第11回数理分子生命理学セミナー(4研究科共同セミナー:7月19日)



日時: 平成18年7月19日(水)14:35〜

場所: 理学部E210

講師: 清水 光弘 教授 (明星大学 理工学部 化学科)



演題: DNA構造によるヌクレオソーム破壊を利用した局所的クロマチン機能の解析



要旨: 真核生物においてゲノムDNAは、クロマチン・染色体として細胞核内に収納されている。クロマチンの基本単位であるヌクレオソームは、プロモーターなどにおいて、しばしば正確な位置に配置されており(ヌクレオソームポジショニング)、遺伝子発現制御のメカニズムの一つとして提唱されている。一方、DNAは塩基配列、トポロジーなどに依存して、通常のB型構造とは異なる特殊な構造を形成する。古くから、DNA構造はクロマチンの構築に重要な因子のひとつであると考えられてきた。これまでに我々は、ポジショニングしたヌクレオソームを有する出芽酵母ミニ染色体のアッセイ系を用いて、in vivoでDNA構造がヌクレオソーム形成に及ぼす効果を明らかにした。

 多くの真核生物遺伝子の転写は、クロマチンの構造変化を介して制御されていると考えられているが、このことをin vivoで検証する方法は限られている。この問題に対して、我々は、出芽酵母ゲノムの正確な位置に、さまざまなヌクレオソーム阻害配列(それぞれB'構造とZ-DNAを形成できる)を導入することによって、局所的クロマチンの機能を解析する新しいアプローチを確立した。この方法を用いて、出芽酵母ゲノムにおけるa-細胞特異的遺伝子BAR1の転写抑制にヌクレオソームポジショニングが本質的な役割を持つことを実証した。さらに、無機リン酸飢餓状態で誘導発現されるPHO5遺伝子の発現制御におけるヌクレオソームの機能解析も進めており、本アプローチの普遍性を示しつつある。また、本研究の結果は、DNA構造によるクロマチンの改変を利用した人為的遺伝子発現制御法としての有効性も示唆している。



≪本セミナーは4研究科共同セミナー認定科目です≫



連絡先:坂本尚昭(理学研究科 数理分子生命理学専攻 内線:7447)


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