第299回 物性セミナー(4研究科共同セミナー:9月5日)



題目: NMRから見た重い電子超伝導体UBe13の超伝導状態



講師: 藤 秀樹 (大学院先端物質科学研究科)



日時: 2007年9月5日(水) 15時−16時



場所: 先端物質科学研究科401N



要旨:



1978年にF. SteglichがCeCu2Si2において重い電子が超伝導を担っていることを実験的に明らかにして以来、これまでに様々な重い電子超伝導体が見つかっており、最近では量子臨界点近傍での圧力誘起超伝導や空間反転対称性をもたない系での超伝導の発見など、20年以上たった今でも固体物理学のフロンティアでありつづけている。つまり重い電子超伝導体は、異方的超伝導の研究におけるパイオニアである。 

 今回のセミナーでは、重い電子超伝導体の中でも特にウラン系超伝導体について、NMR研究の歴史から、単結晶UBe13の最新の結果までを紹介し、スクッテルダイト超伝導体などとの関連も話をしたい。UBe13は1984年に見つかった重い電子超伝導の黎明期の物質であり、古くより奇パリティ超伝導体であると言われていたが、試料作成の困難さや、結晶構造の複雑さなどのため、十分な精度でNMR実験が行われていなかった。この物質について、350mKでのBe核の角度回転NMRの実験を行い、UBe13発見後23年ぶりに超伝導対パリティの決定に成功した。 さらに新しい超伝導相の存在を示唆するデータを得ており、極低温でのNMR測定を計画しているところである。特に、超伝導対パリティの決定は、本学COE経費で整備された5テスラ横磁場無冷媒超伝導磁石と低周波核磁気共鳴装置に、自作の循環式ヘリウム3冷凍機を組み合わせることによって行われた。技術的には無冷媒磁石を用いた0.3Kでの角度回転NMR実験は世界初の試みであったので,これらの苦労話についても触れる。



担当: 高畠 敏郎 (先端物質科学研究科)内線7025



---4研究科共同セミナーの認定科目です---

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後援 先進物質機能研究センター



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