で理科を学び、理科で何を学ぶのか、といった理科教育の根源的問題について、日本と諸外国との歴史的な比較を通して解明しようとする一連の研究成果であり、英語で海外に発信しています。

磯崎教授の著書
磯崎教授の著書

磯崎教授の著書

大学院教育学研究科自然システム教育学講座の図書室

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