平成18年度 第22回数理分子生命理学セミナー(4研究科共同セミナー:12月20日)



日時: 平成18年12月20日(水) 14:35〜

場所: 理学部E210

講師: 柴田 達夫 助教授 (現象数理学研究室)

演題: ストライプ形成のネットワーク構成原理とそれに基づく

発生プログラムの解読



要旨: 生物を構成するタンパク質や遺伝子などが互いに協調的に働いて、システムとしてどのようにして構造・形態形成や機能発現が実現しているかを理解することはこれからの生物学の大きな課題である。そのための足がかりはまず遺伝子やタンパク質の比較的小規模なネットワークの機能特性を理解し、さらに複数の小規模ネットワークのクロストークを考えることで、階層的に現象の理解を進めていく方法だろう。

最近、いくつかのモデル生物において転写調節ネットワークの構造的性質が詳しく調べられ、頻繁に現れる小規模ネットワークのあることが明らかにされた。なぜそのようなモチーフ構造があるのかは明らかではないが、それの果たす機能特性が進化的に選択された結果かもしれない。ショウジョウバエやウニなどの転写調節ネットワークでもっとも頻出するモチーフ構造はフィードフォーワードループと呼ばれ、ある因子が標的遺伝子を直接調節する相互作用と他の因子を媒介にして間接的に調節する相互作用で構成されている。

講演では、空間に複数のストライプパタンを形成したり、時間軸に沿って発現の一過的応答を生成する調節ネットワークを、ネットワーク・モチーフ間のクロストークによって構成する原理を報告する。調節ネットワークのデータベース解析は実際にそのようなクロストークのあることを示している。そこで、モチーフのクロストークで構成されたショウジョウバエ初期発生の数理モデルがパタン形成を再現することを示し、いくつかの表現型がネットワークの観点からどう理解できるかを議論する。最後に、ウニの初期発生においてネットワークのモチーフ構造が実際に役割を果たしていることを検証するための実験が進行中で、その途中経過の報告とあわせて発生プログラムをネットワークの観点から解読するための方法論を議論したい。



≪本セミナーは4研究科共同セミナー認定科目です≫



連絡先:坂本 尚昭(理学研究科 数理分子生命理学専攻 内線:7447)


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