先端物質科学研究科 三浦 道子 教授

大学1年の秋、三浦教授はクラブ活動を終えて帰る際、図書館から出てくる小柄な初老の女性を見かけた。一緒にいた教育学部の友人が、「荘司雅子先生よ」と つぶやいたが、その時は「この人が女性で初めて文学博士の学位を取得した人か……」と思ったくらいで、ただ、静かで謙虚な方だなという印象だけが残ってい たそうだ。

その後、三浦教授は「何かをちゃんと知りたい」という思いに駆られて、博士課程まで進学する。博士課程では「なぜ結晶が同じ元素でできていながら、まった く異なるように見えるのだろう」という疑問を解明してみたいと思うようになった。

やがて、博士になった後、結晶分野で有名なマックスプランク研究所に研究員として着任する。
ここには同じような仲間が世界中から集まり、さまざまな考えのもと、さまざまな研究に取り組んでいるのがとても興味深かったという。

研究に情熱を注ぐ仲間たちと一緒に食事をし、お茶を飲みながら議論していると、じわじわと「自分の仕事は研究だ」と思えるようになってきたそうだ。

会社の研究所に移ってからは、研究の対象は結晶からトランジスタに変わったが、それでも「勝手気ままに動いているように見える電子は、本当は何によって動かされているのだろうか」という疑問をずっと解明し続けていた。
今では分かったことを学生たちと一緒にコンピュータプログラムという形にまとめて、世界に発信している。

これが世界のあちこちで使われて、さまざまな製品を生み出す支えになっている。世界中から問い合わせのメールが送られてきて、時には間違っているという指 摘を受けることもあるが、そんな時はとことん議論し合って、お互いの研究に対する理解を深めているという。

研究者になることは確かに大変だ。でも、「研究は楽しいことを諦めなければ進めない道かというと、ちょっと違う」と三浦教授は言う。

普通に暮らす中でも、人は「なぜだろう?」と疑問を持ったり、不思議な現象を「面白い」と感じたりする。そうした興味を持ち続けることが、自然と研究の道につながっていくのではないかと、教授は考えている。

大学の図書館前で初めて見かけた時は思いもよらなかったが、今、三浦教授ははっきりと荘司教授が歩んだ道をたどっていると感じている。興味を持ち続けること、それが研究者の道になっている。

Profile

先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻 半導体集積科学講座

1981年9月1日~1984年3月31日 マックス・プランク研究所固体物理学研究所 研究員
1984年4月1日~1996年9月30日 ジーメンス中央研究所 シニア研究員
1996年10月1日~ 広島大学 工学部第2類電子物性工学講座 教授


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