第483回物性セミナー開催(5研究科共同セミナー:11月10日)



題 目 重い電子系超伝導体UBe13における風変わりな量子臨界的挙動と超伝導
講 師 井澤 公一(東京工業大学理工学研究科 教授)
日 時 2015年11月10日(火)16:20-
場 所 先端物質科学研究科 401N
要 旨 これまで発見されてきた非従来型超伝導の多くは,基底状態が磁気秩序から(非磁性)フェルミ液体に移り変わる点,いわゆる量子

臨界点近傍で見出されている.この量子臨界点近傍では,強い磁気ゆらぎが存在し,異方的なクーパー対形成に重要な役割を果たしていると考えられている.さらにその磁気ゆらぎは,超伝導のみならず常伝導状態における非フェルミ液体と呼ばれる特異な臨界現象をもたらしている.それゆえ各物理量に見られる非フェルミ液体的挙動は,量子臨界点近傍における特異な電子状態や超伝導発現機構の理解の鍵となる現象として,長年に渡り数多くの研究が精力的になされてきた.

本セミナーで取り上げるUBe13も非フェルミ液体的挙動を示した後,低温で超伝導を発現するという点においては,一見他の非従来型超伝導体と同じようにみえる.しかし多くの非従来型超伝導体では非フェルミ液体といえどもある程度コヒーレンスが発達し準粒子が定義できる状況から超伝導に転移するのに対し,UBe13では伝導がコヒーレントになる前に超伝導が発現するという点において他の物質とは状況が大きく異なる.これはUBe13における超伝導及び常伝導状態が他の磁気量子臨界物質とは異なる機構によりもたらされていることを示唆している.第一世代非従来型超伝導体であるUBe13は,古くから多くの研究がなされているものの,これら超伝導および異常金属状態ともに未だよく理解されてはいない.本セミナーでは,最近我々が得た輸送係数の結果を紹介し,それをもとにUBe13における量子臨界的挙動と超伝導について議論する.
担 当 鈴木 孝至(先端物質科学研究科)・内線7040

*5 研究科共同セミナーの認定科目です


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