注目される最先端研究の一例(2008)

広大発、国際標準モデルに  半導体開発のための高い正確性を備えた次世代トランジスタモデルHiSIM-LDMOS

電化製品の進化は、集積回路の微細化・高速化が可能にしてきました。しかし機能や構造が複雑化するとともに、さらに正確性の高いトランジスタモデル(集積回路を設計するためにトランジスタの動きを推測する数式)が必要になります。広島大学では、革新的なトランジスタモデルHiSIMを半導体理工学研究センターと共同開発してきました。2007年12月、これを高耐圧次世代トランジスタLDMOSに応用したものが、全世界標準化モデルに選定されました。このことで日本の半導体業界の国際競争力を高め、さらなる低消費電力製品開発の可能性を開きました。

先端物質科学研究科 教授 三浦 道子

LDMOSの正体を解明することになったシミュレーションと実測値のグラフ
HiSIM-LDMOS
40億年前、地球上にどのようにして生命が生まれたのか 辺境の未知なる微生物に真実を追う

深海、地底、南極、砂漠、非常に過酷な環境でも生きのびる微生物がいます。辺境と呼ばれるその場所は、地球上に生命が誕生した瞬間の環境に似ており、そこに棲む生物を解明することで生命の起源に迫れるのではないかと考えています。2007~2008年は50年に一度の「国際極年」。今回、地球環境の変化に一番敏感に反応する微生物の動向を把握する研究が調査プロジェクトの一つとして初めて採択され、国際総合リーダーとして調査の指揮をとりました。今後はさらに、地球の極地と同じような環境を持つ宇宙の生命探査へと可能性を探っていきます。

生物圏科学研究科 准教授 長沼 毅

沖縄の西方沖(沖縄トラフ)海底の熱水噴出孔に生息するチューブワームの共生菌 右下の横線(スケール)は1ミクロン、すなわち1/1000ミリ
チューブワーム

月のうさぎ、約43.5億歳 月隕石の年代測定で従来の定説を4億年もさかのぼる新発見

アフリカのカラハリ砂漠で発見された月隕石に、約43億5千万年前の火山活動による鉱物が含まれていることを広島大学独自の年代分析手法を用いて突き止めることに成功し、その論文が英国科学雑誌ネイチャー(2007年12月6日発行)に掲載されました。アポロ計画などで持ち帰られた月試料は月表面の赤道付近に限定されていますが、隕石は月の裏側や深部など未探索領域から飛んできた可能性も高く、月全体の進化過程を理解する重要な鍵と考えられています。太陽系の美しさ、不可思議さに惹かれながら、「太陽系の起源と進化の解明」を目指して研究を進めています。

理学研究科 准教授 寺田 健太郎

43.5億年前の火山活動の痕跡を残す月隕石カラハリ009の全体写真
月隕石カラハリ009

「おいしく食べて健康に」 植物乳酸菌の発酵技術がこれからの予防医療に貢献する

産学官連携で地域産業の振興を図る「知的クラスター創成事業」において、乳酸菌の増殖促進因子を酒粕中に発見、それが地域の酒造会社や乳業企業との連携の契機となりました。通常、植物乳酸菌は乳中での増殖が困難なことから、固形ヨーグルトは製造できないと考えられていたのですが、その通説を覆す技術を開発して特許を出願しました。産学共同開発ブランド「ビオ・ユニブ広島」として製品化、韓国大手乳業企業への技術移転を通じて国際産学連携も実現しました。有用物質を産生する植物乳酸菌とその発酵技術を活用し、生活習慣病の予防改善に有効な機能性食品の開発を進めています。

医歯薬学総合研究科 教授 杉山 政則

培養した植物乳酸菌
植物乳酸菌

被爆後、広島はどのように復興を遂げたのか 様々な学問分野との協同研究で現代に必要とされている知恵を探る

学問領域を超え現代の諸問題の解決を目指す「21世紀科学プロジェクト」が本学において進められています。その一つ「平和科学研究プロジェクト」は被爆体験を持つ広島にある大学の使命としてスタートしました。現在「ヒロシマの復興」をテーマに、歴史学、社会学、心理学といった多角的な視点から広島の復興を支えた平和観を探っています。封印されてきた機密文章の公開によって明らかになった事実がある今だからこそ解ることがあります。半世紀もの過去の事実の検証により、今なお続く紛争諸問題への新たなアプローチを導きたいと考えています。

総合科学研究科 教授 布川 弘

社会的弱者の解放運動に取り組み、ノーベル平和賞候補にもなった賀川豊彦の初期史料集
賀川豊彦史料集

ルールがないところに 安心安全をもたらすのは人と人との信頼関係

人間に関わる諸問題を哲学的に考え解決に導く応用倫理学の立場から、「へらそう犯罪」に学術的なアプローチを試みています。広島県警との共同研究プロジェクトには、情報コミュニケーション、環境法学、社会心理学の分野からも研究に参加し、社会の安心安全のために何をしたらよいのかを模索しました。その結果、「社会関係資本」つまり人間の信頼関係の蓄積を高める方法を模索することで、解決手法が見いだせるのではないかと考えました。犯罪は個人の資質の問題ではありません。犯罪を起こす気にならない社会に向けてアプローチを続けています。

文学研究科 教授 越智 貢

編集に携わった「岩波 応用倫理学講義6教育」岩波書店刊
岩波 応用倫理学講義6教育


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