- 第504回 大槻 東巳(上智大学 大学院理工学研究科)
- 第503回 岡本 淳(National Synchrotron Radiation Research Center, Taiwan)
- 第499-502回 第500回記念セミナー
- 第498回 桜庭裕弥(物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究拠点 主任研究員)
- 第497回 齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)
- 第496回 西郡 至誠(島根大学 総合科学研究支援センター)
- 第495回 佐藤 仁(広島大学放射光科学研究センター)
- 第494回 Javier Campo (Materials Science Institute of Aragón, CSIC, University of Zaragoza, Spain)
- 第493回 末益 崇(筑波大学・数理物質系)
- 第492回 播磨尚朝 (神戸大学大学院理学研究科)
- 第491回 Dr. Andris Anspoks (Institute of Solid State Physics, University of Latvia)
第504回 物性セミナー
題目 | 深層学習を用いたランダム電子系の量子相転移の研究 |
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講師 | 大槻 東巳(上智大学 大学院理工学研究科) |
日時 | 2017年2月16日(木)13:00- |
場所 | 先端物質科学研究科 403N |
要旨 | 不純物や格子欠陥により結晶周期性が乱れている固体電子系は,金属相,アンダーソン絶縁体相,量子ホール絶縁体相,量子異常ホール絶縁体相,量子スピンホール相,トポロジカル絶縁体相,ワイル半金属相など様々な物質相を示す。それぞれの相において電子の波動関数は固有の特徴をもつ。しかし,実際に波動関数を眺めてみても,不純物等により波動関数の振幅は大きく揺らぎ,その特徴をつかむことは困難である。この研究ではここ数年著しい進歩を見せた多層畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習,いわゆる深層学習を用いて,結晶周期性が乱れた電子系の波動関数を画像解析した。これにより2次元の金属-絶縁体転移,および量子異常ホール絶縁体-絶縁体転移,3次元トポロジカル絶縁体やワイル半金属の相図を決定した。
参考文献 |
担当 | 井村健一郎(先端物質科学研究科) |
第503回 物性セミナー
題目 | 高輝度・高分解能軟X線RIXSによる最近の物性研究と、TPS建設の現状について (Recent High-intensity & High-resolution soft X-ray RIXS research of physical properties and construction status of TPS) |
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講師 | 岡本 淳 (National Synchrotron Radiation Research Center, Taiwan) |
日時 | 2017年1月27日(金)16:30- |
場所 | 理学研究科C212 会議室 |
要旨 | 2015年にESRFが分解能E/ΔE > 20,000の軟X線領域の共鳴非弾性X線散乱(RIXS = Resonant Inelastic X-ray Scattering)測定装置を立ち上げたのを皮切りに、各地の放射光施設において、高輝度・高エネルギー分解能の軟X線RIXS装置の建設が進んでいる。NSRRCにおいても、1.5 GeVリング放射光施設TLS(= Taiwan Light Source)で分解能E/ΔE ~ 10,000の軟X線RIXS測定を安定して行えるようになった2014年以来、強相関電子系物質の集合励起やdd励起構造を対象とした研究を進めている。 本セミナーでは、軟X線RIXSについて、その原理と装置について説明したのち、最近のTLSで行われたLaCoO3のspin状態クロスオーバーについての研究結果を述べ、3 GeVリング放射光施設TPS(= Taiwan Photon Source)における軟X線RIXS等のビームラインの現状について紹介する。 |
担当 | 木村昭夫(理学研究科) |
第500回 物性セミナー
日時 | 2017年1月11日(水)13:20-17:00 |
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場所 | 先端物質科学研究科 401N |
要旨 |
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担当 | 木村昭夫(理学研究科) |
第498回 物性セミナー
題目 | ホイスラー合金系ハーフメタル材料のスピントロニクスデバイス応用の進展と課題 |
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講師 | 桜庭 裕弥(物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究拠点 主任研究員) |
日時 | 2016年12月16日(金)16:30 - |
場所 | 理学研究科C212 会議室 |
