寄贈本の紹介

宇宙倫理学

岡本慎平:著
昭和堂:出版社

著者からのメッセージ
  本書は宇宙開発に伴う様々な倫理問題を包括的に論じた論文集である。環境倫理やビジネス倫理、技術者倫理といった既存の様々な応用倫理学分野を横断し、今後生じうる倫理問題の解明をおこなった重要書であり、岡本は火星の惑星改造(テラフォーミング)に対する倫理的議論の現状を考察する章を執筆した。

ロボットに倫理を教える

W.ウォラック/C.アレン:著
岡本慎平/久木田水生:訳
名古屋大学出版会:出版社

著者からのメッセージ
  本書はWendell Wallach and Colin Allen, Moral Machines: Teaching Robots Right from Wrong, Oxford University Press, 2009の全訳である。ロボット工学や人工知能の発展にともない、そうした機器に組み込まれるべき「倫理」とはいかなるものなのか、そしてそれをどうやって実装していけばよいのかを考察した研究書であり、ロボット倫理学の入門書としての顔も持っている。

ポストコロニアル台湾の日本語作家 黄霊芝の方法

下岡友加:著
渓水社:出版社

著者からのメッセージ
   台湾には〈帝国〉日本の皇民化政策の下で青年期を過ごし、専ら日本語を通じて教育を受けた「日本語世代」と呼ばれる人々が存する。本書が論じるのは、この世代の代弁者と位置づけられる日本語作家・俳人の黄霊芝(1928-2016)の方法である。第一部では台湾の苦難の歴史を背景とする黄文学が、不完全で愚かな生き物としての普遍的な人間の生=悲喜劇を饒舌な語り口とブラック・ユーモアをもって提示する様相を詳らかにした。第二部には黄へのインタヴュー記録を収めた。日本・日本人・日本語・日本文化という〈四位一体〉を前提とする「日本文学」を相対化し、植民地主義を超える視座を体現した黄は、まさしくポストコロニアル台湾を代表する作家である。

『金瓶梅』の構想とその受容

川島優子:著
研文出版:出版社

著者からのメッセージ
   明代に誕生した『金瓶梅』は、当時の文人達を大いに驚かせ、多くの読者を獲得しました。出版文化が隆盛を極め、様々な書物が刊行されていた当時にあって、『金瓶梅』は他とは一線を画す書物として高く評価されたのです。では『金瓶梅』とは何を描いた作品で、何が評価されたのでしょうか。第一部では、『金瓶梅』がどのような構想のもとに誕生したのかについて、主に女性の描かれ方に注目をして検討を行いました。その後『金瓶梅』は江戸時代の日本にもたらされました。しかし『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』とともに四大奇書に数えられるものの、その受容については直接的な資料が少なく、よくわかっていませんでした。そこで第二部では、様々な資料に検討を加えることで、江戸時代における受容状況を明らかにしようと試みました。

源氏物語 読解と享受資料考(新典社研究叢書307)

妹尾好信 :著
新典社刊:出版社

著者からのメッセージ
  『源氏物語』は古典文学の最高傑作として、千年にも及ぶ享受の歴史があります。本書には、長い『源氏物語』の享受史を踏まえながら、本文の読解に 関する検討と、注釈や評論の書といったさまざまな享受資料についての主に書誌学的な考察を収めました。桐壺の更衣が亡くなる直前に詠んだ和歌とそ れに続く最後の言葉が正しく読めているのか、『源氏物語』に最も多く引用された紫式部の曾祖父藤原兼輔の和歌は本来どう理解するべきなのかから始 まって、中世に作られた『源氏物語』の続編『雲隠六帖』の読解、連歌師里村紹巴による注釈書の写本から版本への展開、中世から近世にかけての梗概 書の種々相などを多角的に論じました。『源氏物語』についてはまだまだ研究すべき課題がたくさんあることを実感します。

 

植民暴力の記憶と日本人ー台湾高地先住民と脱植民の運動

中村 平:著者
大阪大学出版会:出版社

 アジア・太平洋戦争後の世代として、私は植民地と戦争についての帝国日本の責任問題に関心を持ち、台湾高地でフィールドワークを行ってきました。本書は、そこで出会った「日本語世代」の台湾高地先住民タイヤルの人々との対話から、植民暴力の記憶と歴史経験に遡っていくものです。脱植民化が先住民の課題とされる中、和解(sblaq)や政治的指導者・「頭目」(mrhuu)のせめぎ合う意味と歴史に分け入り、また「理蕃」の認識論を論じています。

