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【研究成果】乳がんの悪性度を示す新たなバイオマーカーとして期待~ホルモン受容体陽性乳がんにおける分泌蛋白Wnt5aの働きに注目~

本研究成果のポイント

  • 分泌蛋白Wnt5aは、胃がん、前立腺がん、膵臓がんなどで悪性度と関係することが報告されています。乳がんにおいて、Wnt5aの発現がホルモン受容体陽性乳がんと関連が深く、悪性度、治療成績と相関することを明らかにしました。
  • そのメカニズムを明らかにするためDNAマイクロアレイ(注1)という手法を用いてWnt5aの発現と関連のある分子の一つとしてactivated leukocyte cell adhesion molecule  (ALCAM)を同定しました。
  • 培養細胞を用いた実験から、Wnt5aはALCAMの発現を誘導することでがん細胞の遊走能(他の場所へ移動する能力)を促進することが分かりました。このことから、Wnt5aはホルモン受容体陽性乳がんの悪性度の新規バイオマーカーとなることが期待されます。

(注1)マイクロアレイ法:プローブを用いて遺伝子を検出する方法の一つ。基盤上に多数(数千種類以上)のプローブを結合させることで、それらに対応した数の遺伝子を同時かつ定量的に測定することが可能。

概要

広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科の角舎学行講師らの研究チームは、乳がんにおけるWnt5a発現の意義を調べるため、乳がん組織の免疫組織化学染色を行いました。その結果、Wnt5a陽性乳がんのほとんどがホルモン受容体陽性乳がんに属しており、5年無再発生存率を比較するとWnt5a陰性乳がん症例に比べて低下していることが分かりました。Wnt5aによる悪性化のメカニズムを調べたところ、Wnt5aにより発現が誘導される分子の一つとして、細胞接着に関係するALCAMが同定されました。

乳がん組織を用いて検証すると、Wnt5aの発現している乳がん組織ではALCAMが多く発現していました。ホルモン受容体陽性乳がん細胞において、Wnt5aの発現をノックダウンさせるとALCAMの発現が減少するとともに細胞の遊走能が減少しました。これらの結果から、Wnt5aは乳がん細胞においてALCAMを誘導することで細胞遊走能を亢進させ、乳がんの悪性度、再発を来しているのではと考えられます。

本研究成果は、医学雑誌「Oncotarget」のオンライン版に掲載されました。

論文情報

  • 掲載雑誌: Oncotarget
  • 論文題目: Wnt5a-induced cell migration is associated with the aggressiveness of estrogen receptor-positive breast cancer
  • 著者: Yoshie Kobayashi*, Takayuki Kadoya, Ai Amioka, Hideaki Hanaki, Shinsuke Sasada, Norio Masumoto, Hideki Yamamoto, Koji Arihiro, Akira Kikuchi and Morihito Okada
    *Corresponding author(責任著者)
  • doi: 10.18632/oncotarget.24761
【お問い合わせ先】

広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科
講師 角舎 学行

TEL: 082-257-5869
FAX: 082-256-7109
E-mail: takayukikadoya*gmail.com(*は半角@に置き換えてください) 


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