2019年度物性セミナー


第545回 物性セミナー

題目 アンモニアの直接燃焼利用と燃焼科学
講師 小林 秀昭 氏(東北大学流体科学研究所・教授、産業技術総合研究所)
日時 2020 年1月23日(木) 16:00-
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 アンモニアは水素エルギーキャリアであると共に,直接燃焼可能なカーボ ンフリー燃料である.水素バリューチェーンの最下流にあるアンモニアの直接燃焼利用は,発電や工業分野において温室効果ガス排出を抑制できる有望な将来技術として水素基本戦略や第5 次エネルギー基本計画に明記されるに至った.内閣府主導による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」ではガスタービン,レシプロエンジン,工業炉,微粉炭ボイラー等のエネルギー機器におけるアンモニア直接燃焼の技術開発に成果を挙げてきた.本講演では, SIP「エネルギーキャリア」におけるアンモニア直接燃焼に関する成果,ならびにアンモニア燃焼の課題である低燃焼性やFuel-NOx 生成といった基礎特性を燃焼科学的視点から解説し,それらの課題解決に向けた方策を述べる.
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第544回 物性セミナー

題目 大学と企業の共同研究(材料編
講師 中西 治通 氏 (トヨタ自動車株式会社 EHV電池設計部 技範(広島大学客員教授))
日時 2019年11月29日(金) 15:00-
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 オイルショック、大気汚染から地球温暖化まで、変遷する時代背景の中、大学と企業とはそれぞれの異なった立場で共同研究を実施してきた。共同研究の足場となる、ターゲットや時間軸が変化したため、契約期間内にゴールできない研究も数多くある。いくつかの材料研究について紹介しながら、CASEについても紹介する。
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第543回 物性セミナー

題目 水素ステーションのリスクアセスメントと社会実装
講師 三宅 淳巳 氏((横浜国立大学先端科学高等研究院・教授)
日時 2019年10月7日(月) 16:10-
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 水素エネルギー社会の構築に向けて多くの技術開発が進められている。そのうちの一つに燃料電池自動車に高圧の水素を充填するための水素ステーションがあり,設計・開発段階から導入期を経て,現在は普及のステージに入っている。一方,水素は着火・燃焼・爆発性の高い可燃性ガスであることから,公共の安全を確保するために高圧ガス保安法を始めとする各種の法規制が定められており,これらへの対応が普及が進まない要因の一つとなっていた。
本セミナーでは,演者らが行ってきた水素ステーションの安全性評価について紹介し,リスクアセスメントを実施することにより設備やシステムの安全要件を抽出し,適切な対策を施すことでリスクを制御して安全レベルを担保できることを示し,法的要求事項を満たすとともに社会の安全要求に応え,安心感のある技術システムとして社会実装する道筋について議論する。
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第542回 物性セミナー

題目 β’型BEDT-TTF系有機磁性体のμSR
講師 佐藤 一彦 氏(埼玉大学理工学研究科)
日時 2019年9月18日(水) 15:30-
場所 先端物質科学研究科 401N
要旨 β’-(BEDT-TTF)2ICl2は常圧においてはTN=22Kの反強磁性絶縁体であるが、高圧下では金属化し、8GPa近傍において超伝導転移を示す。超伝導転移温度は最大で14.2Kに達し、BEDT-TTF系有機伝導体では最も高い値を示す。高圧下の磁気的性質は明らかになっていないが、他の有機超伝導体からの類推で、高圧超伝導相は磁気相に隣接しており、その磁気的揺らぎが超伝導に関与していると考えられている。我々はβ’-(BEDT-TTF)2ICl2とその関連物質の磁気的性質をミュオンスピン回転緩和法実験(μSR)により圧力下を含めて研究している。その結果、β’-(BEDT-TTF)2ICl2の反強磁性状態において測定されるミュオンスピン回転周波数が1GPa以上の圧力においては5倍にも増強されることが明らかになった。ミュオンスピン回転周波数はミュオン位置における内部磁場に比例するため、この結果は何らかの圧力誘起磁気相転移が1GPa以下で起こっていることを示唆している。講演ではμSR用圧力容器の開発についても紹介したい。
担当 鈴木 孝至(先端物質科学研究科)