 

Akutagawa Ryūnosuke:une écriture du fragment

Beauvieux,Marie-Noëlle:著者
ANRT:出版社

著者からのメッセージ

 本書は「歯車」、「或阿呆の一生」、「侏儒の言葉」を始めとした、断片的な表面を持つ芥川龍之介晩年の作品を、西洋文学の理論において定義されている「断片」というジャンルから読み直す試みであり、芥川の晩年によく見られる独特な文体の再評価と、断片の文芸的な可能性の再発見を目指している。

 

ヘーゲルの行為概念―現代行為論との対話

ヘーゲルの行為概念―現代行為論との対話

ミヒャエル・クヴァンテ:著者
後藤弘志ほか:訳者

リベルタス出版:出版社

著者からのメッセージ
  1993年刊行の本書で著者クヴァンテは、主体の意図に依拠するヘーゲルの行為概念が、現代行為論における一人称的行為知、単なる出来事と志向的行為との区別、さらには出来事因果と責任帰属の次元との区別等の観点を先取りしていると論じる。1980年代まで互いに触れ合うことのなかった近代ドイツ観念論研究と現代英米の分析哲学との対話の開始を飾る橋頭保である。

ドイツ医療倫理学の最前線―人格の生と人間の死

ドイツ医療倫理学の最前線―人格の生と人間の死

ミヒャエル・クヴァンテ:著者
後藤弘志ほか:監訳者

リベルタス出版:出版社

著者からのメッセージ
   生命医療倫理学は、環境倫理学とともに、現実の諸問題を再び受け止めるところに成立した応用倫理学における古参である。本書は従来、主として人格か物件かというカントの厳格な二元論を理論的支柱として展開されてきたこのジャンルに、自然と精神との媒介性、承認関係による個的人格の社会的定位というヘーゲル的思考法を導入して、パラダイム転換をもたらした意欲作である。同時に、現代ドイツにおける生命医療倫理学の最良の見取り図でもある。

精神の現実性―ヘーゲル研究

精神の現実性―ヘーゲル研究

ミヒャエル・クヴァンテ:著者
後藤弘志:監訳者
硲智樹ほか:訳者

リベルタス出版:発行所

著者からのメッセージ
  近代ドイツ観念論の思想家ヘーゲルに関する綿密な研究を背景に、現代英米の分析哲学における心の哲学、行為論(なかでも責任帰属)、個人の自己決定とパターナリズムとのせめぎ合い等の問題に、自然と精神との媒介性、承認関係による個的人格の社会的定位といったヘーゲル的枠組みを使って縦横に答えた力作である。

存在肯定の倫理I ニヒリズムからの問い

後藤雄太:著者    
ナカニシヤ出版:出版社

著者からのメッセージ
  本書は、ニヒリズム問題の考察を通して、「存在肯定」の倫理を導きだそうと試みている。まず第I部では、ニーチェとハイデガーを中心とした思想史上のニヒリズム論を考察している。続いて第Ⅱ部では、ニヒリズムを特に存在論的観点から考察している。具体的には、存在の<無根拠性><偶然性><空性><無常性>という四つの側面に関して、哲学や宗教における関連性の深いテクストを選出し読解することを通して、思索している。最後の第Ⅲ部では、ニヒリズムを特に倫理学的観点から考察している。確固たる道徳原理の崩壊という「倫理的ニヒリズム」に陥っている現代であるが、そうした事態をむしろポジティヴに捉え直し、原理志向・普遍主義的な「道徳」とは異なる新しい<エチカ>の可能性を探究している。

