研究成果発表 世界初、ヒト型自閉症マウスモデル開発に成功しました



ヒト型自閉症マウスモデル開発。内匠透教授。

記者会見を行う内匠教授(広島大学霞キャンパス)

世界初、ヒト型自閉症マウスモデル開発に成功

- 子どものこころの問題に迫れるか? -

広島大学大学院医歯薬学総合研究科内匠透(たくみとおる)教授は、自閉症の細胞遺伝学的異常としてもっとも頻度の高い、ヒト染色体15q11-13重複のモデルマウスの作製に成功しました。



ヒトゲノム計画が終了した現在、様々な疾患の病態が分子レベルで明らかにされるようになってきました。しかしながら、精神疾患は今なお不明なままです。また、社会的問題にもなっている自閉症をはじめとする発達障害は、増加傾向にあり、子どものこころの問題はその医学的解明が待たれるところです。



内匠教授は、今回、技術的にも非常に難しい染色体工学の手法を用いて、ヒトの染色体異常と同じ異常を有するマウスを作製しました。本マウスは、ヒトの自閉症様の行動を示すだけなく、ヒトの病気(自閉症)と同じ原因を有する世界初のヒト型モデルマウスです。また、本マウスは、現在注目されている、ゲノム上の「コピー数多型(※)」による世界初の疾患モデル動物です。今後、本マウスを用いて、自閉症をはじめとする発達障害の病態解明及びその治療薬の開発が期待されます。





本研究成果は、文部科学省科学研究費の特定領域研究に指定されている「脳機能の統合的研究」(通称:「統合脳」)プロジェクトにおける、大阪バイオサイエンス研究所、英国サンガー研究所、京都大学、藤田保健衛生大学、(株)万有製薬、理化学研究所との共同研究によるもので、2009年6月26日付けの米国学術雑誌Cellで公開されました。なお、内匠教授のニュース(船田奇岑絵師による作品)がVolume 137のTOP頁を飾っています。

(※) 人の遺伝子は、父母のそれぞれのゲノムに由来するものを1組ずつ受け継ぐのが一般 的です。通常の人は、1細胞あたりそれぞれ2コピー(父と母)の遺伝子を有していると考えられてきました。近年、個人によっては1つの細胞に1コピーの み、あるいは3コピー以上遺伝子のコピーが存在する(コピー数多型)ことが判ってきました。従来の研究では、個人の遺伝子の「塩基配列の違い」がよく知ら れていますが、コピー数多型は遺伝子の「数の違い」です。今回の研究では、父方の遺伝子のコピー数が1.5コピーのモデルマウスを作製しました。

【問い合わせ先】

広島大学社会連携・情報政策室

広報グループ 電話:082-424-6017


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