第541回 物性セミナー

題目 Large scale hydrogen storage materials and systems- simulation and design
講師 Pratibha Sharma 氏 (Indian Institute of Technology Bombay)
日時 2019年9月12日(木)14:00-
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 The poor thermal conductivity of metal hydrides coupled with large amount of heat required/released during de/hydrogention reaction makes thermal management essential in hydrogen systems design. Proper design of heat exchangers and inclusion of heat enhancement materials are required in such systems'. The design of such systems is dependent on several parameters some of these are geometrical, some reaction related and some being specific to the materials used. The talk will be towards materials and such metal hydride beds which can be used in scaling up for large scale applications.
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第540回 物性セミナー

題目 水素発生及び貯蔵における金属と金属水素化物の応用 
講師 李  星国 氏(北京大学・教授)
日時 2019年9月10日(火)10:00-
場所 先端物質科学研究科 302S
要旨 水素エネルギーは再生と持続可能な新エネルギーであり、化石エネルギーを置き換えるエネルギーとして期待されている。水素の発生が水素エネルギー応用の第一歩である。水電解が非常に有望な水素発生方法であるが、触媒作用が重要である。本研究では溶液反応、プラズマ処理、メカニカルボールミルなどの合成方法により、低毒性、低コストの原料を利用して、温和な条件下でNi、Co、Cuなどの遷移金属のナノ粒子及び炭化物、リン化物、窒化物を合成した。さらに、これらの酸素発生反応(Oxygen evolution reaction,OER)と水素発生反応(Hydrogen evolution reaction,HER)の触媒性能を総合的に評価して太陽電池駆動の水電解による水素発生に応用した。
アークプラズマ法を用いてMgH2ナノ粒子を作製し,MgH2ナノ粒子の加水分解が新しい高容量水素発生システムを提供できることを実験的に示した。Mg-Y合金の水素貯蔵特性を調べることにより、Mg24Y5金属間化合物は1500 mAh/gまでの可逆充電と放電の電気化学容量を有し、商用LaNi5電極の4.4倍であることがわかった。Al加水分解とY-Pd薄膜を結合し、加水分解電池-ニッケル水素電池システムを設計し、加水分解の発熱エネルギーの8%-15%を電気エネルギーに変換し、全体としてのエネルギー利用効率を向上させた。金属水素化物は水素発生と貯蔵において優れた性能を示した。 今回の報告では、これらの内容について紹介する。
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第539回 物性セミナー

題目 朝永・Luttinger液体のトポロジカル相転移における偏極演算子の挙動
講師 中村 正明 氏(愛媛大学大学院理工学研究科)
日時 2019月8月29日(木)15:20-
場所 先端物質科学研究科 405N
要旨 Restaにより導入された偏極(polarization)演算子の基底状態での期待値[1]は、は1次元電子系における絶縁状態の判定だけでなく、その符号の変化により、系の偏極に関する情報を有限系において抽出する物理量となっている。これはLieb-Schultz-Mattis定理の議論で用いられる、ひねり演算子の期待値と解釈することもできる[2]。また、電子系だけでなく量子スピン系においても定義することができ、その場合はValence bond solid状態のsinglet bondの配置の相違を検出できることが議論されている[3]。我々はこの物理量を基底状態ではなく、ある特定の励起状態での期待値として評価することを考え、様々な1次元量子系で計算すると、トポロジカルな相転移点近傍では±1/2の普遍的な値の間で不連続的に変化することを見出した[4]。また、基底状態の期待値を計算したときはトポロジカル相転移近傍で連続的にゼロに近づくが、この時の有限サイズスケーリングの指数がどのように与えられるかは不明であった。これらの問題について、朝永・Luttinger理論(共形場理論)と摂動論を用いた議論から解釈を与える[4,5]。
[1] R. Resta, Phys. Rev. Lett. 80, 1800 (1998).
[2] M. Nakamura and J. Voit, Phys. Rev. B 65, 153110 (2002).
[3] M. Nakamura and S. Todo, Phys. Rev. Lett. 89, 077204 (2002).
[4] S. C. Furuya and M. Nakamura, Phys. Rev. B 99, 144426 (2019).
[5] M. Nakamura and S. C. Furuya, Phys. Rev. B 99, 075128 (2019).
担当 井村 健一郎(先端物質科学研究科)