要旨 | “ハーフメタル”はフェルミ準位においてアップかダウンスピン電子のいずれかのバンドにのみエネルギーギャップを持つ特殊な電子構造を有する材料である。完全にスピン分極した伝導電子を有することから、磁気抵抗効果などスピンに依存したあらゆる現象を劇的に増大させる究極的スピン分極材料として期待されてきた。Co2MnSi などのCo 基ホイスラー合金系材料は、そのハーフメタル性が理論予測された1990 年代以降、世界的に多くの研究が積み重ねられ、トンネル磁気抵抗(TMR)素子[1]や巨大磁気抵抗(GMR)素子[2]などにおいて巨大な磁気抵抗効果が観測され、そのハーフメタル性は実験的にも実証された。 特に面直電流型GMR 素子では、室温においてもCoFe などの一般的な強磁性体では実現し得ない大きな磁気抵抗比が実現され、実デバイスへの応用への期待も強く高まっている。しかしながら、そのキュリー温度が高いにも関わらず、磁気抵抗効果の温度依存性が大きく、室温では低温ほどの特性が得られないなど未解決・未解明な課題も多く残されている。本セミナーでは、ホイスラー合金ハーフメタル材料やそのスピントロニクスデバイス応用の進展と、残された課題・今後の展望について講演させて頂く。 [1] Y. Sakuraba, et al, “Giant tunneling magnetoresistance in Co2MnSi/Al-O/Co2MnSi magnetic tunnel junctions” Appl. Phys. Lett.88 192508 (2006). [2] T. Iwase, Y. Sakuraba, et al., “Large Interface Spin-Asymmetery and Mangetoresistance in fully epitaxial Co2MnSi/Ag/Co2MnSi Current-perpendicular-to-plane magnetoresistive device”Applied Physics Express, 2, 063003 (2009) [3] J. W. Jung, Y. Sakuraba, et al., “Enhancement of magnetoresistance by inserting thin NiAl layers at the interfaces in Co2FeGa0.5Ge0.5/Ag/ Co2FeGa0.5Ge0.5 current-perpendicular-toplane pseudo spin valves” Appl. Phys. Lett. 108, 102408 (2016). |
担当 | 木村昭夫(理学研究科) |
第497回 物性セミナー
題目 | 人間活動にともなう窒素循環の研究-地下水環境に着目して- |
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講師 | 齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科) |
日時 | 2016年12月19日(月)16:00 - |
場所 | 先端物質科学研究科302S |
要旨 | 窒素は生命にとって必須の元素であり,地球上では大気圏,水圏,土壌圏およびその間において輸送され,生態系内で利用され循環している.この窒素循環は生物地球化学的循環の一部であり,水循環によって大きく駆動される.しかしながら,20 世紀の加速的な人間活動にともない水循環も窒素循環も大きく歪められ,特にハーバー・ボッシュ法によるアンモニアの人工生産が開始されて以降は,地下水の窒素汚染や水域の富栄養化といったローカル~グローバルスケールでの環境問題が顕在化してきた.人間活動にともなう窒素循環を考える上では,農地や都市域における人為由来の窒素負荷に加え,水循環にともなうそれらの輸送を評価することが重要であり,さらには酸化還元過程や生物過程にともなう窒素の形態変化,およびそれらの生物地球化学過程と水循環という物理過程との相互作用についても考慮する必要がある.また,以上のプロセスに関する地域的多様性(気候,地形・地質条件,土地利用の違いなど)を踏まえた議論も重要である.本発表では,人間活動が窒素循環に及ぼす影響に関する近年の研究動向を踏まえつつ,特に演者が取り組んできた瀬戸内海沿岸域や東南アジア沿岸域の地下水環境を扱った研究事例について紹介する. |
担当 | 市川 貴之(総合科学研究科) |
第496回 物性セミナー
題目 | 3次元熱緩和法による高圧力下熱伝導率・比熱測定 |
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講師 | 西郡 至誠(島根大学 総合科学研究支援センター) |
日時 | 2016年9月27日(火) 16:30 - |
場所 | 先端物質科学研究科401N |
要旨 | 高圧力下での熱特性の測定は実施が困難な実験の一つである。従来,圧力下で行われてきた「断熱法」および「交流法」による比熱測定では,それぞれに,測定条件・測定温度範囲が限定される,相対変化は測れるが絶対値が得られない,といった問題を抱えている。また,熱伝導率に関してはバルク試料に対する高圧力下での測定はほとんど行われていない状況にある。 我々が開発した「3次元熱緩和法」は試料の周りにある圧力媒体を3次元的な熱リークとして捉え,試料を局所加熱した時の,ヒーター→試料→圧力媒体,という熱の流れを有限要素法を使った計算機シミュレーションによって再現し,実験結果と比較することにより熱伝導率・比熱を求める新しい手法である。試料の熱特性のみならず圧力媒体の特性も同時に評価できるため,応用の範囲は広いと考えている。 セミナーでは本手法の詳細とともに実際にCeRh2Si2の熱伝導率・比熱測定に適用した結果を紹介する。反強磁性転移(常圧でTN=36K)による熱伝導率・比熱の異常が加圧とともに抑えられていく様子や圧力媒体であるダフネオイル7373が200〜250Kで固化する様子など,本手法ならではの実験結果が得られている。 |
担当 | 鈴木孝至(先端物質科学研究科) |
第495回 物性セミナー
題目 | Yb 系化合物の光電子分光 |
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講師 | 佐藤仁(広島大学放射光科学研究センター) |
