第423回物性セミナー(5研究科共同セミナー:11月30日)



題 目 アインシュタイン固体におけるラットリングと超伝導
講 師 廣井善二 (東大物性研教授)
日 時 2011 年11 月30 日(水)17:05-18:00
場 所 先端物質科学研究科 401N
要 旨 固体中の原子の振動は通常、調和振動子として近似される。特に原子の熱振動が抑えられ振幅が小さくなる低温においてはフックの法則がよく成り立ち、原子は2次関数のポテンシャル中で運動するとみなすことができる。一方、高温になって振幅が大きくなると調和振動子近似からのずれが顕著になり、実際に熱膨張などとして観測される。最近、カゴ状構造を有する一連の化合物において、大きなカゴの中で振動する小さな原子またはイオンが異常に大きな原子振幅をもつ非調和振動を示すことが分かってきた。この現象は赤ちゃんの玩具との類似性からラットリングと呼ばれている。

ラットリングは基本的に局所振動であるため、調和振動子近似の範囲ではアインシュタインモードとみなすことができる。約40年前、CaplinらはAl10V(AxV2Al20)において同様の現象を見出し、この物質をアインシュタイン固体と呼んだ。ここ数年のβパイロクロア酸化物、充填スクッテルダイト、クラスレート化合物に関する集中的な研究によって、ラットリング現象の本質が明らかにされつつ

ある。特に興味深いのは、これまで考慮されてこなかった非調和振動と伝導電子の相関である。βパイロクロア酸化物においてはこれが超伝導を引き起こすか、少なくともクーパー対形成を助けていると考えられる。一方、ラットリングには、カゴの中心を基準とするオンセンター振動と、カゴ内の複数のオフセンター位置をトンネリングするオフセンター振動の2種類があると予想されており、両者で電子−ラットラー相互作用が異なると思われる。本セミナーではβパイロクロア酸化物とAxV2Al20を取り上げ、ラットリング現象の面白さを紹介したい。
担 当 高畠 敏郎(先端物質科学研究科 7025)

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後援 先進物質機能研究センター


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