広島大学大学院医歯薬保健学研究院の仲田義啓教授と森岡徳光准教授、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授らの研究グループは、神経障害性疼痛モデルマウスを用いて、炎症性物質の一つであるHMGB1が末梢部位(傷害を受けた坐骨神経)で増加することを確認しました。さらに痛みが慢性化した後でもHMGB1に対する中和抗体をマウスの傷害を受けた坐骨神経周辺部に投与することにより、痛みが緩和することを証明しました。
【本研究成果のポイント】
・難治性疼痛の一つである神経障害性疼痛モデルの傷害神経でHMGB1が増加
・慢性的な痛みが発症した後でも、傷害神経周辺部に中和抗体を投与することでHMGB1の働きを抑制でき、痛みが緩和
・神経障害性疼痛の新たな鎮痛薬につながることに期待
現在、ガンの終末期、坐骨神経痛、糖尿病、帯状疱疹後などに認められる神経障害性の難治性疼痛は、患者さんの生活の質(Quality of Life: QOL)を低下させる要因となっています。これらの痛みは、現在汎用されている鎮痛薬であるロキソニンなどの非ステロイド性鎮痛薬やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬が効きにくく、治療が困難であることから、新たな治療薬・治療法の確立が望まれています。
今回の結果から、HMGB1に対する中和抗体は、難治性疼痛に対する治療薬として有用性が高く、副作用の発生頻度が少ない局所投与においても鎮痛効果を発揮することから、利便性にも優れているといえます。
HMGB1に対する中和抗体、HMGB1をターゲットにした薬剤は、難治性疼痛に苦しむ多くの患者さんを救う新たな鎮痛薬となることが期待されます。
本研究成果は、平成27年11月18日(英国時間)、英国科学誌「Journal of Neurochemistry」(オンライン版)に公開されました。
<発表論文>
著 者
Fang Fang Zhang, Norimitsu Morioka*, Sakura Harano, Yoki Nakamura, Keyue Liu, Masahiro Nishibori, Kazue Hisaoka-Nakashima and Yoshihiro Nakata
* Corresponding author(責任著者)
論文題目
Perineural expression of high-mobility group box-1 contributes to long-lasting mechanical hypersensitivity via matrix metalloproteinase-9 upregulation in mice with painful peripheral neuropathy.
掲載雑誌
Journal of Neurochemistry, 2015, Impact factor=4.281
DOI番号
10.1111/jnc.13434
本研究の概略図
【お問い合わせ先】
広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門薬学分野薬効解析科学研究室
准教授 森岡 徳光(もりおか のりみつ)
TEL:082-257-5312
E-mail:mnori*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)