第302回 物性セミナー・HiSORセミナー 合同セミナー
光電子分光による強相関電子状態の研究:
-軟X線によるバルク敏感3次元フェルミオロジーと硬X線による真のバルク電子状態の解明-
講師:菅 滋正
所属:大阪大学大学院基礎工学研究科 教授
日時:2007年10月4日(木) 15時−16時
場所:理学部 C212会議室
近年放射光光電子分光はエネルギー分解能が飛躍的に向上しつつあると共にエネルギー範囲もまた10keVを越えるまでに拡大しつつある。従来の10〜130eVの運動エネルギー領域の通常の光電子分光が強相関電子系の場合にはバルクとは時として著しく異なる表面の電子状態を観測してきた事も徐々に明らかになりつつある。光電子の非弾性平均自由行程は電子間相互作用や電子格子相互作用で決まるがその値は3Aから100Aを超える程度で物質とエネルギーに応じて多様であり決してUniversalな振る舞いをするとは言いきれない。しかし軟X線や硬X線の光を用いた光電子分光ではエネルギーが高くなるにつれてバルク敏感性が増すことにはほとんど異存がないようでバルク電子状態を探るには軟・硬X線が極めて有用である。
十分なエネルギー分解能の軟X線光電子分光でCe系1)やYb系2)のバルク電子状態が明らかになるにつれて、強相関系のバルクと表面電子状態の分離も可能となってきた。4f希土類のみならず3d,4d遷移金属化合物系でもバルクと表面の電子状態の違いは明らかとなってきた。さらに我々は当時の多数意見に反して強相関電子系でも軟X線角度分解光電子分光が可能であることを実証した。これは波数分解能がエネルギーの平方根に比例してしか増大しないために十分な波数分解能が得られるためである。デバイワラー因子による波数のボケは軟X線では決定的ではない。この手法はkx-ky面(へきかい面)内のバルクバンド分散を観測できる手段としてにわかに注目を集めた3)。最近では光エネルギーを軟X線領域で小刻みに変えることで3次元バル
クバンド分散測定や3次元バルクフェルミオロジーが可能となり4),極定温,高純度試料に限定されるdHvA測定と相補的なあるいはそれをしのぐ手法としての地位を一気に確立しつつある。これらが如何に重要かは高温超伝導体の場合を見れば明らかである5)。
さらに光エネルギーを上げて数keV領域になると(これをHAXPESと呼ぶ)価電子帯の真のバルク電子状態を容易に探ることができる。スクッテルダイト6)を含む4f電子系や3d電子系のいくつかの例についてHAXPES研究の現状を紹介しさらにいくつかの物質で内殻のみならず価電子帯に初めて観測されたrecoil効果について議論する。
担当:理学研究科 木村昭夫(7471)
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