2014年度開催


第477回 物性セミナー

題目 ミュオンスピン緩和法の概略と理研RAL ミュオン施設における実例紹介 ---- パイロクロア系Nd2Ir2O7 と重い電子系Ce(Ru,Rh)2Al10 の磁性----
講師 渡邊 功雄(理化学研究所 岩崎先端中間子研究室)
日時 平成27 年3月17日(火) 10:30-
場所 先端物質科学研究科 304S
要旨 理化学研究所は1994 年より理研RAL ミュオン施設を、英国Rutherford-Appleton 研究所に開設し、ミュオンスピン緩和法(μSR 法)を用いた物性共同研究を国内外の研究者と展開してきている。μSR 法は、内部磁場に関してNMR よりも感度の高い微視的磁気プローブである。ミュオンが生成された時点から有している自己スピン偏極のために、ゼロ磁場中における磁気スピン緩和現象を測定できるという利点を持つ。μSR 実験を実施できる場所は世界に4 か所しかない。理研RAL ミュオン施設は、日本人研究者がメインにかつ簡便に活用できるμSR 研究施設の一つであり、世界最強度の陽子加速器ISIS を用いて、世界最強度のミュオンビームを実験に供給している。
本講演においては、理研RAL ミュオン施設を概略し、μSR 研究手法に関して簡単に解説するとともに、その応用例を紹介する。特に、博士課程学生によって最近実施された興味ある研究成果を二つ紹介する。一つはパイロクロア系物質であるNd2Ir2O7 におけるIr 磁気モーメントの磁気秩序状態に関するものである。もう一つは、広島大グループとの共同研究を展開している近藤半導体Ce(Ru,Rh)2Al10 の特異な磁性に関するものである。これらの物質中におけるミュオン位置の計算手法の進展も合わせて紹介する。
担当 高畠 敏郎(先端物質科学研究科)

第476回 物性セミナー

題目 トポロジカル絶縁体・超伝導体の分類について
講師 塩崎 謙(京都大学理学研究科)
日時 平成27 年1 月27 日(火) 15:00-
場所 先端物質科学研究科 402N
要旨 トポロジカル絶縁体・超伝導体とは自由フェルミオンのトポロジカル相である。トポロジカル相の研究においてはまず、どのような対称性の下どのような非自明な相が出現し得るか、という分類問題が出発点となる。本講演ではトポロジカル絶縁体・超伝導体の分類問題について話したい。
トポロジカル相には以下の3つトピックがある。
(a)トポロジカル絶縁体・超伝導体
(b)欠陥に局在するギャップレス状態
(c)ワイル、及びディラック半金属・超伝導体
上記の3つの項目は「欠陥ギャップレス状態は絶縁体の端状態とみなすことができる」、「バルクのトポロジカル相と境界ギャップレス・トポロジ カル相とは1対1に対応する(バルク-境界対応)」という経験則により互いに密接に関係している。トポロジカル絶縁体・超伝導体の分類表の導 出について簡単に紹介し、3つの同等性について確認する。
さらに進んだトピックとして、結晶対称性によって守られたトポロジカル相の分類問題について議論したい。現在、簡単な点群対称性に対してのみ 分類が行われているに過ぎず、分類が未解明な対称性クラスが多々存在する。位数2の磁気点群(Z2 グローバル、鏡映、2回回転、空間反転)に 対しては系統的な分類が可能であり、このことについて解説する。

Ref: Ken Shiozaki and Masatoshi Sato, Phys. Rev. B 90, 165114 (2014).

担当 井村 健一郎 (先端物質科学研究科)

第475回 物性セミナー

題目 トポロジカル絶縁体で見られる新奇な電気伝導現象
講師 小林 浩二(上智大学理工学部)
日時 平成26年12月9日(火) 14:30-
場所 先端物質科学研究科 402N
要旨 近年、トポロジカル絶縁体に代表されるトポロジカルな秩序を持つ物質相に関する様々な研究が進められている。トポロジカル相にある物質の特徴は、非トポロジカルな物質(真空など)との界面に、乱れに対して安定な表面/エッジ状態が存在し、そこで特殊な物性が見られる事である。特に、トポロジカルに保護された表面/エッジ状態中には「完全伝導チャンネル」と呼ばれる無損失に電流を運ぶ状態が存在することにより、コンダクタンスの整数量子化という特異な輸送現象が見られる。
本セミナーでは、トポロジカル絶縁体で見られる特殊で多様なコンダクタンスの振る舞いや、コンダクタンスの量子化を利用した乱れの存在下におけるトポロジカル絶縁体の相図決定などを紹介する。

[1] K. Kobayashi, T. Ohtsuki, K.-I. Imura, PRL 110, 236803 (2013).
[2] K. Kobayashi, T. Ohtsuki, K.-I. Imura, I. Herbut, PRL 112, 016402 (2014).
[3] K. Kobayashi, K.-I. Imura, Y. Yoshimura, T. Ohtsuki, arXiv:1409.1707.