第538回 物性セミナー

題目 層状超伝導体における特異な磁性と電子輸送
講師 青木 勇二 氏(首都大学東京大学院 理学研究科)
日時 2019月8月21日(水)16:20-
場所 総合科学部 J204
要旨 BiS2系層状超伝導体は、スピン軌道強結合電子が伝導を担う伝導層と、 希土類磁性イオンを含むブロック層が交互に積層したユニークな結晶構造を持つ。 我々は単結晶を用いた物性探索を進めているが、本系の磁性イオンが 多彩で特異な振る舞いを引き起こすことがわかってきた。 希土類元素の種類によって、非フェルミ液体的または重い電子的振舞を示したり、 伝導電子と結合することにより、特異な非金属状態が現れる。
本講演では、超伝導特性や構造不安定性にも触れつつ、 多様性に富む本系の磁性と電子輸送現象を紹介したい。
担当 荻田典男 (総合科学研究科)

第537回 物性セミナー

題目 Structural and magnetic properties of transition metal doped semiconducting nanomaterials and Photocatalytic Degradation of Methylene Blue by using ZNS/CNT Nanocomposites under Visible Light
講師 Sushil Kumar Jain 氏 (Manipal University Jaipur, Deputy Director (Alumni Relations))
日時 2019年6月14日(金) 15:00-
場所 先端物質科学研究科 304S
要旨 Nanotechnology involves the miniaturization of devices into nanometer sizes where the ultimate performance is enhanced dramatically. Nanomaterials typically exhibit unique Magnetic, optical, and photocatalytic properties compared to their bulk counterpart and even molecular complements. Semiconductor nanoparticles are a very important topic in on-going research activity across the world. Zinc oxide is attracting tremendous attention due to its interesting properties like wide direct band gap of 3.3 eV at room temperature and high exciton binding energy of 60 meV. Zinc oxide is widely used in a number of applications like photocatalysis, gas sensors, varistors, low-voltage phosphor material and so on. Tin dioxide (SnO2) is one of the most important semiconductor with a wide band gap (Eg = 3.6 eV at room temperature). It belongs to a class of materials that combines high electrical conductivity with optical transparency and thus constitutes an important component for optoelectronic applications. Moreover, 3d metal substitute ZnO and SnO2 have a lower cost when compared to actually available materials for similar applications. The present talk will focus on our recent work for the photocatalytic degradation of Methylene Blue from aqueous solution using ZNS/CNT photocatalyst under visible light. In addition, the future collaboration between our group and Hiroshima University will also be proposed for energy storage application.
担当 小島 由継(自然科学研究支援開発センター)

第536回 物性セミナー

題目 ディラック電子系におけるテラヘルツ非線型応答
講師 片山 郁文 氏 (横浜国立大学工学院)
日時 2019年5月17日(金)16:30-
場所 理学研究科 C212
要旨 エレクトロニクスの動作周波数をさらに高速化し、高度な情報処理技術を開拓していくためには、テラヘルツ領域の電場に対する物質の非線型な応答を理解し、制御してゆくことが重要である。本講演では、近年発展している超短パルスレーザーを用いた高強度テラヘルツ波発生手法について概観し、それを用いて筆者らが行ったディラック電子系のテラヘルツ応答に関する研究を紹介する。
ディラック電子系では、バンド分散が双曲線型となり、極めて小さいバンドギャップを持つことなどから、非線型なキャリア加速効果 [1] やZenerトンネリングによるキャリア生成 [2] など、興味深いテラヘルツ非線型応答が観測される。ディラック電子系ではこれらの非線形応答が比較的小さい電場強度でも発現することから、将来のテラヘルツデバイスの設計に重要な物質となるものと期待できる。
[1] Y. Minami et al., Sci. Rep. 5, 15870 (2015).
[2] I. Katayama et al., Phys. Rev. B 98, 214302 (2018).
担当 木村 昭夫(理学研究科)

 


 


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