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加藤範久教授らが大腸がんの危険因子である2次胆汁酸を減少させるポリフェノールを発見



加藤範久教授らのグループが、株式会社ブルボン及び株式会社あじかんとの共同研究で、ラットを用いた実験により

クルクミンやエラグ酸、カテキンなどのポリフェノールが、大腸がんの危険因子である2次胆汁酸を減少させることを

発見しました。



この研究については、11月27日(木)の日経産業新聞で報道されました。また、研究の内容について、

以下の国際会議で発表されました。



 1) The Second International Interdisciplinary Conference on Vitamins,

  Coenzymes, and Biofactors, Athens 市, USA(2008年10月30日)

 2) 食と健康に関する新潟国際シンポジウム、新潟市(2008年11月29日)

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<加藤教授による研究についての解説>
◆ 発見の意義

ポリフェノールは、一般的に抗酸化作用やコレステロール低下作用があることは知られていたが、2次胆汁酸の

低下作用があることを初めて解明した。高脂肪食による腸内でのリトコール酸やデオキシコール酸などの2次

胆汁酸の増加は、DNA傷害や酸化ストレス、細胞毒性などにより大腸がんなどの大腸疾病を引き起こす。

今回、クルクミンやエラグ酸、カテキンなどのポリフェノールが腸内での2次胆汁酸の増加を抑制することを解明した。

これらのポリフェノールは、すでに安全性が確認されている成分なので食品や医薬品などへの応用もしやすい。

幾つかのポリフェノールが大腸癌を予防することを示唆する間接的な証拠が幾つか報告されているが、その機構は

不明な点が多い。今回の発見は、その機構の一端を明らかにするとともに、腸内あるいは糞中の2次胆汁酸組成を

調べることによって多数のポリフェノールの大腸への影響を比較・検討することが可能となった。

◆ 研究背景

近年、ライフスタイル・食生活の変化に伴って、高脂肪食を日常的に摂取することが増え、がんや高脂血症などの

成人病やそれらの予備軍となるメタボリック症候群などが社会問題となっている。



日本人の大腸がんの発症率は世界的にも高く、新たな対策を講じることが求められている。こうした中で、

ポリフェノール類のエラグ酸をラットに摂取させ、脂質代謝への影響を調べる過程で糞中胆汁酸(コレステロールの

代謝分解産物)の排泄を調べる機会があり、糞中の2次胆汁酸であるリトコール酸が著しく減少していることを

偶然発見した。これが突破口となり、本格的な研究を開始した。

◆ 研究概要

SD系雄ラットを用い、高脂肪食に各種ポリフェノール(カフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸)を0.5%添加した

ものを3週間摂取させ、最後の3日間糞を採取し、糞中胆汁酸組成の分析を行った。



その結果、糞中の2次胆汁酸(リトコール酸、及びデオキシコール酸)について、ポリフェノール摂取群で統計的に

有意な減少が見られた。一方、1次胆汁酸のコール酸については、ポリフェノール摂取群で増加傾向が見られた。

(下図を参照)

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◆ 今後の展開
本研究は現在、ちゅうごく産業創造センターの支援を受け、(株)ブルボンや(株)あじかんなど7社の

食品関連企業などとともに「腸内環境を改善する新規食品素材の開発」研究会を設立し、食品への

応用研究、5年以内の実用化を目指している。

<この研究に関するお問い合せ>

 大学院生物圏科学研究科 教授 加藤 範久

 TEL:082-424-7980

 E-mail: nkato@hiroshima-u.ac.jp (@は半角に変換してください)


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