メッセージ

 広島大学は2001~2005年度のCOE形成プログラムで「すきまの科学」研究拠点を形成した。これに基づいて,先進機能物質研究センターは,学内共同教育研究施設として2006年4月1日に10年の時限付きで設立された。以来,本センターは革新的機能を有する物質を設計・創製し,物質科学分野の新しい研究領域を創出するとともに,若手研究者を育成し,国際的な研究教育の拠点となることを目的として研究活動を行ってきた。本センターは専任教員2名のほか,先端物質科学研究科,理学研究科,工学研究科,総合科学研究科の教員,及び他機関からの客員教授の計30名が集結し,3つの研究手法(マテリアルデザイン,新物質創製,機能開拓)を用いて異分野融合的に研究を推進することで,先進機能物質に関し世界トップレベルの成果を発信してきた。2010年度からはこの実績と特色を生かし,人類が直面しているエネルギー・環境問題の解決に必須となる革新的先進機能物質(エネルギー貯蔵・変換,省エネ情報機能物質)に的を絞って,サステナブル物質科学の創出を目指してきた。
  特に2007年度から2011年度まではNEDO水素貯蔵材料先端基盤研究事業の中で水素貯蔵量の多い非金属系水素貯蔵材料(軽元素系水素貯蔵物質)の基礎研究を先端物質科学研究科,工学研究科,総合科学研究科の実験研究グループや理論グループ,北海道大学,上智大学のグループと協力して実施し,その構造解析と反応機構の解明に取り組んだ。また,出口を見据えた産学連携の応用研究も積極的に進め,軽元素系水素貯蔵物質研究の拠点を構築した。2013年度から先端的低炭素化技術開発,「エネルギーキャリア」に,2014年度からはSIP(戦略的 イノベーション創造プログラム「エネルギーキャリア」に携わり,軽元素系水素貯蔵物質の中でも水素貯蔵量が最大レベルのアンモニアの製造や利用に関する研究開発を世界に先駆けて産学連携で進めてきた。2016年度には当センターから申請した窒素循環エネルギー研究拠点が広島大学自立型研究拠点として採択された。2017年度には先進機能物質研究センターの時限到来に伴い自然科学研究支援開発センターに統合され,その中に先進機能物質部門が設立された。
 大学院教育としては,国内,海外の著名な講師を招いて,物性セミナーを開催している。また,サステナブル物質に関連する化学・物性物理・デバイス開発について幅広い知識の習得を目標として,2010年度からは「サステナブル物質科学」の大学院共通講義もスタートさせた。この講義には毎年約80名の学生が聴講している。
 循環型で持続可能な社会(サステナブル社会)基盤の形成に貢献し得る再生可能エネルギー(太陽熱・光,地熱,風力,バイオマス,小型水力等)は,クリーンな次世代エネルギーとして注目されている。再生可能エネルギーを広く普及させるために,次世代自動車や太陽電池など最終製品・システムの中心機能を担う革新的先進機能物質が必要とされている。現在,日本の再生可能エネルギーの電源比率は15%であり,世界平均(24%)に比べ低い水準にある。  今後,再生可能エネルギーの電源比率向上に貢献できるサステナブル物質科学研究の拠点構築を推進していきたい。

 


 


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