コラム特別編 ~開催報告!!「妊娠を考える女性と家族のためのセミナー」~

 広島大学病院遺伝子診療部/産婦人科では、妊婦さんや妊娠を考える女性・家族が、安心して妊娠、分娩を迎えるための情報提供を目的として、2部構成のセミナーを行ってまいりました。2016年8月から3回にわたり、会場の皆様との貴重な体験の共有や意見交換を行いました。参加いただいた方々にとっては満足度の高いセミナーであったとの感想をいただきましたので、ご参加いただけなかった多くの皆様へセミナーの内容をお伝えしたいと思います。

~第1部~

第1部は多くの方にお話しておきたい内容として、3回とも同じような形式で行いました。妊婦さんや将来妊娠を考える女性・家族が安心して妊娠・分娩にのぞめるようにあらかじめ知っておいてほしい、「女性のライフプランに役立つ、ここだけのホットな医学知識」について、助産師、認定遺伝カウンセラー、産婦人科医師、美容形成外科医がお話をしました。妊娠する前に知っておいてほしい体の変化や産後のこと、赤ちゃんの病気や遺伝のお話、妊娠のプランニングや女性の病気、不妊症について、最新で正しい情報をわかりやすくお話しました。インターネットに情報を求めている現代では、このような医療者に直接話を聞く機会が大事だという感想もあり、参加者の方々には聞いてよかった!もっと聞きたい!と思っていただけたようです。

~第2部~

 第2部は、妊娠・出産をとりまく、広く社会の情報を知っておいていただこうと、シンポジウム形式で行いました。

第1回セミナーでは「社会からのメッセージ」とし、病気のあるお子さんをもつ当事者の方や、療育や社会福祉に関わる方(発達支援センター、重症心身障がい児デイサービス)からお話を伺いました。どの妊婦さんも、赤ちゃんが健康に生まれてくることを望んでいます。しかし、生まれる前や生まれた後に病気が分かることでの心配や不安もあるでしょう。このシンポジウムでは、病気やハンディキャップをかかえたお子さんをもつご家族から、皆さんと同じように日常生活を送っている様子、安心して育んでいくための支援についてのお話をうかがいました。参加者の方からは、実体験や具体的な療育サポートのお話を聞くことで、障害を持つ子どもが生まれたら・・・という不安が減った、もし子どもが病気を持って生まれても頑張っていけそうだという感想をいただきました。

第2回のテーマは「命はさずかりもの」。様々な立場の方にお話を伺い、授かった命をよろこび、命と向き合っていくことに寄り添うとはどういうことなのか?ということについてディスカッションを行いました。ダウン症協会広島支部えんぜるふぃっしゅの藤山会長からは、障害や病気があってもなくても、泣いたり笑ったり、子どもと向き合う子育ては同じなんだ、ダウン症で生まれてきてくれたことでたくさんの経験や出会いがあった、ダウン症で生まれてきてくれてありがとう、と自らの体験をお話されました。不妊症看護認定看護師の植田さんからは、不妊治療を行っているご夫婦がもつ不安や悩み、命が誕生することの奇跡と尊さについてお話を伺いました。新しい命の誕生を応援する円ブリオ福山の河﨑さんからは、思いがけない妊娠でも安心して受け止め、育んでほしいと、これまで行ってきた活動についてお話いただきました。参加者の皆様には、授かった命をあたたかく迎えてあげられる社会のあり方について、また、命ってこんなに尊いものだと改めて思えたのではないでしょうか?

第1回、2回のシンポジウムを通して、実際に病気を持つお子さんを妊娠、出産、子育てをされている方のお話を聞いてみたい、というご意見が多数あり、そこで迎えたのが第3回の「命はさずかりもの Part2」です。このシンポジウムでは、18トリソミーのお子さんの子育て真っ最中の方、ダウン症を持つお子さんを育てられた方、妊娠途中で赤ちゃんを亡くされた方など4名の方に、ご自身の経験をお話いただきました。妊娠の初期に病気が分かった方、死産されたあとに病気が分かった方、生まれる直前に病気が分かった方、生まれてから病気が分かった方、4名の方々の経験を通して、生まれる前に病気を知る出生前診断の意義について意見交換を行いました。
赤ちゃんの病気がわかったときの気持ちや分娩後のこと、病気のあるお子さんを育てる中で感じられることなど、実際に経験された方の生の声には、参加者の方々から、これまでの考え方が変わった、それぞれの経験や子育てをする姿に勇気をもらえた、という声が多くありました。何よりも、今生きていっしょにすごせている幸せ、命の尊さを感じ取っていただけたセミナーでした。

~いろいろな出展ブース~

 セミナーでは、3回を通していろいろなブースを出展しました。

ダウン症協会広島支部えんぜるふぃっしゅ「カカオ」のコーヒーサービスでは、ダウン症候群の会の方々が熱々の香り高いコーヒーを入れてくださり、毎回大好評です。身近なふれあいから、ほっこりとした気持ちになったとの声が多くあり、バリアフリーの社会がつくられそうです。

共催の「円ブリオ広島設立準備会」は、さずかった命を支援する“ひと口1円”の「円ブリオ募金」を行っています。1億人が1人ずつ1円を出すことで、みんなで赤ちゃん誕生を喜ぶ社会を目指しています。

将来を担う看護学生や医学部生、研修医の先生たちが参加し、妊婦体験、赤ちゃん人形の抱っこ体験などもありました。妊娠や出産を身近に感じる機会となりました。

産科医師や遺伝カウンセラーによる相談コーナー。妊娠・出産に備えるための遺伝や婦人科系の病気について多くの方が気軽に相談されていました。

皆様に、私たち広島大学病院遺伝子診療部/産婦人科、そしてご協力いただいた関係者の方々が、心からこれだけは伝えておきたい、妊娠・出産、育児のたくさんのこと。3回のセミナーを通して、多くのご家族が安心して妊娠、出産にのぞめる社会、授かった命を誰もが尊び喜べる社会、安心して赤ちゃんを迎えることができる社会が広がりますように。今後は、こういったセミナーの内容をより身近に感じ、もっと多くの方が気軽に参加できるような形をめざして、新たな診療体制や相談の場を設けていきたいと思っております。


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