• ホームHome
  • 東京オフィス
  • 広大OB田中太郎~リアルを語る~第9弾 「長いものに巻かれる生き方が、そんなに偉いんですか?」

広大OB田中太郎~リアルを語る~第9弾 「長いものに巻かれる生き方が、そんなに偉いんですか?」

Q:長いものに巻かれる生き方が、そんなに偉いんですか?(20代男性)

A:おっしゃりたいことは、こうですね。寄らば大樹の陰とかなんとか、安定した生活を最優先して自分を殺す人生って、わしゃ勘弁してほしいよな。そんなヤツに偉そうにされると腹が立つ。大手企業の内定がどうのこうのと一喜一憂する就活なんてアホじゃなかろうか。

正直言いますと、ワタシも似たような考えを持っていた時期がありますが、いまは違います。じつに若気の至りでした。

まずは長いものに巻かれない人生について、考えてみましょう。だれからも指図されず、自分が思うように生きるって、そんなこと可能なのでしょうか。
フリーランス? 仕事も時間も自由になるには、それ相応の技量が必要ですが、それはどこで身につけるのですか? あなたは皆が認めるたぐいまれなセンスを生まれながらに持っているのなら、すでにオファーが殺到しているはずですが、なにか仕事になってますか
スタートアップ? いきなり起業ってのも、いまどきはかっこいいってことになってますが、最初の資本はどうしますか。営業は誰がするのですか。仕事ってのは売り上げを回収することで完結するのですが、取引先の管理と倒産やクレームなど事故の処理はできるんですか。人を雇うなら労務管理もやらなければブラック企業一直線ですよね。そういう知識や経験はありますか?
自分が生かせる小規模企業? 鶏口となるとも牛後となることなかれとはよく言いますが、鶏口って常に雇用不安にさらされますし、多くの場合は牛である大企業と戦うか、大企業との協業(というか下請け)で振り回されるばかりってのが現実ですよ。巻かれるものが短いだけに、さらに窮屈ですけど、それが望みですか。
アプリ開発が得意? ITでの起業って5年後の生存率が10%以下だということをご存じですか。しかもITは世界が相手です。ライバルの数は、あなたが知っている世界の何千倍の規模になります。そこで戦い続けることができますか? その生き方がお望みですか?
飲み屋でも開く? 客商売って、ビジネスマンよりもよっぽど客に気を遣う、つまりは「長いものに巻かれ」なきゃ成り立ちませんよ。しかも、倒産夜逃げ横領踏み倒しは当たり前、それでいて自由な時間はほとんどなくなりますが、あこがれますか?

荒野で好き勝手に餌をあさる肉食獣ではありません。社会を形成して、一人一人がその成員として役割分担して共存共栄で生きていくのが人間です。つまりは自分の足で立って生きていくということは、社会の中の一員となることを意味します。社会の機能として人間関係や組織というものがある以上、程度はいろいろとしても、「長いものに巻かれる」ことからは逃れることはほぼ無理です。
もちろん、巻かれなくても生きる方法はありますが、食いつぶせるだけの親の遺産があるとか、施しを受けるとか、パートナーに食わせてもらうとか、まれに宝くじの1等を手にするとか、降ってわいたような幸運が必要です。あなたにそういうラッキーがあったら、それはそれで喜ばしい限りですが、それにしても、長いものに巻かれている人間をディスるのは筋が違います。

どうせ逃れられないのだから、長いものに巻かれる良さについて考えてみましょうよ。
まずは安定があります。明日食べるもの、3年後に買いたいもの、20年先までの人生設計にもあまり不安を持たなくて済みます。あなたは今、自分ひとりで自由な立場に居心地の良さを感じているのでしょうけど、じゃぁ中高年となったときにも同じ生き方をしている自分を想像できますか? いまと同じ事に30年後も熱中できていると思いますか? あなたの周囲にそんなお手本になる中高年がいますか?
お気づきいただけるのではないかと思うのですが、あなたの価値観はこれから先もどんどん変わっていきます。置かれる立場もまた同じです。人生それぞれのステージでの変化をある程度支えてくれるものが、安定なのです。
さらに、これがもっとも重要だと思うのですが、もうひとつ、長いものに巻かれる良さがあります。それは学びです。
先に指摘したように、自分が好きに生きるために起業するなりフリーランスになるにしても、技量や経験が必要になります。目に見えるもの以上に、取引先との人間関係、パートナーのやる気や信頼を上げる気配り、年配者とのつきあい方、カネや組織の管理に関する暗黙知、より大きな規模のビジネスを動かす経験、なにより許される中での失敗など、ビジネスマンになるのであれば学びは一生です。
これに加えて、さらに重要なことは、人との出会いです。生き方を学ぶ、仕事を教わる、公私にわたるメンターとなるなど、人との出会いは大きな成長のきっかけとなります。でもそれは、組織の中にいて、それこそ長いものに巻かれているから実現するわけであって、組織の外の人間は、どんな立場の人にとっても、距離を置くべき人、気配りせねばならない取引先、使い捨てしても構わない出入りの業者です。

自分の生き方を貫こうとする、その気持ちは立派です。貫くための土壌を作るために、長いものにまかれることは、そんなに間違った考えではありません。

最後に。
実感とは真逆に思うかも知れませんが、もし少しでも「巻かれ具合」を緩いものにしようと思うのであれば、大手企業か公務員になることをお勧めします。大手企業ならば、仕事も人も選択肢が多いので、自分の心地よい場所、共感できる人間が見つかる可能性が高いです。公務員には失業という概念がありません。悪いことをしない限り、多少自分を貫いたところでクビになることはありません。しかも9時5時の働き方が当たり前の世界です。5時以降を自分の好きなように使えるので、そこで思いっきり自分を貫くことができます。

ってか、そこまでして守りたい自分って、何なんですか? ワタシはそこに興味があります。
(田中太郎)

 

※広大OB田中太郎さんにご質問ある方は、以下の連絡先にお問い合わせ下さい。↓

<お問い合わせ先> 
広島大学東京オフィス                    
Tel 03-5440-9065  Fax 03-5440-9117
E-mail  liaison-office@office.hiroshima-u.ac.jp(@は半角に変換してください)


up