無機多孔体プロジェクト研究センター

センター基本データ

  • 整理番号:19-05
  • 設置期間:2007年10月01日~2022年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):工学研究科  / 准教授 / 金指 正言
  • 連絡先(TEL/FAX/E-mail)

プロジェクト概要

目的

本研究プロジェクトセンターでは、ミクロからナノ細孔を有する無機多孔体における、(1)触媒特性および(2)分離特性に着目し、各種無機多孔体の材料開 発、特性評価、さらには計算機支援に基づく材料設計を行うことを研究目的としています。具体的には、ゼオライト、界面鋳型法メソポーラス物質などの規則性多孔体、ゾル-ゲル法によるシリカ、チタニアなどの金属酸化物、さらには有機-無機ハイブリッド材料を多孔体材料として選定し、調製条件と多孔体の構造評価・解析を行い、計算支援による多孔体の高機能化のための材料設計手法の確立を目指しています。さらに分子認識機能に基づく分離特性として、吸着特性および膜分離特性を評価しています。
以上得られた成果を基に、触媒特性と分離特性を組み合わせた無機多孔体の構造体システムの創製を行い、最終的には微小空間を利用した省エネルギー型化学プロセスシステムを構築します。
 

背景

石油化学における化学品合成用触媒から環境触媒まで、触媒の重要性は今後も変わることはない。しかし、従来の触媒プロセスの開発戦略においては触媒開発が先行し、触媒にあわせて反応装置を設計するという戦略であった。そのため、開発された触媒の性能が必ずしも100%発揮されているかどうかは疑問であ り、新たな反応場の創出とそれを支える新概念の触媒の同時進行型の開発、さらには、両者の融合型の開発が必要である。すなわち、触媒活性点近傍の原子・分 子レベルのミクロ的な理解に基づく触媒化学と、触媒粒子から装置までの3次元的なマクロな空間の視点に立つ反応工学との融合による新しい触媒分子反応工学の学理の体系化が必須である。
 

研究計画

本研究では、各種の多孔体の材料開発、特性評価、さらにはシミュレーションに基づく無機多孔体の高機能化・材料設計支援を行う。

平成22-23年度
・無機多孔体の構造体システムの高機能化

平成24-25年度
・設計支援システムの材料解析および材料開発への応用・研究会の開催
 

主な事業活動

学術講演会
•第4回規則性多孔体研究会セミナー(平成19年度)
•第5回規則性多孔体研究会セミナー(平成20年度)

主な研究成果

1.ゼオライトの自在設計・合成
 一般に,新規ゼオライトの合成は、複雑な分子構造の有機分子を設計し、それを構造規定剤に用いることにより行われています。しかし、同じ構造規定剤からも結晶構造の異なるゼオライトが幾つも合成されており、その役割についてはまだ必ずしも明らかにはなっていません。そこで、本研究では、既存のゼオライトを分解することにより得られる構造ナノユニットを用いたゼオライトの自在設計・合成法(ゼオライト転換法)の確立を目的としています(図1)。すなわち、既存のゼオライトから得られる構造ナノユニットをナノパーツとして用いた全く新しい概念のゼオライトの設計・合成に挑戦しています。図2にはゼオライトの一 種であるFAUゼオライトを出発原料に用いてゼオライト転換法により得られたゼオライトを示します。

2.バイオエタノール濃縮用ゼオライト膜の開発
バイオマスから発酵法によって生産されるバイオエタノールは穏和な条件下で大量生産可能ですが、液体燃料として使用するためには分離濃縮工程が必要です (図3)。現在、その分離濃縮工程には蒸留法が用いられていますが、これらの過程における所要熱量は高く、エタノール燃焼熱の半分程度に及ぶため、その省エネルギー化が重要です。そこで本研究では、省エネルギーかつ簡潔なプロセスで設計できる分離膜プロセスに適合する高性能なエタノール選択透過ゼオライト膜の開発を行っています。既に低濃度(5%)エタノールの濃縮(75%)に成功しています(図4)。今後は種々の有機酸を含む実際のバイオエタノールでその性能を検討します。なお、本研究は、広島県産業科学技術研究所の探索研究テーマとして採択されています。