菅茶山・賴山阳 汉诗研究

李 均洋・趙 敏俐:編者    
商务印书馆:出版社

著者からのメッセージ
   「日本漢詩」とは、日本人が中国古典文学の詩の形式を運用して創作した文学作品を指している。本書は江戸後期の文学者菅茶山(1748-1827)と頼山陽(1780-1832)が作った日本漢詩を系統的に考察した研究成果である。
  本書は、江戸時代の社会背景、特に中国の文化と思想が積極的に学習されていたという当時の社会風潮との関連性に注意を払いながら、日本漢詩の創作者たちが創作した日本漢詩の特徴を分析している。また、菅茶山と頼山陽が中国漢詩の内容と形式を受け入れると同時に、和歌や俳句といった日本の伝統的詩歌の手法を彼らの創作に取り入れていることを指摘し、その和中融合の試みが日本漢詩の特徴を形成したことを論証している。さらに、菅茶山の漢詩選に対する版本学的研究を通じて、詩選の背後に隠されていた文化観念上の差異をも明らかにしている。
  なお、本書は首都師範大学中国詩歌研究中心、中国教育部人文社会科学重点研究基地重大項目「日本漢詩研究」(批准号:08JJD752080 結項証書:14JJD004)における研究成果の一部である。

思想のグローバル・ヒストリーーホップズから独立宣言まで

思想のグローバル・ヒストリーーホップズから独立宣言まで

岡本慎平:訳者    
法政大学出版局:出版社

著者からのメッセージ
   本書はハーバード大学のデイヴィッド・アーミテイジ教授の著書 Foundations of Modern International Thoughtの翻訳である。思想史における国際論的転回をふまえ、十七世紀のホッブズやロック、あるいは十八世紀のバークやベンサムといった政治哲学者の思想が国境を超えて世界各地に伝播し受容され、やがて国際法や独立宣言といった国際的政治実践に与えていった影響を明らかにしている。

 

Journal of Wetland Archaeology 8

Journal of Wetland Archaeology 8

竹広文明:論文執筆   
Oxbow Books:出版社

著者からのメッセージ
Wetland Archaeology・湿地考古学に関する国際誌で、Wetland Archaeology Research Project ( WARP)の学会誌。英国エクセター大学が本拠。オクスフォードOxbow Booksで出版。寄贈のVolume 8の巻頭にTakehiro,F. 2008  Coastal Wetland Sites and Coastal Cave Sites: Archaeological and Environmental Investigations around Lake Nakaumi and Lake Shinji areas, West Japan. pp.1-23.を収録。

西晋一郎の思想-広島から「平和・和解」を問う

衛藤吉則:著者
広島大学出版会:出版社

寄贈者からのメッセージ
   本書は、「京都の西田(幾太郎)、広島(文理大)の西」と称された倫理学者西晋一郎の思想を「平和・和解」の視点から読み解いたものである。西は、戦前・戦中にわが国の国体論を導く一方、大戦末期に論語を題材に天皇陛下への御進講で、「食」や「兵」に比し「信」の重要性を訴えた。しかし、戦後は、西田の思想がひきつづき高い評価を得るのとは逆に、西の思想は、「国家主義的イデオロギー」の保持という漠たる指標のもと、意識的・無意識的に〈封印〉されていく。本書では、西が中心に据える〈虚〉という概念に注目し、彼の思想を、戦前における東西の思想的蓄積と発展のうちに位置づけ直し、「平和・和解」理論としての可能性を問うた。第二部では、未整理であった広島大学所蔵の膨大な西晋一郎関連資料の目録をデータ化し収録した。

シュタイナー教育思想の再構築-その学問としての妥当性を問う

衛藤吉則:著者
ナカニシヤ出版:出版社

著者からのメッセージ
  世界的に注目され拡張をつづけるシュタイナー教育について、本書では、その難解な理論を一般に解釈可能なパラダイムのもとに構造化し直すことをめざした。
(本書帯の言葉より)神秘主義のベールを剥ぎ、教育思想としての核を掴む。 人智学的認識論を考察の軸に、シュタイナー教育思想の全体構造と学理論的な妥当性を明らかに。

花を見つめる詩人たちーマーヴェルの庭とワーズワスの庭

吉中孝志:著者    
研究社:出版社

著者からのメッセージ
   イギリス17世紀の形而上派詩人アンドリュー・マーヴェル、ロマン派を代表する詩人ウィリアム・ワーズワス。そして二人を思想的に繋ぐ、神秘主義の詩人ヘンリー・ヴォーン。共通して自然、庭や植物に彼らの眼差しをそそいだ詩人たちの作品を、緻密、かつ実証的に読み込んだ書物です。セクシュアリティーと記憶の問題を主題にして、「庭と英詩」をめぐる議論の更新を試みています。

