広島大学大学院医歯薬保健学研究院の小田康祐助教、坂口剛正教授、的場康幸准教授、杉山政則教授らの研究グループは、ウイルスの増殖を抑制するはたらきを 持つインターフェロンの発現に必要な転写因子STAT1と、インターフェロンの作用を止めるウイルスのC蛋白質が結合してできる複合体の蛋白質結晶構造 を、センダイウイルスを用いて明らかにしました。
【本研究成果のポイント】
1.ウイルスがインターフェロンの作用に対抗するメカニズムを解明。
2.ウイルスのC蛋白質が、転写因子STAT1に結合して、インターフェロンが活性化するための構造変換を抑えていたことを解明。
3.C蛋白質をもつヒトパラインフルエンザウイルスの治療薬の開発が可能になった。
ヒトはウイルスに感染するとインターフェロンを分泌して、ウイルスの増殖を抑制するため、インターフェロンはウイルスに対する強力な武器となります。一方で、ウイルスはインターフェロンの作用から逃れるように進化してきています。センダイウイルスは、ウイルスのC蛋白質がインターフェロンの作用発現に必須である転写因子STAT1に結合して、インターフェロンの作用を止めることが知られています。
今回、この結合複合体の構造を原子レベルで明らかにしたことで、これを阻害する薬剤の開発が可能になりました。これにより、センダイウイルスと近縁で、C蛋白質をもつヒトパラインフルエンザウイルス(小児気管支炎、肺炎、クループ症候群をおこす)の治療薬の開発が可能になりました。また、同様の戦略で他のウイルスに対する薬剤の開発も期待できます。
論文:Structural basis of the inhibition of STAT1 activity by Sendai virus C protein,
著者:Oda K, Matoba Y, Irie T, Kawabata R, Fukushi M, Sugiyama M, Sakaguchi T.*
*Corresponding Author
掲載雑誌:Journal of Virology, 2015,
DOI: 10.1128/JVI.01887-15
雑誌発行日:平成27年11月15日
【お問い合わせ先】
大学院医歯薬保健学研究院基礎生命科学部門
医学分野 ウイルス学
教授 坂口剛正
Tel:082-257-5157
E-mail:tsaka*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)