日時:平成19年9月5日(水)16時−18時
場所:先端物質科学研究科401N
- ラマン散乱で見たカゴ状物質中の原子運動の特徴
--- 宇田川 眞行 教授(総合科学研究科) ---カゴ状物質中のゲスト原子のラットリングと呼ばれるインコヒーレントな運動が格子の熱伝導率の抑制に寄与するとの提案から,ゲスト原子の運動の特徴を明らかにしようとする研究が近年盛んに行われている。我々はゲスト原子の運動の微視的特徴を明らかにする為に, I型クラスレート,スクッテルダイト,β-パイロクロア,RB6,La3Pd20Ge6などのカゴ状結晶についてのラマン散乱を行い,第1原理計算も併用して以下の結果を得たので紹介する。
ゲスト原子とカゴの間の相互作用が弱く,かつカゴの大きさに対してゲスト原子の大きさが小さい場合には,(1)4次の非調和性による大振幅振動を行い,(2)状態密度がキャリヤーの遮蔽効果が
大きくなるに従って増大し,(3)off-centerラットリングが格子の熱伝導率を低下させる - 超音波測定でみるカゴ状化合物の弾性特性
--- 石 井 勲 博士(先進機能物質研究センター) ---カゴ状物質においては,ゲスト原子がラットリングと呼ばれる非調和振動状態にあるものがある.そのような系の超音波測定において,数十Kで弾性分散,数K以下でソフト化が観測され,それぞれサーマルラットリング,カンタムトンネリングに起因していると考えられている。そのメカニズムを明らかにするために,我々は,充填スクッテルダイト化合物,クラスレート化合物の超音波測定を行っている。最近の実験結果を中心に紹介する。
- 非調和フォノンによる普通でない電子状態
--- 三宅 和正 教授 (大阪大学大学院基礎工学研究科) ---非調和フォノンと伝導電子が相互作用する系は自明でない多体効果を内在していると考えられる。この問題は近藤によるイオンの2準位と伝導電子が相互作用する系で観測される「電気抵抗極小現象」の分析から始まったが、Anderson-Yu のA15化合物の2重井戸モデルの提唱を経て、最近のカゴ状物質中のイオンの“ラットリング”と伝導電子の相互作用が生み出す異常な電子状態の問題へと発展してきた。このような研究の発展を私なりに振り返り、最近の私達の研究を紹介する。