ゲノム口腔腫瘍学

藤井 万紀子 教授

【研究キーワード】
頭頸部がん、悪性中皮腫、骨肉腫、TGF-βシグナル伝達経路、CTGF、分子標的治療薬、重粒子線治療法、トランスレーショナルリサーチ

【最近のハイライト】
 2003年に全ヒトゲノムが解読されて以降、更に急激なゲノム医学の進歩が認められています。ゲノム異常が関わる疾患も数多く報告されており、ヒトゲノムについての知識に基づいた研究は今後さらに疾患の理解を深め、全世界の研究を更に強力に推進していくことが予測されます。
 本邦においては2人に1人ががんで亡くなるという時代になりましたが、一方で目覚ましい科学技術の発展により、がんの予防法、診断法、治療法それぞれの領域で、近年大きな進展が認められています。新規診断法、新規治療法がさまざまなゲノム医学、腫瘍生物学の知識に基づいて開発されており、その多くが細胞生物学、分子生物学分野を中心にした長年にわたる世界中の多くの研究者の努力が花開いた結果とも言えます。蓄積されたこれまでの医学分野の成果と、新たに開発された技術が融合し、これまで不可能だと思われていたことが次々と可能となることを期待しつつ研究を行っています。

研究者総覧へのリンク

【教育内容】
ゲノム口腔腫瘍学講座は、細胞科学(教養教育課程)、基礎ゲノム医学(歯学部・2020年開講予定)、がんの生物学(歯学部・2021年開講予定)の講義の担当をしています。また、歯学部国際化に関する講義である、国際医学連携開発学(教養教育課程)、国際歯科医学特論(歯学部)、日本文化を知る(歯学部留学生)、歯学概論(歯学部留学生)、生命科学(歯学部留学生)を担当しています。

【研究内容】
 現在我々の研究室では、悪性中皮腫、粘膜悪性黒色腫などを中心に、難治性悪性腫瘍について研究を行っています。悪性中皮腫細胞では、NF2(neurofibromatosis type 2)遺伝子およびその下流のHippo シグナル構成遺伝子の異常が生じており、TGF-β(Transforming Growth Factor-β)と協調してCTGF (Connective Tissue Growth Factor) 遺伝子発現を上昇させることにより細胞増殖を促進することがわかっています。悪性中皮腫では、悪性度が高くなるとCTGFの発現が強くなるため、TGF-β-CTGFシグナル伝達経路が、重要な働きをすることが示唆されており、現在この経路を標的にした治療薬開発を目指して研究を行っています。
 また、リキッドバイオプシーを用いた重粒子線治療の予後予測の可能性について放射線医学総合研究所との共同研究を現在進行中です。細胞生物学的手法、分子生物学的手法を中心に研究を行いながら、他の分野の研究者や研究室との共同研究を通して、がんの集学的治療法の開発に役立てる研究を目指しています。
 

研究抄読会や研究報告会を毎月行い、情報交換をしながら研究を進めています。


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