研究科長からのご挨拶

人と人とをつなぐプロフェッショナルの養成を目指して

 法曹の職域にもAI化の波は確実に打ち寄せています。交通事故における過失割合の算定のみならず、裁判官不足を補うためにAI裁判官を導入するとの海外ニュースもありました。定型的な紛争であればAIでも解決が可能であり、人によるよりも公正・公平であるとの意見もある一方、AIによって裁かれることへの不安の声も聞かれます。

 AIもディープ・ラーニングによってガイディング・プリンシプルを超えた展開をなしうるようですので、今後、どのように社会に貢献していくのかは予測できません。しかし、現代は、さまざまな構成員相互における利益対立が顕在化する一方、情報発信の多様化によりさまざまな情報が検証も不十分なままで拡散するなかで、多数派が形成され、その主張の分析もなく数による正当化を安易に認めてしまう社会的な傾向が見られます。そこには、少数派の権利や利益が簡単に踏みにじられるのではないかとの危惧があります。

 新たに生じる社会問題では一方的にその解決のために不利益が押し付けられかねない状況もありますので、これまで以上に、透明性が高く公正さを確保できる法による紛争解決・予防が現代社会のあらゆるところで期待されています。この法化社会化を推進するのは、法曹がいかにその職責を果たすか、紛争当事者のみならず社会の納得を得られるかであろうと考えます。

 法を解釈・適用して紛争を解決する、新たな紛争に対して創造的な法的思考によって解決の方向性を示す、そのために紛争当事者の声を聞き、紛争をめぐるさまざまな事情を収集して、紛争の構造的な理解を深め、真の対立点を発見する・・・。そのために多様多彩な能力や資質が必要ですが、自らの価値観や意見によって事実に対する判断が決定されるのはもちろん、それによって判断の対象である事実群のどれに着目するかさえも異なっており、相手と同じように自分の意見にも誤謬があるかもしれないことを自覚していることが必要ではないでしょうか。対立の根源を探る慎重さはこの自覚のある日々の研鑽努力によって支えられると考えます。

 広島大学法科大学院は、知性の錬磨法と反省の技法とによるプロフェッショナル性養成教育において、法的思考を反復実践し徹底的に修得させる統合型教育プログラム及び個々の学生の個性を尊重した学習法を提案する学修コーチングシステムを組み合わせ、さらに若手弁護士による学修フォロー課外ゼミによるバックアップを取り込み、三位一体的な教育システムを構築しています。世界平和の声を世界に届けられるヒロシマの地で、共存共栄の精神に基づき、法と正義により現代社会を導く人財を養成します。

 皆さんが、広島大学法科大学院で、法曹となり紛争解決により平和で安穏な家庭・社会を作る夢を実現すべく、プロフェッショナル性の高い法曹となって、その使命を果たされることを願っております。

研究科長プロフィール

秋野成人 AKINO Shigeto
刑法A、刑法A演習、刑法B、刑法B演習、刑法演習1、重点演習(刑事法1、刑事法2)
アメリカ合衆国における合法性原則や共犯論等をめぐる法理論の変遷を批判的に分析する。
日本学術会議連携委員。


up