日時 | 2016 年7月28日(金) 16:30 - |
場所 | 理学研究科C212会議室 |
要旨 | Yb はランタノイド系列の終端近くに位置する元素であり4f 電子をもっている。4f 電子は固体中でもほとんど局在しているが、伝導電子とのわずかな混成(cf 混成)を起源として、興味深い様々な物性を示す。Yb 化合物の性質は、定性的には、ドニアック相図と呼ばれるもので理解されている。cf 混成が小さい場合は伝導電子を介した4f 電子間相互作用(RKKY相互作用)により低温で磁気秩序を示す。一方cf 混成が大きい場合は伝導電子のスピンにより4f モーメントが遮蔽され(近藤効果)、非磁性フェルミ液体となる。このときYb 価数がYb2+とYb3+の間でしばしば揺動する。YbInCu4 のように温度によって価数転移を起こす物質もある。我々は同じ結晶構造と類似の伝導電子をもちながら、ドニアック相図で対極に位置する系をいくつかピックアップし、放射光を用いた光電子分光により電子状態を調べて来た。セミナーではYbInCu4 の結果[1]を導入とした後、これらの系(YbNi3X9(X=Al,Ga)[2], YbNiX'(X'=Si,Ge)[3]など)の光電子スペクトルにみられる共通的なふるまいについて説明する。時間に余裕があれば、YbNiGe3 の圧力依存発光分光の結果[4]についてふれる。 [1]Y. Utsumi et al., Phys. Rev. B 84, 115143 (2011). [2]Y. Utsumi et al., Phys. Rev. B 86, 115114 (2012). [3]H. Sato et al., Phys. Status Solidi C 12, 620 (2015). [4]H. Sato et al., Phys. Rev. B 89, 045112 (2014). |
担当 | 松村 武(先端物質科学研究科)・内線7021 |
第494回 物性セミナー
題目 | Incommensurate magnetic structure in a new multiferroic molecular magnet |
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講師 | Javier Campo (Materials Science Institute of Aragón, CSIC, University of Zaragoza, Spain) |
日時 | 2016年7月15日(金)16:30 - |
場所 | 理学研究科C212会議室 |
要旨 | The family of antiferromagnetic A2[FeCl5(H2O)] compounds (A = alkali metal or ammoniumion) has awakened a renewed interest owing to the recent observation of multiferroicity in some of its members.[i],[ii] We have recently investigated by means of single crystal and powder neutron diffraction the magnetic structure of (ND4)2[FeCl5(D2O)] (with properties completely equivalent to the hydrogenated form) in order to understand the underlying mechanism of multiferroicity in this compound. This material orders antiferromagnetically at TN = 7.25 K and multiferroicity arises below ca. 6.9 K with the onset of ferroelectric order. We have observed at zero magnetic field a cycloidal magnetic structure propagating in the c-axis with k = (0, 0, 0.23) and with the magnetic moments lying in the ac plane (Fig.1). This cycloid would be at the origin of the magneto-electric coupling via inverse Dzyaloshinsky–Moriya interaction[iii]. [i] Ackermann M, Brüning D, Lorenz T, Becker P and Bohatý L 2013 New J. Phys. 15 123001 |
担当 | 高阪 勇輔(理学研究科化学専攻)・内線5285 |
第493回 物性セミナー
題目 | Si系高効率太陽電池を目指して -新材料との出会いから太陽電池動作まで- |
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講師 | 末益 崇(筑波大学・数理物質系) |
日時 | 2016年7月14日(木)16:30 - |
場所 | 理学研究科C212会議室 |