フォークナーのヨクナパトーファ小説

フォークナーのヨクナパトーファ小説

大地 真介:著
彩流社:出版社

著者からのメッセージ
   本書は、まず、フォークナーの代表作の技法とテーマを検証することによって彼の小説の特質を解明する。その論考を踏まえたうえで、フォークナー作品が、マッカーシー、タランティーノ、イニャリトゥ、アリアガといった現代の世界的な小説家や映画作家に多大な影響を及ぼしていることを指摘し、また、日本人がフォークナー文学を読むことの意味を横溝正史らを引き合いに出して論究している。

子どもと倫理学 考えー議論する道徳のために

フィリップ・キャム著、衛藤吉則:共訳
萌書房:出版社

著者からのメッセージ
本書は、J.デューイを源流とし、M.リップマンによって構想・開発された哲学教育プログラム(P4C:Philosophy for Children)を紹介したものである。わが国で始まる「アクティブ・ラーニング」や「考え・議論する道徳」を柱とする「道徳の教科化」に対して、本書の内容は有効な道徳的視点を提供できるものと期待される。

《紅楼夢》新解

合山 究:著、陳翀:訳
聯經出版事業股份有限公司:出版社

著者からのメッセージ
  本書は、合山究(九州大学名誉教授)「『紅楼夢』―性同一性障碍者のユートピア小説」(汲古書院、2010年)の中国語訳です。現代名著訳叢シリーズの一冊に選ばれ台湾聯經出版社より上梓されました。本書の内容は、主に以下の通りです(日本語原書P243より抜粋)。
『紅楼夢』世界の全体像を改めて検討し、その結果、すでに縷々述べたように、『紅楼夢』は一風変わった普通の若者を描いた小説ではなく、男性社会(家庭外の現実社会)で生きてゆくことのできない性同一性障碍者(MtF)の貴族の若者が、この世界において生を送るうえに最も望ましき世界を夢想したユートピア小説であるという結論に達した。『紅楼夢』はおそらく今日のいわゆる性同一性障碍者であったと思われる作者が、そのような窮愁落魄の苦しい気持ちを振り払うために、少年時代に体験した幾ばくかの楽しい思い出を膨らませて、仙女の化身の絶世の佳人たちの住む艶麗優美なユートピアを夢想し、その中に自分の影子である賈宝玉を住まわせ、日々楽しく遊び戯れさせることによって、現実の苦悩や悲嘆から脱却するよすがとした作品であろう。したがって、これをつづめて言えば、本書の副題のごとく、『紅楼夢』は、「性同一性障碍者のユートピア小説」ということになるのである。

 

 

徳は何の役に立つのか?

アンゼルム・W・ミュラー:著者、越智貢:監修
後藤弘志:編訳
晃洋書房:出版社

訳者からのメッセージ
  行為ではなく人柄の評価に向かう徳概念は、近代のある時期から西洋倫理学の後景に退くが、1980年代以降徐々に復権し、現代徳倫理学として結実する。本書はこの展開の中心にあったアンスコムの弟子による最良の入門書であり、生きられた道徳の現象学を出発点に道徳の人間学的基礎づけを試みた好著である。

第11回ちよだ文学賞ーりんごの芽

愛内紫音:著者    
共立速記印刷:出版社

寄贈者(妹尾好信教授)からのメッセージ
   東京都千代田区が主催する「ちよだ文学賞」の第11回大賞受賞作に、本学文学部(日本文学語学)平成23年度卒の愛内紫音さん(あいうちし おん・ペンネーム)の書いた「りんごの芽」が選ばれました。
   同賞は、人気作家の逢坂剛、唯川恵、角田光代各氏が選考委員をつとめる新人作家の 登竜門です。373編の応募作の中で、見事に大賞を射止めました。
   愛内さんは愛媛県松山市の出身で、本学卒業後は故郷で公務員として就職していましたが、文学への夢を捨てきれず、職を辞して執筆生活を始めたばかりの幸先よい受賞です。受賞作は、小学5年生の男の子と生き別れになっ た姉との再会を軸に展開される秘密と友情の物語だそうです。他の最終選考に残った作品とともに書籍化し、10月31日から千代田区役所並びに 区内主要書店で販売されます。授賞式は10月29日に第26回神保町ブックフェスティバル会場でとりおこなわれます。
   愛内さんは、すでに文学部在学中の2010年に小説『春夜恋』(文芸社)を出版しています。独特の雰囲気を漂わせた青春小説で、今回の受賞 作に通じるものがありそうです。Amazonなどで購入できます。

