医歯薬保健学研究院(医) 茶山 一彰 教授

私たちの研究は、消化器内科の中でも肝臓病を中心とするもので、主にウイルス性肝炎や原発性肝がん、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)といった 肝臓の病気が起こる原因を、ウイルス側と宿主であるヒトの側の遺伝子という2つの側面から探り、その治療法を見出していこうとしています。
なかでも積極的に取り組んでいるのは、難治性B型肝炎やC型肝炎、進行性肝細胞がんといった疾患です。

私たちの研究チームは、肝臓学会の最高峰であるアメリカ肝臓学会でも毎年ベスト3に入る発表数を誇っており、日本では1~2番、世界でもベスト10に入るような先進的研究チームという高い評価を得ています。

また、研究成果に対する反響も非常に大きく、各方面から共同研究のオファーがあり、現在はアメリカ、オーストラリア、台湾などの研究者との共同研究も並行して進めているところです。

近年の大きな研究成果を挙げてみますと、B型肝炎ウイルスの持続感染に関係のあるヒトの遺伝子の 発見、C型肝炎ウイルスが細胞内に入っていく際に必要となるたんぱく質の発見、C型肝炎ウイルスの感染者が肝臓がんになる際に関係の深い遺伝子 【DEPDC5遺伝子多型】の発見、などがあります。
こうした成果を重ねていくことで、いずれは肝炎ウイルスを根絶するというのが当研究のめざすところと言えます。

私たちの研究拠点である広島は、肝炎の患者数が比較的多い地域であるため、豊富な臨床データを得ながら、その解析が基礎研究の進展につながり、基礎 研究もすべて臨床に還元される、といった相乗効果が見込まれることから、基礎研究のみならず、臨床研究も重視した研究体制を整えています。

現在、日本におけるC型肝炎ウイルス感染者は200万人を超えると言われており、C型慢性肝炎から肝細胞がんを発症するという事例が大変多く、肝細胞がんによる死亡例も多いため、その対策が急がれています。
しかしながらこれまで、C型慢性肝炎から肝がん発症に至るメカニズムは、十分に解明されていませんでした。そうした中、2011年に私たちが発表した「C 型慢性肝炎に起因する肝がん発症に関与する遺伝子の発見」は、これが肝がん発症の仕組みの解明や治療法の開発につながっていくものと大いに期待されていま す。

私は研究をさらに進めていけば、少なくとも現在、日本で問題となっているC型肝炎ウイルスについては、ゆくゆくは完全に根絶できるものと考えています。

「広大でしかできない特別な研究」があります。
それは、「ヒト肝細胞キメラマウス」を使うもので、ヒトの肝細胞をマウスに移植し、マウス肝臓の70~90%以上が正常ヒト肝細胞に置き換えられたキメラ マウスを人工的に使り、これにいろいろなウイルスを感染させるというもの。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスを持続感染させることができるため、その感 染モデルを使って、さまざまな肝炎ウイルス研究を行うことが可能になりました。

そして、こうした技術は本学でしかできないものであるために、各種受託研究や共同研究の依頼が数多く寄せられる理由のひとつにもなっています。

その上、広島大学には研究者を自由に羽ばたかせてくれる、独特な風土があるように感じています。 私自身、本学での研究生活は13年目になりますが、研究が進むにつれて、研究のためのスペースも拡大していき、本学で学んだ学生たちが成長してスタッフと なり、熱心に研究に取り組んでくれています。

私たちはこれからも、世界に冠たる研究を続けてまいります。研究の要となるのはなんといっても「人」ですから、研究者はもちろん、技術者の方にも、ぜひ多くの有能な皆さんに、私たちの研究に参加してもらいたいと思っています。

Profile

医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門

1981年5月1日~ 医療法人同仁会耳原総合病院内科医員
1986年4月1日~ 国家公務員共済組合連合会虎の門病院内科医員
1996年7月1日~ 同上医長
2000年9月1日~2002年3月31日 文部科学教官教授(広島大学医学部内科学第一講座)
2002年4月1日~ 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 創生医科学専攻 先進医療開発科学講座 分子病態制御内科学 教授
2005年4月1日~2011年3月31日 広島大学病院 副病院長
2009年4月1日~2011年3月31日 広島大学 副理事
2011年4月1日~ 広島大学病院 病院長
2012年4月1日~ 広島大学 理事 及び 副学長


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