要旨 | 現在、太陽電池市場の9割を結晶Si太陽電池が占めるが、間接遷移型半導体であるため光吸収係数が小さく、セル価格の約半分を占める材料費を大幅に下げることは難しい。このため、CIGS(CuInGaSe2)系およびCdTeが薄膜太陽電池材料として市場に出ているが、資源量を含めてさまざまな問題を抱えている。太陽電池材料としてのBaSi2の特徴は、光吸収係数と少数キャリア拡散長の両方が大きいことであり、これは、光生成キャリアの取り出しに大変有利に働く。また、既存の太陽電池材料の短所の多くを克服できる可能性があり、太陽電池の新材料として注目されている。 講演者は、2001 年よりBaSi2の研究を始めた。当初は、鉄シリサイド(β-FeSi2)を活性領域とする光配線用の発光ダイオード(LED)の研究をしていた。鉄シリサイドLEDの発光波長は1.6μmであったが、受光側のゲルマニウム(Ge)で十分な感度がある1.4μmまで短波長化しようと、Si原子の一部を他の元素で置換するなど取り組んでいたが、上手くいかなかった。このような背景から、禁制帯幅の制御が可能なシリコン(Si)系の半導体を探索することになり、BaTiO3を参考にしてBaSi2に注目した。BaSi2の禁制帯幅が約 1.3 eV であること、光吸収係数が 1.5 eV より高エネルギー側で 3×104 cm-1 を超える大きな値をもつことが実験で明らかになり、BaもSi も資源が豊富な元素であるため、2006 年ごろから、この材料の応用の 1 つとして太陽電池を考え始めた。 講演では、太陽電池に不可欠な不純物ドーピングによる伝導型制御、変換効率を左右する少数キャリア特性などの基礎物性から、BaSi2 pn接合型太陽電池の現状を紹介する。 |
担当 | 木村昭夫(内7400) |
第492回 物性セミナー
題目 | URu2Si2 の隠れた秩序の再考 |
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講師 | 播磨尚朝 (神戸大学大学院理学研究科) |
日時 | 2016年7月1日(金) 13:30 - |
場所 | 総合科学部 K206 |
要旨 | URu2Si2の約17K の相転移は比熱から2次転移であることが知られているが、低温での秩序変数は謎のままである。群論的考察から低温相の空間群を絞り込んで[1] から6 年が経過した。この間、4回対称性を破るなどの、部分群を絞り込む時の仮定を否定するなどの実験結果の報告もあったが、決定的な結論には至っていない。しかしながら、提案された部分群と整合する秩序変数の観測も行なわれていない。最近のラマン散乱の実験によると、#128 の空間群が有力と見られている[2] が、この空間群は反強16 極子秩序として提案されている[3] ものである。ただし、#128 はRu 位置での4回対称性が失われるために、Ru 位置でのNQR 振動数になんらかの異常が観測されなければならない。これらの経緯を振り返り議論することで、隠れた秩序変数を再考する。 [1] H. Harima, et al, J. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 033705. [2] J. Buhot, et al, Phys. Rev. Lett. 113 (2014) 266405. [3] H. Kusunose, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 80 (2011) 084702. |
担当 | 宗尻修治(内6362) |
第491回 物性セミナー
題目 | Modern methods in x-ray absorption spectroscopy: theory, experiment, data analysis |
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講師 | Dr. Andris Anspoks (Institute of Solid State Physics, University of Latvia) |
日時 | 2016年6月24日(金) 10:30- |
場所 | 理学研究科C212 会議室 |
要旨 | I will present the summary of the experimental technique of the x-ray absorption spectroscopy (XAS) and physical principles of the XAS with emphasis on the condensed mater (from amorphous materials till monocrystals). I will cover x-ray absorption near edge structure (XANES) and extended x-ray absorption fine structure (EXAFS) spectra, how they are extracted from the XAS, and basic theory used in data analysis. Differences and similarities between data obtained from x-ray and neutron diffraction will be discussed. Theoretical modelling of EXAFS will be covered, as well as how to obtain local atomic structure parameters from experimental data. I will explain different data analysis methods, including conventional fitting procedures, and advanced methods like radial distribution function reconstruction, atomic structure reconstruction using reverse Monte-Carlo, combination of molecular dynamics and EXAFS. |
担当 | 中島伸夫(理学研究科)・内線7361 |