いつでもそばにイタリア語ー単語×文法で身に付く4500語

上野貴史:著者    
朝日出版社:出版社

著者からのメッセージ
   本書は、イタリア語の単語を実際の場面で使えるようにする、ということを念頭に置きながら、単語を暗記していくというような構成となっている。各ページには、品詞ごとの意味分野でまとめた単語を重要度により二種類に分けて掲載し、必要最低限の文法説明とそのページまでに既習した単語を使って文を作ってみる、という練習問題がある。さらに、巻末に日本語索引とイタリア語索引を掲載し、辞書の代用としても使用可能となっている。

舞鶴市千歳下遺跡発掘調査報告書

舞鶴市千歳下遺跡発掘調査報告書

広島大学文学研究科考古学研究室:編者
ニシキプリント:出版社

寄贈者からのメッセージ
   千歳下遺跡は若狭湾を望む舞鶴大浦半島に位置する。舞鶴市教育委員会によって2度の発掘調査が行われ、斜縁獣帯鏡や銅釧などの青銅器をはじめ、700点以上にもおよぶ鉄製品や鉄片類、1,000点に達する玉類や石製模造品などが出土した。広島大学考古学研究室ではそれら出土遺物の研究を推進し、4世紀後葉から5世紀前葉、日本海ルートによる対外交易を傍証する大規模祭祀遺跡の調査研究成果を公表することができた。

 

佐田谷・佐田峠墳墓群発掘調査報告書 調査編(1)

佐田谷・佐田峠墳墓群発掘調査報告書 調査編

広島大学文学研究科考古学研究室:編者    
平和印刷:出版社

寄贈者からのメッセージ

   佐田谷・佐田峠墳墓群は庄原市にある弥生時代中期末葉から後期前葉に造営された墳丘墓群である。
弥生時代の墳丘墓の発展を窺うことができる極めて重要な遺跡といえる。2008年度に庄原市が国史跡に指定することを目的として、広島大学との共同研究を開始したが、2012年度まで考古学研究室が行ってきた発掘調査の学術的成果の一部を取りまとめて報告した。

ヘンリー・ヴォーンと賢者の石

ヘンリー・ヴォーンと賢者の石

松本 舞:著
金星堂:出版社

寄贈者からのメッセージ
   ヘンリー・ヴォーンの「火打石」とは何だったのか?賢者の石を手掛かりに、肖像画すらない、十七世紀形而上派詩人、ヴォーンの詩群及び初期近代の英文学を、神秘主義思想から論じる。

言語学論文集ー古浦敏生喜寿記念ー

言語学論文集ー古浦敏生喜寿記念ー

古浦敏生:著
文流:出版社

寄贈者からのメッセージ
 本書は、著者が喜寿を迎えるにあたり、既刊の2著書『日本語・イタリア語対照研究』&『イタリア語文法研究』を補足すべく刊行されたものである。古典ラテン語で書かれた『アエネーイス』を資料として、その詩的技法の本質を追究した論文、レオナルド・ダ・ヴィンチのラテン語力を調査した論文など、11編が掲載されている。

伊勢物語の新世界

伊勢物語の新世界

妹尾好信ほか:編
武蔵野書院:出版社

寄贈者からのメッセージ
『伊勢物語』は古来日本人に最も親しまれてきた古典文学です。在原業平をモデルとした昔男が繰り広げる様々な恋愛模様や、友人や近親者との 風流三昧の生活が描かれます。そこには男女を問わず人を愛し、心の交流を大切にする、人間本来のあるべき姿が描かれているように見えます。し かし、有名な古典でありながら、作者は誰なのか、どのようにして出来たのか、読者にを何を伝えようとしたのか等々、謎だらけです。この本は『伊 勢物語』をめぐる諸問題について、専門の研究者がそれぞれの見解をわかりやすく説いた入門書です。

