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[研究成果]新たな周波数資源利用に道を拓くテラヘルツ無線技術~シリコンCMOS集積回路による毎秒100ギガビット超の超高速無線技術を開発~



広島大学大学院先端物質科学研究科の藤島実教授は、国立研究開発法人情報通信研究機構、パナソニック株式会社と共同で、シリコンCMOS集積回路[1]により最大毎秒100ギガビットを超える伝送速度でデジタル情報の無線伝送を可能とする、テラヘルツ波(300GHz帯)を用いた無線送信技術を世界で初めて開発し、平成28年1月28日、広島大学霞キャンパスにおいて記者説明会を行いました。



説明を行う藤島教授

【本件のポイント】

・シリコンCMOS集積回路により、将来の超高速無線用途で利用が期待され国際電気通信連合[2]において無線通信用途への周波数割り当てが検討されている300GHz帯のうち、275GHz~305GHzの信号を生成

・多値変調された信号を用いることで最大毎秒100ギガビット相当の無線伝送性能を実現



【本件の概要】

2016年後半あたりからWi-Fiに利用される周波数であるミリ波[3]帯(57GHz~66GHz)よりもさらに高い周波数であるテラヘルツ波 [4]帯は、一般にはまだ利用されていない新たな周波数資源です。テラヘルツ波帯を用いた無線システムは、広い周波数帯域を利用可能で超高速通信に優れて いるという特長があります。今回、デジタル信号処理回路との接続が容易なシリコンCMOS集積回路を用い、独自の周波数変換回路と電力合成技術を適用する ことで毎秒100ギガビット相当の無線伝送の可能性を国際的な周波数割り当てが見込まれる300GHz帯で世界で初めて実証しました。本技術が実用化され れば、データセンター内のデジタル情報や、スーパーハイビジョンの映像信号を光ケーブルなどを用いることなく無線で接続できるようになります。

本研究開発は、総務省平成26、27年度「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発-300GHz帯シリコン半導体CMOSトランシーバ技術-」の成果の一環です。

【今後の展開】

今回は無線通信システムのうち、300GHz帯の送信回路を実現したものです。テラヘルツ帯無線通信システムの実用化にはこの他に300GHz帯受信回 路、高速通信に対応したデジタル信号処理による変復調回路が必要となります。今後これら無線通信システムに必要な回路の基盤技術を開発し、シリコン CMOS集積回路による無線通信システムの実用化を目指します。

【用語の説明】

[1]シリコンCMOS集積回路:

CMOS(complementary metal oxide semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)を用いた集積回路であり、電子の多い n チャンネル型の電界効果トランジスタと正孔が多い p チャンネル型の電界効果トランジスタの組み合わせで構成される回路素子

[2] 国際電気通信連合

国際連合の専門機関の一つで、電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、電気通信業務の能率増進、利用増大と普及のため、技術的手段の発達と能 率的運用の促進を目的とするもの。この下部組織である無線通信部門において周波数利用計画や分配を検討している。

[3]ミリ波:

周波数にして30GHzから300GHz、波長にして1mmから1cmまでの電波を指す。

[4] テラヘルツ波:

周波数にして1THz(1000GHz)前後の電波を指す。情報通信分野においては0.1THz(100GHz)から3THzを対象とすることが多い。(図1)



図1.テラヘルツ波の周波数帯

【お問い合わせ先】

広島大学大学院先端物質科学研究科

教授 藤島 実

TEL:082-424-6269

E-mail:fuji*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)



広島大学学術・社会産学連携室広報グループ

TEL:082-424-3701

E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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