3.バイオエタノールからの低級オレフィン合成
バイオエタノールを原料とした化学品生産が注目されています。特に、化学工業の基幹原料として需要が拡大している原料としてプロピレンを生産することは、石油からバイオマスへの大きな代替効果が得られると期待されており(図3、5)、新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクト研究課題となっています。本センターもこのプロジェクトに参加し、ゼオライト触媒の開発を行っています。

4.次世代クリーンエネルギー:水素の生成・分離
水素は現在の化学工業での利用のみならず、燃やしても地球温暖化ガスであるCO2を排出しないため、クリーンエネルギー社会を支えるキーリソースとして重要です。水素を作り出す方法の1つとして、天然ガスなどの炭化水素化合物と水を高温で反応させる水蒸気改質反応があります。
 CH4 + H2O ⇔ 3H2 + CO
  CO + H2O ⇔ H2 + CO2
この反応は平衡反応であるため、生成した水素を選択的に系外へ引き抜くことにより、高効率で高純度水素を得ることが可能となります。本研究では、無機材料であるシリカおよび有機・無機ハイブリッド材料を用いて,ナノ~サブナノレベルの微小制限空間を有する薄膜を形成することで、大きさが2.89Åである水素と窒素(3.64Å)やメタン(3.8Å)を分子ふるいによって1000倍以上に分離することができる水素分離膜について研究しています(図6)。さらに、多孔性無機膜のナノ空間に改質反応触媒を担持し、水素の製造と分離を同時に行う膜型反応器について、高透過・高選択性と安定性を有する膜材質および膜構造に関する実用的な研究・開発を行っています。

5.分子動力学法による膜透過シミュレーション
多孔性無機膜における気体の透過・分離特性は、透過分子と膜との親和性や膜の微細構造に依存し、透過・分離メカニズムを分子レベルで明らかにすることが微細レベルで膜設計を行うために必要となります。本研究ではヴァーチャルな非晶質シリカ膜を計算機上に作り出し、気体透過の非平衡分子動力学シミュレーショ ンを行うことにより、透過機構の解明、膜構造の評価、膜透過・分離シミュレータの開発などを目指しています(図7,8)。

6.分子選択性をもつ光触媒の開発
酸化チタン光触媒は、環境中の有害有機物の分解除去などにすぐれた環境浄化機能をもつことが知られています。環境中の希薄な物質に対する除去機能をさらに向上させるためには、高濃度の共存物質に阻害されることなく目的の分子を分解できる分子選択性を光触媒に付与することが望まれます。本研究では、酸化チ タンのまわりをナノメートルサイズの細孔(直径約 3 nm)を持つ酸化シリコンの多孔体で包んだ、新しいタイプの複合体を開発しました(図9)。この複合光触媒では、河川の「環境ホルモン」として問題となったノニルフェノールという物質を選択的に多孔体の細孔内に濃縮し分解する機能を発現しました。このような分子選択的な分解機能をさらに向上させるために、複合体の構造を制御する研究を行っています。

7.水中ではたらく固体酸触媒のナノ構造設計
多くの化学プロセスで硫酸などの液体の酸が触媒として使われています。しかし、液酸では、反応液から触媒を分離するために多量のエネルギーが必要であること、反応装置の腐食がおこりやすいなどの問題も多く、より環境にやさしく効率的なプロセスのためには固体の酸触媒の利用が有効です。とくに、水中ではた らく固体酸触媒は限られており、その開発が望まれています。この研究では、下の図10のように蜂の巣のような多孔体の細孔(直径約 7 nm)の内壁に有機分子と直径約1nmの無機分子を意図的に結合させ、水中でも触媒作用をしめす固体酸を形成しました。この触媒の酸点あたりの活性は硫酸の約6倍に達し、このようなナノ メートルサイズの構造を設計することが有効であることがわかりました。


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