『異邦人』研究

『異邦人』研究

松本陽正:著
広島大学出版:出版社

寄贈者からのメッセージ
  本書は、先行する習作との関係、形成過程研究、緻密なテキスト読解・分析による作品世界の提示、テマティックなアプローチ、比較文学的アプローチといったさまざまな角度から総合的にカミュ『異邦人』を読み解こうとする研究書。
とはいえ、『異邦人』ファンにも理解できるよう引用はすべて日本語に訳出されている。

哲学資源としての中国思想ー吉田公平教授退休記念論集

哲学資源としての中国思想

市來津由彦:編
研文出版:出版社

寄贈者からのメッセージ
   哲学する知的資源として中国思想を今に活用していく材料を提供することを企図し、中国(宋~民国時代)・琉球・日本(江戸~明治時代)の東アジア近世思想 の諸相を論じた共同論集。中国・日本の陽明学に関する学術研究で現在もっとも著名な研究者の一人である吉田公平氏に縁のある中・日19名の第一線研究者に よる。寄贈者は刊行会世話人5名中の一人。

近世阿波漢学史の研究 古学者高橋赤水

古学者高橋赤水

有馬卓也:著
中国書店:出版社

寄贈者からのメッセージ
   江戸後期の阿波藩の古学者(徂徠学者)高橋赤水の行状及び思想に関する研究。構成は以下の通り。はじめに・第一章高橋赤水と六人の漢学者・第二章高橋赤水の思想・第三章高橋赤水の考証学・第四章『赤水文鈔』訳註・第五章『古今学話』訳註・附録。特に赤水の二つの著作『赤水文鈔』『古今学話』の訳註には現代語訳も付し、読みやすいようにした。

淮南子の政治思想

淮南子の政治思想

有馬卓也:著
汲古書院:出版社

寄贈者からのメッセージ
   前漢武帝期、淮南王国劉安が、当時の学者たちを淮南王国に集め編纂させた『淮南子』を政治思想書という視点から考察したもの。従来、雑駁なものの百科全書的羅列として解釈されてきた同書を、同時代人である司馬遷の『史記』太史公自序に見える道家の記述を根拠として、前漢初期の「無為休息」をモデルに作られた漢王朝の理想的統治形態「無為の治」に基づくものとして位置づけた。

 

性善説の誕生ー先秦儒教思想史の一断面ー   

性善説の誕生ー先秦儒教思想史の一断面ー

末永高康:著
創文社東洋学叢書:出版社

寄贈者からのメッセージ
   二十世紀末における郭店楚簡の出現は、従来の先秦思想史の常識を大きく覆してしまった。孟子以後の成立と考えられてきたテキストが、孟子とほぼ同時代の写本として出土してきたからである。本書は陸続と現れる出土資料の新たな知見に基づき、子思より孟子に至る儒家思想史を、性説の展開を中心に再構築したものである。

新しく学ぶ西洋の歴史~アジアから考える~

新しく学ぶ西洋の歴史~アジアから考える~

南塚信吾・秋田茂・高澤紀恵:編         
ミネルヴァ書房:出版社

寄贈者からのメッセージ
  本書は、従来の西洋史の教科書とはいく分異なる意図を持っています。今日、もはや西洋の歴史は私たちの「モデル」ではなくなりました。
そこで、本書は、西洋の歴史を常に日本さらにはアジアとの多様な「関係」において把握することを試み、そこに新たな西洋史概説の意義を見出そうとするものです。

富永一登先生退休記念論集 中国古典テクストとの対話

富永一登先生退休記念論集 中国古典テクストとの対話

富永一登先生退休記念論集刊行委員会:編集         
研文出版:出版社

寄贈者からのメッセージ
   富永一登先生は、二〇一五年三月末日をもって広島大学大学院文学研究科の定年退職を迎えられました。そこで、先生の学恩に感謝し、ご退職を記念するために、論文集を刊行することとなりました。(中略)二〇一三年の秋に刊行委員会を立ち上げ、先生の受業生を中心にお声をおかけしたところ、総勢二二名の方より玉稿を賜ることができました。(中略)先生のご研究は『文選』と「古小説」が大きな二本の柱ですが、たとえどのような研究であったとしても、テクストと真摯に向かい合うことが何よりも大切であることを私たちは教えていただきました。先生のご薫陶を受けた私たちの手になる本論文集の表題を『中国古典テクストとの対話』とした所以です。(後記より)

