先進機能物質研究センターと米国ロスアラモス国立研究所(注1)は、平成21年11月14日、エネルギー
貯蔵分野の共同研究を進めるため、部局間交流協定を締結しました。
【部局間協定の目的】
エネルギー貯蔵分野の中でも、先進機能物質研究センターは非金属系水素貯蔵材料(注2)の固相合
成とその解析を強みとし、ロスアラモス国立研究所は燃料電池(注3)、非金属系水素貯蔵材料の液相合
成および中性子散乱(注4)による解析を強みとしています。今後、双方の強みを生かした連携を進めて
共同研究などに進展させ、先進機能物質研究センターにおけるサステナブル(注5)物質(注6)科学研究
の活性化とその国際展開を推進します。
【主な取り組み内容】
平和利用を前提とした
・エネルギー貯蔵材料の共同研究
・先進機能物質研究センターとロスアラモス国立研究所の研究員との交流
・研究成果や学術に関する情報交換
両者は、すでに研究開発者グループが互いの研究拠点を訪問しており、平成21年9月9日にロスア
ラモス国立研究所で、同11月12日には広島大学で水素貯蔵材料をテーマとするワークショップを開催し
ました。
締結後に握手を交わすKarl K. Jonietz Program Manager(左)と高畠センター長
調印式前に今後の展開について話し合う両機関の関係者
【お問い合わせ先】
広島大学先進機能物質研究センター
副センター長 小島由継
TEL:082-424-5744 ・ 3904 FAX:082-424-5744
◆用語解説
(注1)ロスアラモス国立研究所
1943年に創設されたアメリカ合衆国の国立研究機関である。現在は米国エネルギー省の
管轄下にあり、12,500人の科学者・所員が勤務している。歴史的に国防や安全保障の研究も
行っているが、同時に生命科学、ナノテクノロジー、コンピュータ科学、情報通信、環境、レーザー、
材料科学、加速器科学、高エネルギー物理、再生可能エネルギーなど、さまざまな先端科学技
術について広範な研究を行う総合研究所である。そのスタッフは米国の未来のための基礎・応用
科学に関して数多くの大学や企業と共同研究を進めている。年間予算は22億ドルで、米国の頭
脳が集まる名実ともに世界最高の研究機関である。
(注2)水素貯蔵材料
水素を安全かつコンパクトに貯蔵する媒体である。
(注3)燃料電池
燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤を供給し続けることで継続的に電力を取り出す
ことができる化学電池である。
(注4)中性子散乱
中性子が物質にあたって散乱する現象。中性子散乱は、物質の構造解析において軽元素、特に
水素原子の位置を特定する手段として威力を発揮する。
(注5)サステナブル
「持続可能な」という意味。将来の環境や次世代の利益を損なわずに社会発展しようという理念。
(注6)サステナブル物質
人類の持続可能な繁栄を支えるために必要とされている基盤的物質。環境に優しく安価であり
ながら、従来の機能物質よりも優れた性能を持ち、再利用のコストも安い材料のシーズとなるも
のを指す。例えば、クリーン・省エネルギーに役立つ水素貯蔵物質や、廃熱を有効に電気に変換
できる熱電変換物質、太陽光を効率よく電気に変換できる安価な色素増感太陽電池など。さらに
エネルギーをロスなく運び蓄えることのできる高温超伝導物質、省エネルギーに役立つ有機分子
エレクトロニクス材料、分子磁石、スピンエレクトロニクス材料、軽量でも高強度の高分子材料など。