2022年度物性セミナー


第553回 物性セミナー

題目 R3T4Sn13 (T = 希土類, T = 遷移金属)におけるカイラル構造相と反強磁気秩序での量子臨界性を示す電子物性
講師 岩佐 和晃 氏 (茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター・教授)
日時 2022年6月7日(火)16:30-
場所

先端物質科学研究棟302S(Teamsによるオンライン併用開催)

要旨 トポロジカル電子状態を発現する物質開発と物性の研究が進展しているが[1]、最近、近藤半導体/半金属物質でのWeyl電子状態の実現[2]、時間反転対称性の破れによるWeyl電子の磁性への効果[3]、などの研究が展開されている。本研究では、R3T4Sn13 (R = La, Ce; T = Co, Ru, Rh, Ir)を対象として、カイラル対称構造相転移あるいは反強磁気秩序の量子臨界点におけるトポロジカル電子状態の可能性や超伝導特性について、主に量子ビーム散乱を用いて行った研究を紹介する[6-10]。

[1] B.-J. Yang and N. Nagaosa, Nat. Commun. 5, 4898 (2014).
[2] S. Dzsaber et al., PRL 118, 246601 (2017).
[3] Yuanfeng Xu et al., PRX 7, 011027 (2017).
[6] Y. Otomo et al., PRB 94, 075109 (2016).
[7] K. Iwasa et al., PRB 95, 195156 (2017).
[8] K. Suyama et al., PRB 97, 235138 (2018).
[9] S. Nakazato et al., JPS Conf. Proc. 30, 011128 (2020).
[10] K. Iwasa et al., JPSJ 90, 124701 (2021).

担当 先進理工系科学研究科 松村武

第552回 物性セミナー

題目 21世紀のミクロ・ナノ物質科学を切り開く画期的放射光先端分光〜スピン分解・光電子2次元波数同時分解・波数顕微鏡(SP-2D-PMM)と外場摂動下の軟X線共鳴非弾性散乱分光(SX-RIXS) 〜
講師 (大阪大学産業科学研究所 ナノ機能デバイス分野 招へい教授 Forschungszentrum Jülich GmbH, Germany FZJ客員教授)
日時 2022年4月28日(木) 10:30-12:00
場所

理学部B棟101講義室

要旨 光電子の発見以来1世紀以上が経過した。その間XPSから始まる光電子分光法が目に見える進展を見せた。1980年代から盛んとなった角度分解光電子分光(ARPES)や共鳴光電子分光(RPES)やスピン分解光電子分光(SP-PES)、さらには計測効率はARPESの10-4から10-6程度にはなるものの、スピン分解角度分解光電子分光(SP-ARPES)などが少数の情熱的研究者によって開発されてきた。特に計測効率がそれらより2桁ほど高いFe-O VLEED検出器の開発により21世紀に入ってSP-ARPESが花開きHiSORが世界のSP-ARPESの拠点の一つとなり成果を生み続けている。一方Prof.Kirschnerを中心としたドイツグループは20世紀末頃からマルチチャンネルのスピン計測の出来る2次元スピンフィルターの開発に全力で挑戦して来た。菅が2012年から毎年6か月ほど滞在して来た独HalleにあるMax-Planck-Institute for Microstructure Physics(MPIM-Halle)で2014年の滞在中に光電子顕微鏡(PEEM)を対物レンズとするS字配置の2つの静電半球型電子エネルギー分析器と2次元スピンフィルターを持つSP-2D-PMMの開発に成功した。そしてこれまでのHiSORでのシングルチャンネルSP-ARPESの1万倍の効率でスピン偏極PxをEB(kx,ky)の3次元空間全体で測定することに成功した。この手法では容易にミクロナノデバイス迄の測定が可能になるので21世紀の物質科学やengineeringを先導すると確信した[1]。
 一方光電子分光はHAXPESと言えども完全にバルク敏感とまでは言い難い。その意味では磁場中で行える軟X線非弾性散乱は理論との協業によりバルクの占有、非占有電子状態のスピン情報をも得られる補完的手法であり、既に我々はSPring-8から半金属の磁性体Heusler合金で続々と成果を発信している[2]。今後電場や1軸性歪などのもとでの測定も東北放射光で行いたいと考える。
 本日はこれらの研究の現状と将来展望について紹介したい。
(本日の講演は日本語で行うが英語での質問は随時受付、英語で説明する事はいとわない)
[1] Photoelectron Spectroscopy, Bulk and Surface Electronic Structures, Springer Series in Surface Sciences 72 p1-p511(2021). S.Suga, A.Sekiyama, and C.Tusche.
[2] Detecting half-metallic electronic structures of spintronic materials in a magnetic field, H. Fujiwara, R.Y. Umetsu, F. Kuroda, J. Miyawaki, Y. Harada and S. Suga et al., Sci. Reports 11, 18654 (2021).
担当 先進理工系科学研究科 木村昭夫

 


 


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