中国近世の罪と罰−犯罪・警察・監獄の社会史

中国近世の罪と罰−犯罪・警察・監獄の社会史

太田 出:著
名古屋大学出版会:出版社

寄贈者からのメッセージ
   本書は「近代(modern)」「近代化(modernization)」に対して「近世(early modern)」「近世化(early modernization)」の語は成立しうるか、これらの語を如何に定義すべきかについて、明清時代における犯罪の動向と警察・監獄による犯罪取締・社会管理の視点-犯罪社会学的研究(criminalité(クリミナリテ))-から分析を試みたものである。

21世紀の三島由紀夫

21世紀の三島由紀夫

有元伸子:編    
翰林書房:出版社

寄贈者からのメッセージ
   今年は三島由紀夫の生誕90年・没後45年。そろそろ、あの衝撃的な死にすべてを還元する読みから三島文学を解放し、現在の多様な研究的視点による再解釈を試みるべき時期であろう。本書は、新たな可能性を模索する研究編と、坂東玉三郎氏らのエッセイや演出家・宮本亜門氏へのインタビューとで構成し、広く三島文学再読への手引となることを目指している。

Tohoku   

Tohoku

河西英通:著    
nanyan guo and raquel hill:訳    
Brill Academic Pub; Lam edition:出版社

寄贈者からのメッセージ
   2001年に中公新書として出版した『東北―つくられた異境』の英訳版(図版は一部改訂)。近代日本において東北地域がいかなる言説のもと、後進地・未開地レッテルを張られ、〈東北〉として形象化され、その自立的な発展を阻害されてたかを問うた一冊。広く世界各地の〈条件不利地域〉の歴史的解明にもつながる。

王義之研究

王義之研究

佐藤利行:著
白帝社:出版社

寄贈者からのメッセージ
   書聖と呼ばれる王羲之には、700通余りの書翰が残されている。そこには王羲之の日常がありのままに映し出されており、王羲之という人を知る重要な資料となる。本書は、主に王羲之の書翰を資料として、王羲之の生活・思想・人柄・交友関係等について考察した論考を中国語に訳出したものである。

松本清張にみるノンフィクションとフィクションのはざま- 「哲学館事件」(『小説東京帝国大学』)を読み解く

『松本清張にみるノンフィクションとフィクションのはざま- 「哲学館事件」(『小説東京帝国大学』)を読み解く』

衛藤吉則:著
御茶の水書房:出版社

寄贈者からのメッセージ
   本書は、「第一回松本清張研究奨励事業賞」(北九州市松本清張記念館)を受賞した作品である。清張がとりあげた学問・教育の自由をめぐる現実の事件(哲学館事件)について、それを完全なるフィクションとしてではなく、作家のイマジネーションを伴った「(推理)小説」という形式で語ることの困難性と事件の重層的な構造を、筆者の専門である思想・宗教・教育学の視点から読み解いた。

 

天下統一とシルバーラッシュ 銀と戦国の流通革命

天下統一とシルバーラッシュ 銀と戦国の流通革

本多博之:著
吉川弘文館:出版社

著者からのメッセージ
十六世紀前半の石見銀山の発見と開発は、日本経済はもとより、世界史上の東アジア貿易や国際関係に大きな影響を与えた。銀の支配と流通の視点から、毛利・大友氏ら西国大名の貿易や外交、織豊政権の物流など政治・経済の変化を明らかにし、戦国乱世から徳川政権誕生へと続く“天下取り”の時代を、激動する東アジア世界の中に位置づける。

はだしのゲン 第一巻 アラビア語翻訳版

はだしのゲン 第一巻 アラビア語翻訳版

中沢 啓治:作者    
マーヒル アハマド ムハンマド エルシリビーニー:訳    
SANABEL:出版社

著者からのメッセージ
なぜ『はだしのゲン』をアラビア語に訳したかといつも聞かれるが、なぜ訳さないかと聞き返したくなる。テーマは広島・長崎以外どこにも投下されたことがない原爆のむごさを表し、平和を呼びかけ、作者は文章も絵もうまくて、22カ国語に訳されている。出版部数は聖書の次(?)であり、現在、アラブ・中東の戦争が多く、核兵器の使用の可能性があり、日本(広島大学)で受けた教育を生かせて、アラブに平和を呼びかけるために訳すことが当然であると考える。

