亀井 清華准教授にインタビュー!

亀井 清華准教授にインタビュー!

ネットワーク上の諸問題の解決を図る分散アルゴリズムの研究。

分散アルゴリズムの設計・提案を通して、広く社会に寄与する。

亀井 清華 准教授

 私の専門分野は分散アルゴリズムです。インターネットのように、ネットワークでたくさんの計算機がつながっている状態を「分散システム」と言い、分散アルゴリズムとは、それらがいかに効率良く協調的に働くかを考えていくものです。例えば、分散システム上で、みんなが同じ資源を使おうとして、一斉に同じことをやると、パンクしてしまうといったシチュエーションがあった場合に、どうしたらみんなが仲良く公平にその資源を利用できるかを考える。あるいは、計算機や通信リンクが故障したり、計算機が移動したりすることでネットワーク形状が変更されるといった変化が起きても、どうしたらサービスを円滑に提供し続けることができるのかを考える。そうした諸問題を解決していく理論的な仕組みを考えるのが、分散アルゴリズムです。これは基礎研究にあたる分野で、理論的にモデル化して解き明かし、そのモデルの上で正しく動くことを突き詰めていくというスタイルの研究です。

 

 私の研究では特に「故障」に注目をしています。システム上で一部の計算機が壊れた場合でも、その他のものでうまく動いたり、さまざまな動的な変化が起こった場合でも、全体をリフレッシュする初期化を行わなくても、自動的に最適解に収束させていくといったことができるような、理論的な仕組みを考えている訳です。分散アルゴリズムの研究は世界中で行われていますが、こうした故障耐性を考えた分散アルゴリズムの研究者というのは、国内ではあまりいないと思います。

本棚

 また、これと並行していくつかの研究を学生さんたちと行っているのですが、その中のひとつが、「Web上の情報を利用した観光地情報推薦システムを作ろう」というものです。例えば、Amazonなどで、おすすめの商品がたくさん推薦されたりしていますが、あれが推薦システムの例です。とても便利なものですが、その精度はというと、まだ十分とは言えないと思うのです。そこで、この研究では、インターネット上の口コミ情報をベースにした情報推薦システムというものを、観光という切り口で作ってみようとしています。いま、SNSを参考にして旅行をされる方が増えているという状況がありますが、この研究では、自動的にそうした情報をひっぱってきて推薦してくれるというようなシステムを構築して、実際に動くものにするというところまでを目指しています。

しんどいけれども、あきらめないこと。その先に達成感が待つ。

 基礎理論研究というのは、とにかくしんどいものです。特に私は、ひらめくタイプではないので、時間をかけて、ああでもないこうでもないと試行錯誤を続けています。そういう時間が楽しいとおっしゃる先生もいらっしゃいますが、私はしんどい、苦しいと思いながら取り組んでいるんですね。ところがある時、パチッとはまる瞬間というのがやってくる。理論的な証明がとてもうまくできた、すんなり読める証明というのが書けた時には、よしっ!とガッツポーズな気分になります。つまり、論理がスムーズに理解してもらえる形で表現できたということですが、それはこれまで、一個一個積み上げてきたものを積み上げ切ったということですから、それはもう、この上なく幸せな瞬間で、それまでの苦しさが吹き飛びます。そして、この達成感や喜びを味わいたいがために、また次の問題へと挑んでいくのが研究者なのかなと思います。

 もちろん、苦しい時間のほうがほとんどなのですが、研究に際して私は、おもしろそうだなぁと思って取り組んだ問題を『あきらめない』ということを心に銘じています。ちょっと難しいからとあきらめてしまいがちになる気持ちを抑えて、自分の中でどこかにそれを持っておくと、例えば3年後に解けてしまうというようなこともあるんです。時々、これまでの研究を振り返ることもやっていますが、あのときはこうやって解いたけれど、もっとこうすればおもしろかったんじゃないか?などということも出てきたりする。そんな風にあきらめずに続けたり、自分の中に持っていたりすることで、解にたどり着けるんだと思うんです。

亀井准教授

 一方、推薦システムの方では、実際のデータはきっとこうなってるという仮説を立てて、それに基づいてシステムを作るんですが、なかなか仮説の通りにはいかないというような苦労が多いですね。そこで、実データの中で何が起きているのかをまず洗い出そうとしているのですが、その際に、ちょっとおもしろい性質、一般的にはまだあまり言われていないような性質などを発見することがあります。その発見自体が意味のあることですし、それによって、推薦システムもおもしろいものになっていくので、こちらの研究ではいまのところ、そんな風に、大量のデータの中からユニークなものを見つけ出す喜びというのを日々味わっているところです。

高校までは文系。紆余曲折の末に巡り合った理系の研究者という天職。

 私は、山口県出身なんですが、広島県の文系の高校に進学して、当時はずっと社会の先生になりたいと思っていました。それがその当時、教員という仕事は自分には難しいかなと思ってしまったため、大学は工学部に入学。そして、4年生の時に研究室配属をされたのが、分散アルゴリズムの世界との出合いでした。それも、自分が希望したテーマでは全くなかったのに、そのおもしろさに目覚めたのですから、やはり人生は合縁奇縁ですね。その後、大学院に進んでからも進路にはいろいろ悩んで、教員も公務員も一般企業も考えました。そんな時に、研究室の先生から「教員になりたいんだったら、大学の教員という道もあるよ」という風に言われたんです。そういう道もあるかと思ったことが、大学の教員=研究者という仕事を初めて意識した瞬間で、いまの研究者生活のスタート地点と言えるでしょう。教員という道も、あきらめなかったことで実現することができたのだと実感しています。

亀井准教授

 そして、教員としては日頃から、学生さんたちが社会に出たときに、この研究室で一緒にやり遂げたということを糧にできるようにと思いながら接しています。学生さんとアイデアを出し合いながら、システム作りなどに取り組んでいる中で、こちらが感心するような意見も出てきたりします。そんな学生の皆さんが、一つひとつの課題にじっくり取り組んで、投げ出すことなく乗り越えていってくれることに期待をしています。先にも述べましたように、そうすることで、見えてくることがあると思うんですね。学生時代には、そんな経験を少しでも多く積んで、自分はこんなものを作ったんだと胸を張れるようなものを作ってもらいたいと願っています。私自身も、そんな学生さんを一人でも多く輩出したいと思います。

 最後に、これから大学進学を目指す皆さんへ――。 コンピュータに興味がある方がいれば、コンピュータの世界には、分散アルゴリズムという興味深いフィールドもあることを知ってください。論理的に筋道を立てて考えることが好きな方にはきっと向いている学問だと思います。ぜひ一緒に研究を進めていきましょう。

 

 

 

亀井 清華 准教授
Sayaka Kamei
分散システム学研究室

2001年3月 広島大学 工学部第二類(電気系)情報工学課程 卒業
2003年3月 広島大学大学院 工学研究科 情報工学専攻 博士課程前期 修了
2006年3月 広島大学大学院 工学研究科 情報工学専攻 博士課程後期 修了
2006年4月1日~2007年3月31日 鳥取環境大学 環境情報学部情報システム学科 助手
2007年4月1日~2008年3月31日 鳥取環境大学 環境情報学部情報システム学科 助教
2008年4月1日~2012年4月30日 広島大学大学院 工学研究科 助教
2012年5月1日~ 広島大学大学院 工学研究科 准教授


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