担当 井村 健一郎(先端物質科学研究科)

第474回 物性セミナー

題目 Structural studies of complex hydrides
講師 Bjørn C. Hauback(Institute for Energy Technology, Norway)
日時 平成26年12月1日(月) 13:30-
場所 先端物質科学研究科 402N
要旨 One of the greatest technological barriers of widespread introduction of hydrogen in global energy systems is an efficient and safe storage method. Hydrogen chemically bonded in metals or intermetallic alloys constitutes a storage alternative where very high volumetric densities can be obtained. However, in the known materials for hydrogen storage, it is always a trade-off between volumetric densities, gravimetric densities, stability, kinetics, price and safety. During the last years new hydrogen storage materials with improved properties have been synthesized and characterized. In particular novel complex hydrides based on the elements aluminium, boron, magnesium and nitrogen have been extensively studied.
In order to understand the properties of materials and also to be able to determine new compounds, detailed knowledge about the position of the atoms is of major importance. Neutron diffraction is a unique tool for studies of hydrogen/deuterium in hydrogen storage materials. For studies of complex structures, compounds with both light and heavier elements, like H-containing compounds, and samples with more than one phase, the combination of powder neutron diffraction (PND) and X-rays diffraction (PXD) is crucial. For very complicated structural features and in-situ experiments, the use of synchrotron radiation X-rays (SR-PXD) is important.

Ball-milling at different conditions: in Ar, reactive milling with maximum 100 bar in H2 and at liquid nitrogen temperature (cryomilling) has been used as the main synthesis method. The PND experiments are performed with the PUS diffractometer at the JEEP II reactor at IFE and the SR-PXD experiments at the Swiss-Norwegian Beam-lines (SNBL) at ESRF, both with the high-resolution setup and the MAR image plate Pilatus 2M system for in-situ experiments. Furthermore, IR, Raman and NMR methods have contributed to the understanding of structural features. The hydrogen storage properties have been studied with TG-DSC, mass spectroscopy, Thermal Programmed Desorption methods and Pressure-Composition Isotherm techniques.

Selected structural detailed structural studies and in-situ desorption diffraction experiments will be presented. In particular the presentation will address recent studies of novel boron-based hydrogen storage materials. The combination of SR-PXD and PND has in particular been important and will be emphasized.

担当 小島 由継 (先進機能物質研究センター)

第473回 物性セミナー

題目 空間反転対称性を持たないd電子系物質における超伝導
講師 江口 学 (京都大学工学研究科)
日時 平成26年11月14日(金) 16:30-
場所 理学研究科C212会議室
要旨 ラシュバ型やドレッセルハウス型に代表される「反対称スピン軌道相互作用」の存在下では、電子のスピン縮退が解かれ「時間反転対称性を破らないスピン偏極状態」が生じる。この電子状態で起こる超伝導は「スピン一重項-三重項混合状態」として理解され、異常な磁気応答を含む様々な新奇現象の舞台として注目されている。固体中では、上記のスピン偏極状態は結晶の空間反転対称性の破れによって実現される[1]。しかし一方で、実際に報告された超伝導の多くはCeを含むf電子系物質を除けば従来型の理論の枠組みで説明できるものであり、結晶の対称性に起因する新奇現象の発現には未解明の部分が多い。
本セミナーでは、Ceに代表される磁性元素を含まず、強い反対称スピン軌道分裂のみを顕著な特徴とする5d電子系物質の超伝導特性について発表する。特に、ラシュバ型の対称性の破れを持つ結晶の中で最大の超伝導転移温度を持つCaIrSi3 (Tc =3.6 K)、スピン三重項状態が支配的な状況が実現するキラル型結晶Li2(Pd1-xPtx)3Bの二種類の物質に着目し、これらの物質の結晶育成や第一原理計算、比熱測定の結果に基づき新奇超伝導状態の発現と結晶の対称性の関係について議論する。
[1] S. Fujimoto, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 051008 (2007).
[2] G. Eguchi et al., Phys. Rev. B 83, 024512 (2011).
[3] G. Eguchi et al., Phys. Rev. B 86, 184510 (2012).
[4] G. Eguchi et al., Phys. Rev. B 87, 161203(R) (2013).
担当 木村 昭夫(先端物質科学研究科)

第472回 物性セミナー

題目 層状BiS2系超伝導体における強相関f電子物性の探索
講師 青木 勇二(首都大学東京大学院理工学研究科・教授)
日時 平成26年10月16日(木) 16:20-
場所 先端物質科学研究科 401N
要旨 超伝導体LnO1-xFxBiS2(Ln:希土類イオン)は、2012年に発見されたBiS2系層状超伝導体の一つであり[1]、希土類イオンを含むブロック層と、伝導を担うBiS2層が積層した結晶構造を持つ。この化合物系は、銅酸化物系やFeAs系の超伝導体との結晶構造の類似性から注目を集めており、その超伝導特性や発現機構の解明を目指した研究が進展している。我々は、強い2次元性を持つ結晶構造を反映して発現することが期待される、特異な希土類イオンの4f電子物性と、その超伝導との関わりを調べている。Ce系で見出した量子臨界的挙動を含め、最近の進展を紹介する。
[1] Y. Mizuguchi et al.: Phys. Rev. B. 86 (2012) 220510(R).