 

現代インド4ー台頭する新経済空間

『現代インド4ー台頭する新経済空間』

岡橋秀典・友澤和夫:編者
東京大学出版社:出版社

著者からのメッセージ
 激動するインドの現状を総合的・体系的に解明するシリーズ全6巻のうちの1巻。経済発展に伴う空間構造の変動を、大都市、産業集積、インフラストラクチャーなどに焦点を当てて追究している。人間文化研究機構の下での5年間にわたる全国的共同研究による現代インド研究の最先端の成果。本巻は広島大学拠点(現代インド研究センター)が中心となってまとめた。

大衆小説

大衆小説

ダニエル・コンペール:著者    
宮川朗子:訳者    
国文社:出版社

著者からのメッセージ
  フランスにおける大衆小説の歴史とこれまでの研究の成果、そして今後進んでゆくと思われる研究の方向性が、明瞭かつ簡潔に提示されている便利な一冊です。入門書でありながら、正統な文学史にも見直しを迫る事実や文学におけるグローバリズム、文学作品の価値認定等、刺激的な問題も論じられています。

毛利元就ー武威天下無双、下民憐愍の文徳は未だー

毛利元就ー武威天下無双、下民憐愍の文徳は未だー

岸田裕之:著者
ミネルヴァ書房:出版社

著者からのメッセージ
  この索引は、国立国会図書館蔵の子規自筆の漢詩稿を底本とし、子規自身が訂正した後の定稿、また削除されたものも含め690首を対象として作成したものである。 字句については、講談社版『子規全集』第8巻と改造社版『子規全集』第17巻を参考に校勘した。子規研究者はもとより、日本漢詩研究者の皆様のお役に立てれば編者として幸いである。

正岡子規漢詩索引

正岡子規漢詩索引

佐藤利行・李均洋・趙敏俐: 監修  
木村守・佐伯雅宣・何美娜・永富千幸:編者

著者からのメッセージ
  この索引は、国立国会図書館蔵の子規自筆の漢詩稿を底本とし、子規自身が訂正した後の定稿、また削除されたものも含め690首を対象として作成したものである。字句については、講談社版『子規全集』第8巻と改造社版『子規全集』第17巻を参考に校勘した。子規研究者はもとより、日本漢詩研究者の皆様のお役に立てれば編者として幸いである。

ヘーゲルから考える私たちの居場所

ヘーゲルから考える私たちの居場所

山内廣隆:著者
晃洋書房:出版社

著者からのメッセージ
   本書は、私たち人類が現在いかなるところに立っているかを、ヘーゲルのフランス革命解釈を基にして論じたものである。ヘーゲルがフランス革命をどのように受容し、批判したかを解明しつつ、ヘーゲルが国家と宗教の関係をどうあるべきと考えたかに焦点を絞りながら、私たち人類の現在における立ち位置を論じた。

偽証

偽証

Henri Thomas:著
Leopold Federmair:訳    
Wien Klever Verlag:出版社

著者からのメッセージ
   この作品は、フランスの作家ヘンリ・トーマスの小説『偽証』(1964)の初のドイツ語訳である。米国でヘルダーリンの研究をするため妻子をベルギーに残した男が、未婚であると偽り、新たに結婚をする。その男が最初の妻と司法当局に対して、偽証の罪に問われる。文芸評論家ターラーは、この作品をエレガントであると批評した。

カフカ中期作品論集

カフカ中期作品論集

古川昌文:編者
同学社:出版社

著者からのメッセージ
カフカ「中期」の代表作を徹底分析。
本書では「中期」(1914年夏から1917年春までの3年間)に書かれた作品のうち、短編『流刑地にて』と短編集『田舎医者』を取り上げ、第一部では『流刑地にて』を、第二部では『田舎医者』に収められた14作品をそれぞれ独立させて論じた。生前に発表された代表的な短編と短編集が11名の執筆者により様々な角度から分析される。


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