応用倫理学プロジェクト研究センター

センター基本データ

  • 整理番号:14-05
  • 設置期間:2003年04月01日~2020年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):大学院文学研究科 / 教授  / 後藤 弘志
  • 連絡先(TEL/FAX/E-mail):082-424-6621 / / goto1201[AT]hiroshima-u.ac.jp(※[AT]は半角@に置き換えてください)

プロジェクト概要

目的

21世紀に向けて人間を取り巻く社会環境は複雑になり、文献研究のみでは現代の諸問題に容易に対処できない。本研究の目的は、こうした反省に立ち現代社会 において最も緊急かつ重要な「平和」をキーワードにしながら応用倫理研究にスポットを当て、問題解決の方向性を探ることにある。応用倫理問題は様々であ る。例えば情報ネットワークやメディア情報における情報倫理、高齢化社会や年金問題における福祉倫理、クローンやES細胞のをめぐる生命倫理、ゴミ公害や 地球温暖化をめぐる環境倫理、ジェンダーやセクハラをめぐるフェミニズム倫理など多種多様である。これらは相互に連関して「平和」の概念を包含する。例え ば何事もない当たり前の状態である「平凡」「日常性」「健康」などにも「平和」は含まれる。このように本研究は、既成の平和論ではなく、新たな平和論を問 う。しかしこうした研究に必要なのは、臨床的なレベルにまで届きうる理論的なアプローチ法である。このような研究は、日本では言うまでもなく、欧米でもほ とんどなされていない。研究の必要性に気づいてはいても、現実の倫理的問題の理解に追われ、方法レベルの研究の手がかりを見いだせない研究者が多いことに よる。そうした、いわば陥穽的な研究の遂行は個人レベルではほぼ不可能であり、共同研究によってはじめて十分な成果が期待されうる。こうした視点のもと に、本研究センターは「平和」が人々の意識においてどのように変容しているのかを、共同研究を通して社会的なレベルで明らかにする。そのために本研究は、 各分担者を、(a)主として情報倫理からアプローチするグループ(越智他)、(b)主として生命倫理からアプローチするグループ(松井、山内他)、(C) 主として社会倫理からアプローチするグループ(近藤、岡野他)に分けて、それぞれの研究を進める。そしてその個別の成果を統合して内外に公表する。

背景

今日、現代社会は高度に複雑化し既成の枠組みや価値観によるだけでは社会現象を捉えることが困難になっている。国際社会においては、東欧圏の崩壊以後、文 化的多元主義が台頭し、価値と価値の衝突を背景に民族紛争が多発化している。また自由主義や市場経済のグローバル化が進行し、南北問題が深刻化している。 また発展途上国は経済発展を優先させて地球環境に悪影響を及ぼしつつある。このような国際情勢のなかで日本の貢献のあり方が問われている。その一方で、人 間社会に与えるテクノロジーの影響も憂慮されている。インターネットの出現は世界概念を一変させた。著作権の侵害、プライバシーの侵害などの諸問題が深刻 化し、これを規制するための国際的な統一基準が求められている。生命医療分野においては、体外受精、出生前診断、遺伝子治療、そして最近はクローンやES 細胞などの諸技術が常識を塗り替えつつある。こうしたなかで先端技術を無条件に受容することへの問題点も指摘されている。さらに社会的不適合に陥った人間 も急増し始めている。彼らは人とのコミュニケーションに欠き心に「歪み」を抱える。これを是正するにはきめの細かいケアや癒しが必要である。このように 「倫理」を求める声は日増しに強くなっている。しかし伝統的倫理学はこうした声に必ずしも対処しきれないのが実状である。こうした反省のもとに、本研究セ ンターは、現代の様々な倫理的問題に目を向けて、その解決の方向性を探る。そのために情報倫理、福祉倫理、環境倫理、経済倫理、政治倫理、生命倫理、教育 倫理、フェミニズム倫理などの各分野のプロパーを配して、それぞれの立場から応用倫理研究に取り組み、その成果を統合して社会に広く問う。応用倫理セン ターの構成員は、各分野においてそれぞれ輝かしい実績をもつ。とりわけ情報倫理研究とフェミニズム研究は、国内外の研究者とも連携しながら研究を深めてき た経緯がある。

研究計画

(平成15年度~18年度)

研究目的に挙げた三グループが各フィールドから研究目的に挙げた課題(日本ならびに欧米における応用倫理の現状とその動向の解明、個別の問題点の析出)を 重点的に追求する。そしてその研究成果を相互に共有するために、月一度程度の研究会を開催し、応用倫理の現状と課題を確認する。(a)グループ(主として 情報倫理からアプローチする)は、学校現場とネットワーク環境に関わる方法を分析し、これを受けてサイバネスティックスの観点から、情報倫理と平和の関係 を明らかにする。(b)グループ(主として生命倫理からアプーチする)は、責任論、自然法、権利論などの観点から生命倫理と平和との関係を明らかにする。 (C)グループ(主として社会倫理からアプローチする)は、福祉倫理やフェミニズムの観点から平和の意味を問い直す。なお、定例研究会では、研究者だけ ではなく、関心のある院生や学生にも同席させて、若い人の目を通した平和論も積極的に取り上げる。そして余裕があれば、国内外のゲストスピ-カーを招いて 研究の一助とする。また研究の途上では、学内のホームページに研究会の予告をして一般の参加者を集い、また発表や講演の概要をホームページに逐一掲載する 予定である。

(平成19年度)

上記の作業に基づいて論点を整理し、最終的には報告論文ないし書物にまとめあげる年度として設定する。ただし、それを理論的に補 うために術語の意味確認を 行う。この課題は、現場と研究者との意識上の差異を、言語的に取り出すことを目指すが、これを明確化することにより、応用倫理研究の方法上の問題点を浮き 彫りにする。


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