視覚監査報告(概要)

広島大学における、視覚的コミュニケーション要素の現状からは、一般的なコミュニケーション体系における「シンボルマーク」および「校名ロゴタイプ」という基本要素の概念が成立していないことが結論付けられます。
つまり、「学章(バッジ)」および「大学旗」がシンボリックな実体物として取り扱われており、それを印刷媒体に再現するための基本図案が存在していないと判断されます。
通常、印刷媒体が作成される場合は、基本図案を再生・再現するための版下として、規程図版(清刷り)が使用されますが、広島大学の印刷物の現状は、これらの存在を示しておらず、印刷物が作成される現場において、それぞれの目的、用途に従って適宜必要なものを学章から模写、複製されて使用されていたというように推察されます。(その際特段の規程もなかったため、使用現場の要望に応じて適宜改変されたものと考えられます。)
かかる現状に至った原因としては、学章(バッジ)の制定時までさかのぼるものと推察されます。
公募により学章(バッジ)が制定された当時、実際にはスミ入れ清書きされた入選図案をもとにバッジ、大学旗が作成された訳ですが、その際、採用した図案を印刷物として使用するための基本図版として保存・管理しなかったことにあると考えられます。(あるいは、当初は存在したかもしれないが、管理が甘くて引き継がれなかった。または、いずれかの時点で紛失してしまった、ということが考えられます。)
従って、印刷物に使用する「シンボルマークの図案」という概念が生じることなく現状に至ったことが考えられます。
大学名標記についても同様で、大学名はあってもどのような書体(ロゴタイプ)で標記するかを規程化するという概念がなかったのではないでしょうか。
その結果、現状においては、学章(バッジ)、大学旗は、それぞれに継承されているにもかかわらず、印刷媒体には、学章の一部デザイン違いという亜種だけで6種類が存在し、「学位記」「成績証明書」といった公式文書類にも複製のデザインが使用されている状況となっております。
封筒や広報印刷媒体類については、使用する部署がそれぞれに異なった学章デザイン、大学名標記を作成しており、独自のシンボルマークとなる「学部の木」などのコミュニケーション要素も用いられています。
看板、サイン類においては、一部に学章(バッジ)のデザインが模写、複製されていますが、これらにも微妙な変形が認められます。(工作物の素材による再現性の差異も含まれます。)
制服、ユニフォームについては、使用する現場においてコミュニケーション要素の選択が適宜判断されている様子で、大学名は部署を標記するための一つの要素としての存在になっています。
また、附属学校においては、それぞれの由来による学章を使用しています。
従って、広島大学の視覚的コミュニケーション環境においては「広島大学」という情報発信の主体が後退し、各部署、組織が大学組織の前面にたってコミュニケーション活動を展開しているのが現状です。
よって、それぞれの部署、組織に接する人々が該当部署、組織を通じてしか「広島大学」を認識せずにいるため、大学総体としてのイメージが希薄になっているものと判断されます。


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