ミッションステートメント

  • 提案課題名 「リーダーシップを育む広大型女性研究者支援」
  • 総括責任者名 「広島大学長 浅原利正」
  • 提案機関名 「国立大学法人広島大学」

(1) 計画構想の概要

 本学は、国立総合大学としては学部や大学院に占める女子学生の割合がきわめて高水準であるにも拘わらず、女性教員比率は国立大学法人平均を下回り、特に上位の職階ほど女性比率が低い。
 これは、

  1. 育児・介護と研究活動の両立支援が不十分であるために、女性研究者が研究に専念できる環境が確保されていないこと
  2. 男女共同参画への取組みが、組織化・意識改革ともに緒に就いたところであり、基本計画も現在策定途上で、女性研究者の積極的登用策や数値目標の設定が十分行われていないこと
  3. 理工系の女性研究者が少なく、かつ「ガラスの天井」状態となっているため、増加する女子大学院生のロールモデルとしては充分ではないこと

などが問題として考えられる。

 本プロジェクトは、中核となる組織を作り、「両立支援環境形成プログラム」と「意識改革プログラム」を基盤として、本学独自の人材育成「リーダーシッププログラム」を遂行することにより、女性研究者が能力を最大限に発揮し、教育・研究活動で著しい成果をあげることを目指す。その結果、

  1. 両立支援環境形成プログラムによって、育児・介護等を理由とする女性研究者の研究やキャリアの中断が減り、継続する研究者が増えることが期待される。
  2. 本学独自のリーダーシッププログラム制度の導入により、研究者を目指す女子学生や若手女性研究者の能力開発を促進し、リーダーシップを発揮する女性研究者育成が可能となる。
  3. 若手女性研究者の育成への積極的な取組みを通して、大学内に男女共同参画の意識を浸透させ、教育・研究活動および大学運営の更なる活性化と同時に、女性研究者比率の向上が期待できる。
  4. 男女共同参画推進委員会のもとに設置する女性研究者支援プロジェクト(CAPWR)研究センターを3年後は男女共同参画推進室とし、女性研究者支援のみならず大学全体の包括的な男女共同参画推進に恒常的発展的に取り組むことが可能となる。

 本プロジェクトの導入は、従来の部局中心の研究者支援とは異なり、女性研究者という全学組織横断的な支援であることから、男女共同参画推進と併せて意識改革とともに支援体制の見直しや女性構成員の意見が反映される組織運営など、本学の組織改革がいっそう進む効果をもたらす。本学独自の女性研究者のためのフェローシップ等の支援との相乗効果により女性研究者の能力開発が進むことは、男性研究者・若手研究者への大きな刺激となり、世界から優秀かつ多様な研究者をひきつけ、研究・教育の質の向上が期待できる。

(2)実施期間終了時における具体的な目標

  1. 女性教員の比率向上
    女性教員比率を現在の9.0 % (146 名)から11.5 % (188 名) を上回るようにする。
  2. 「男女共同参画推進室」の設置
    「女性研究者支援プロジェクト(CAPWR)研究センター」を本学における女性研究者支援の拠点とし、実施期間終了時には、本学の男女共同参画推進の実践的組織となる「男女共同参画推進室」へと発展させる。
  3. 「人材育成リーダーシッププログラム」の継続・発展
    「リーダーシッププログラム」を継続発展させ、女性研究者の人材育成を強化する。特に休業中の代替教員の自給策として「プロフェッサーシフト」を人事制度に活用し、学内にリーダーシップを備えマネジメントのできる女性教員の増員を図る。
  4. 「キャリア支援担当員」の制度化
    「キャリア支援担当員」を就労形態に関して職員と所属部署との調整を図るだけでなく、柔軟で多様な勤務形態を可能とする新しい雇用システムを提案する役割として学内の制度に組み込む。
  5. 「支援者バンク」の制度化
    両立支援の人材を担う「支援者バンク」の運営は、学内での人材育成を中核に地域や学生との連携と併せて自立的に持続可能な運営を図り、制度として確立する。本プログラムは、女性研究者を対象にスタートさせるが、終了時には男女を問わず学生・職員を含む大学構成員全員に対して個別の要求に合った支援を提供できるシステムへと発展させる。
  6. 「次世代育成の取組」の継続・発展
    研究者を目指す女性を増やすために、女子学生・若手女性研究者のインターンシップ制度やキャリアパス支援を充実させて次世代育成のための取組みを確立し、女子大学院生へのエンパワーメントを強化する。

<実施期間終了後の取組>

  1. 「男女共同参画推進室」による包括的支援体制の強化
  2. 「人材育成リーダーシッププログラム」、「両立支援環境形成プログラム」の自立的運営による両立支援の恒常化
  3. 「キャリア支援担当員」制度を活用した、柔軟で多様な勤務形態・新しい雇用システムの創出
  4. 男女共同参画推進基本計画に基づく、女性研究者および若手研究者の積極的登用に向けた部局ごとの女性教員比率数値目標の設定とその達成

<期待される波及効果>

  1. 本プロジェクトは、優れた女性研究者が研究と家庭責任を両立させつつ最大限の能力を発揮することと、本学が自前で人材育成することを企図したものであり、本学と類似した環境にあって女性研究者支援を目指す地方の国立総合大学のモデルケースとなりうる。
  2. 本学が中四国地域の拠点となって魅力ある女性研究者を育成し、女子中高生や研究者志望の女子学生に対するロールモデルを提示することは、将来の科学の発展を担う人材の育成という点からも有効である。
  3. 本プロジェクトによって、リーダーシップを有し、生き生きと活躍する広大女性研究者像を広く内外に示すことは、本学の研究者全員にとって大きな刺激となり、研究・教育の質の向上が期待できる。
  4. 本プロジェクトは、本学における男女共同参画推進のモデルという役割も担っており、取組みそのものが大学全構成員の意識改革の重要な契機となる。
  5. 特にキャリア支援担当員の設置は、男女を問わず、従来の固定的な雇用-就労形態や長時間労働、キャリア中断などの問題を見直すことになり、ワーク・ライフ・バランスの観点からも、キャリアを継続しつつライフステージや職階に応じた柔軟な働き方を創出することができる。


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