備考(講師紹介):
青木先生は,広島大学物理学科の低温物理学研究室で博士号を取得し,都立大学へ助手として任用されました。その後は,多くの方がご承知のように,強相関電子系物質や超伝導体の研究,とくに充填スクッテルダイトに関する研究で数々の業績を上げられ,現在は首都大東京の教授としてご活躍になっておられます。 表題の研究内容を大変わかりやすく解説して下さいますので,皆様ふるってご参加下さい。

担当 鈴 木孝至(先端物質科学研究科)

第471回 物性セミナー

題目 X線吸収分光法によるFeとCo高圧相の結晶構造と磁性の研究
講師 石松 直樹(理学研究科)
日時 2014年7月24日(木) 16:30 -
場所 先端物質科学研究科 402N
要旨 室温常圧下のFe(bcc構造)とCo(hcp構造)は,同じ最外殻d電子数をもつ4dと5d遷移金属(hcp構造のRuとOs,fcc構造のRhとIr)と異なる結晶構造をとる.この相違はFeとCoの強磁性に起因する.このため,高圧下ではFeがhcp構造にCoがfcc構造に構造相転移し,同時に強磁性相は消失すると考えられてきた.このため,我々は高圧下のFeとCoの磁性と結晶構造をX線吸収分光による実験から調べている.その結果,FeとCoの高圧相は予測とは異なる結晶構造と磁性であることが最近分かってきた.
Coのhcp→fccの相転移は約81GPaで起こり,約134GPaでfcc相が単相になる.強磁性秩序の存在を表すX線磁気円二色性のスペクトルは加圧で減衰するが,fcc相単相の圧力下でも小さなスペクトルが残る[1].このCo高圧相のスペクトルは帯磁率の大きな常磁性的な振る舞いを見せている.Feに関しては,bcc→hcp構造相転移の過程をEXAFSと呼ばれる吸収スペクトルから決定した[2].Feの構造相転移は約14GPaで起こり,結晶格子の剪断変形とshuffleと呼ばれる格子面の変位を伴うマルテンサイト変態である.EXAFSの結果によると剪断変形が最初に進行し,shuffleの原子変位はhcp相の原子位置に達する前に完了する.このためhcp構造よりも対称性が低い構造がFe高圧相の結晶構造として示唆されている.
[1] N. Ishimatsu et al., Phys. Rev. B 83, 180409(R) (2011)
[2] N. Ishimatsu et al., Phys. Rev. B in press
担当 松村 武(先端物質科学研究科 内7021)

第470回 物性セミナー

題目 New hydrogen storage technologies from the University of Warsaw
講師 Wojciech Grochala(Center for New Technologies, University of Warsaw)
日時 2014年5月26日(月) 10:30 -
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 Two recent developments in materials for hydrogen storage will be described: (I) a novel scalable wet method for preparation of dead-mass free borohydride materials [1] as well as (II) synthesis of H-rich materials containing the BH3-NH2-BH2-NH2-BH3– anion [2].
(I) The current solutions to efficient hydrogen storage in the solid state greatly rely on dry preparative pathways involving mechanochemical reactions. The serious drawbacks of this approach consist of (i) lack of scalability and safety problems associated with high-energy milling of large quantities of air- and moisture-sensitive hydride materials, (ii) incomplete yield, (iii) presence of LiCl (or other) dead mass, which decreases the effective H content of the product (by at least 50%) and is inseparable from the borohydride/alanate of interest using physical means, and (iv) inapplicability of this method for synthesis of metastable materials. We have recently developed a method which overcomes most of these problems; our approach relies on the classical wet synthesis inorganic solvents, but also utilizes methathetic reactions.
(II) We report a novel family of hydrogen–rich materials – alkali metal di(amidoborane)borohydrides, M(BH3NH2BH2NH2BH3), shortly "M(B3N2)". The title compounds are related to metal amidoboranes (amidotrihydridoborates) but they have higher gravimetric H content and they evolve pure H2 gas. Differences in thermal stability between amidoboranes and respective di(amidoborane)borohydrides allow to explain evolution of ammonia impurity (together with H2) via a side reaction which takes place during thermal decomposition of light alkali amidoboranes, MNH2BH3 (M=Li, Na, Li½Na½) [3].

References
[1] T. Jaroń, W. Grochala, et al, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., submitted (2014).
[2] K. J. Fijałkowski, W. Grochala, et al, Adv. Energy Mater., submitted (2014).
[3] K. J. Fijałkowski, W. Grochala, J. Mater. Chem., 19 (2009) 2043-2050.

担当 市川 貴之 (先進機能物質研究センター)

 


 


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