注目される最先端研究の一例(2011)

ナノサイズの光アンテナを開発!

 80年前に日本で発明され、TV放送電波用に世界中で用いられている「八木・宇田アンテナ」を100万分の1のナノサイズで実現し、可視光用の光アンテナを開発しました。このアンテナを使用すれば、ナノスケール光源からの光の放出と検出の両方の増強が可能となり、小さな弱い光でも、センサーを利用して計測・判別することや、光を用いた分子などの分析をより効率的にさせることが可能となります。また、将来的には、分子と分子の間を光で通信させることや、未来の情報通信技術として期待されている、量子コンピューターや量子通信などで用いる単一光子源の性能向上にもつながることが期待できます。

先端物質科学研究科 教授 角屋 豊

ナノ光アンテナ(電子顕微鏡像)

筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子を解明-劣性遺伝に注目して、変異を発見-

神経変性疾患の中で、原因がよく分かっていない病気の一つが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)です。この病気を発症する原因となる新しい遺伝子を発見しました。これまで発症メカニズムはほとんどが不明のままでした。常染色体劣性遺伝性の家系に注目し、高密度の一塩基多型(SNP)を解析することによってその候補領域を絞り込み、その領域の塩基配列を決定することによって、遺伝子Optineurin(OPTN)の変異を発見しました。この研究成果はALSの原因遺伝子のひとつを解明したことにとどまらず、本疾患に共通する発症機序にOPTNが関与していることを示しています。今後はこの発症機序の解明とこれに基づいた治療法の開発をめざします。

原爆放射線医科学研究所 教授 川上 秀史

 

血族婚家系:●、■は、ALS患者。

ブタの凍結精液を使った人工授精法を確立-日本の養豚業を支える「次世代型のブタ生産システム」の構築を目指して-

我が国の養豚業は、自然交配が60%以上、残りを新鮮精液の人工授精が占めます。安定的で安全性(交配時の疫病予防)の高い生産のため、凍結精液を用いた人工授精の実用化が望まれてきました。既存技術と比べて飛躍的に高い繁殖成績が得られる「豚精子の凍結保存法とそれを用いた人工授精法」を開発しました。凍結精液は、液体窒素の中で半永久的に保存できるため、口蹄疫などの伝染病が蔓延したときでも貴重な純血種の遺伝子を維持することができます。今回開発した技術は、安価で簡便に高い安全性と繁殖成績が得られることから、我が国の養豚業を効率的で安定した生産システムに転換させることにつながり、養豚業に大きく貢献できることが期待できます。

生物圏科学研究科 准教授 島田 昌之

私達の開発したブタ精子の凍結融解法

微生物でレアアースの回収が可能に-バクテリアがレアアースを濃縮する現象を発見-

レアアースは、ハイテク産業には不可欠な金属資源ですが、その回収技術等の確立が出来ていませんでした。バクテリア細胞表面にレアアースが高濃度に濃縮することを見出し、放射光を用いたX線吸収法で分析することにより、その濃縮がバクテリア細胞壁に含まれるリン酸基との結合によるものであることを解明しました。この現象は、レアアース資源の開発、リサイクルにおけるレアアースの回収及び相互分離において、バクテリアを利用した手法が有用であることを示しています。バクテリアは安価で大量に培養することができ、環境負荷も小さいことから、クリーンなレアアース資源サイクルの確立のための重要な基礎的発見となることが期待できます。

理学研究科 教授 高橋 嘉夫

放射光分析から明らかになったバクテリア細胞壁中のリン酸基へのレアアースの濃縮

がん細胞に老化を誘導し、がんの増殖・転移を抑制できる-ヒトの体内にある小さな核酸・マイクロRNAを発見-

生体内にある小さな核酸の一つマイクロRNA(miR-22)を用いて、がん細胞に老化を誘導して腫瘍の増殖および転移を抑制できることを明らかにしました。ヒト由来の天然型抗がん剤がほとんど知られていない今、次世代の抗がん剤として核酸医薬品の開発が加速されることが期待されます。この研究成果は細胞老化を誘導できるマイクロRNAとしてmiR-22があり、これががん細胞で失われた老化を誘導するプログラムを修復することで、がんを抑制できるという、画期的な発見です。miR-22は生体内にある天然物の核酸であるため、従来の抗がん剤のような副作用・抗がん剤耐性などのリスクが極めて低く、次世代の核酸医薬品開発において大きな可能性を秘めています。

医歯薬学総合研究科 教授 田原 栄俊

miR-22投与群(図右上・下)での腫瘍の縮小と転移抑制

聴覚障がい者をスマートフォンで支援!全国初のソフト開発でバリアフリーな移動環境を目指す

公共交通機関を利用する聴覚障がい者の移動をサポートする、スマートフォン向けのソフト開発をしました。スマートフォンの拡張性・汎用性の高さを活かし、障がい者の目線に立った移動支援ソフトを開発する取り組みは、全国で初めてのことです。このソフトは、主に聴覚障がい者がバスに乗って使うことを想定しています。開発の目的は、携帯画面に降車のタイミングなどを表示する仕組みをつくり、車内放送が聞こえないといった不安を軽減するためです。観光地でモニター調査を行い、乗車中に自分の現在地や料金などが分かるのはとても助かるといった高い評価を得ました。人々の移動の妨げとなる物理的・精神的障壁が取り除かれた、徹底的なバリアフリー社会を目指しています。

国際協力研究科 教授 藤原 章正

バス情報提供のアプリケーション画面の例


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