令和元年度 教育研究大会

  • 主題 「学ぶ」から「探す」へ―中・高6ヵ年の学びの地図―
  • 期日 令和元年11月29日(金)
  • 会場 広島大学附属中・高等学校

ごあいさつ

「学ぶ」から「探すSAGAs」への「学びの地図」の提案

 新学習指導要領が告示されてから数年がたとうとしています。本校では,これまで新学習指導要領に先駆けてアクティブ・ラーニングを取り入れた教育実践研究を行い,成果を発信して参りました。
 今年度より,これまで行ってきた「次期学習指導要領に向けたアクティブ・ラーニングの展開」の成果を踏まえ,新たな研究主題として「『学ぶ』から『探す』へ―中高6ヵ年の学びの地図」を設定しました。昨年度スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の第4期目の指定を受け,「社会に開かれた科学技術を先導する人材育成の起点となる科学教育カリキュラム」を進めていることと連動して,学校設定教科「SAGAs(探す)」を新設し,高等学校の全生徒が主体的・自律的に研究に取り組む「課題研究」を推進しています。この「課題研究」は「教科横断・融合型」としてすべての教科・科目において展開されており,本校の研究推進の中心となっています。
 本校では,教育課程全体を通してつける力を,SAGAs(Scientific, Academic, Global, Autonomous)と設定し,教育実践研究に取り組んでいます。この取り組みは,新学習指導要領で強調されている,「主体的・対話的で深い学び」によって「生涯にわたって探究を深める未来の創り手」として生徒を育てるための,授業方法や教育実践を具体的に示すものです。その基本は教科の学習の場で展開されることから,教科において「学ぶ」ことと「探す」こととの関係を明らかにすることを,本年度の課題としています。
 学びへの旅は,中学校においてすでに始まっています。「探す」対象をどのように見つけ,深めるのか,そのために教科での「学び」はどのようなものであればよいのか。「探す」へとつながる「学び」のあり方,それを生徒一人ひとりの中の「学びの地図」として,そして中学校から高等学校へと続く「学びの地図」として提案します。教科から探究へ,探究から教科へ。この往還が中等教育における「主体的・対話的で深い学び」をよりよく実現させるのではないか,そんな予感がしています。
 カリキュラム・マネジメントによる教育課程の改善は,ゴールとしてつけたい力を目指して,生徒の発達段階や教科の系統性などを考慮しながら行われます。教育課程においては,中等教育6年間を通して,生徒の学びが深まっていくことが求められます。「主体的・対話的で深い学び」が,中学校から高等学校へと深化していくような教育課程の実現を目指して,教育実践研究を展開していく所存です。
 多くの皆様のご参加を得て,ご意見をいただきながらさらに研究を深め,中等教育の発展に貢献したいと考えております。公務ご多用の折とは存じますが,ぜひご参加いただきますよう心よりお願い申し上げます。

広島大学附属中・高等学校長 鈴木 由美子  

全体会1 (9:00~9:15)

主題「『学ぶ』から『探す』へ-中・高6ヵ年の学びの地図-」

 本校では,今年度からの研究主題を「『学ぶ』から『探す』へ-中・高6ヵ年の学びの地図-」に設定しました。昨年度までの実践研究において,新学習指導要領のキーワードである「主体的・対話的で深い学び」のうち,特に「深い学び」に着目し,各教科の文脈において,「深い学び」をどのように定義し,実現するのかを追究してきました。「深い学び」のその先にあるもの,それは,生涯を通じて主体的・自律的に学びを開拓していく「探究(=探す)」であると考えています。そして,探究を通じて,それまでの経験で得られた多様な学びが活かされ,有機的につながって,新たな「深い学び」が創出されると考えています。
 今年度からの3年間の実践研究では,各教科あるいは教科の枠を超えた教育課程全体として,「探す」場と「学ぶ」場の関係を改めて整理し,「学ぶ」ことが「探す」ことにどうつながっているのか,「探す」ことを通じて「学ぶ」ことにどうフィードバックできているのかを検証することにより,本校独自の「学びの地図」を提案したいと考えています。
 また,本校は16年間にわたってスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けています。そこでは課題研究を中核とした教育課程を編成し,生徒が主体的・協働的に科学研究に取り組むことで,科学に対する精確で深い知識と洞察力を備えたトップ・サイエンティストへと成長することを企図して教育活動を展開しています。昨年度からは,新たに第4期の指定を受け,Sagacity(賢明な判断が下せる知性・洞察力・先見の明)の育成を重点課題としています。
 全体会1では,公開授業や協議会等について,よりよくご理解いただく助けとなるよう,他の企画に先立つ形で,本校の取り組みの全体像をご紹介いたします。

公開授業・分科会 (9:30~15:10)

全体会2 〔講演〕 (15:30~17:00)

「人との関わりの中で学びを創造する子どもたち」 江利川春雄先生(和歌山大学教授) 

 人間は人との関わり合いの中で進化してきた類的存在です。ですから,仲間と高め合う協同学習は,学びの本来的・本質的な姿です。江戸時代の藩校や蘭学塾で行われていた「会読」は,「互いに問題を持ち出したり,意見を闘わせたりして,集団研究をする協同学習の方式」(石川謙『学校の発達』)でした。新学習指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」は,本来の学びへの回帰とも言えるでしょう。
 講演では,学校現場での豊富な実例を交えながら,他者との関係性の中で揺さぶり/揺さぶられながら学びを創造していく子どもたちの姿から,人はどのように学ぶのかを考えていきます。キーワードは「関わり」「ことば」「探求」です。
 教師は舞台裏での授業デザイナーと演出家に徹し,授業中の関与を最小化すると,子どもたちは主体性・創造性を発揮します。教師作成の問題を易しく作り直して仲間に渡す小学生。「立ち歩き時間」に個人・ペア・グループの学習形態を自由に選ぶ中学生。課題を済ませ「出張先生」として仲間の支援に赴く高校生。授業観察は発見と感動の連続です。
 学びの目的は「人々を,なりゆきまかせの客体から,自らの歴史をつくる主体に変えていく」こと(ユネスコ学習権宣言)。偏差値や競争のためではなく,「自らの歴史をつくる主体」を形成する学びとは何か。一緒に考えていきましょう。


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