待望の財団が設立

一. はじめに

去る六月十八日に、本学を財政的に側面から援助していただく「財団法人広島大学後援会」の設立が主務官庁である文部省から許可されました。
設立許可書の交付式には、設立発起人会代表者(設立後は理事長)の佐竹覚氏(株式会社佐竹製作所代表取締役会長)と同社代表取締役副会長である佐竹利子氏が出席されました。財団法人設立は、かねてから、教職員の願望であっただけに大学関係者一同の喜びは格別でした。また文部省からもお祝いの言葉とともに励ましの言葉を受けました。本学の歴史の一ページを飾るのにふさわしいできごととなるでしょう。
これを受けて、七月十七日、第一回の評議員会と理事会が開かれ、本財団法人の事業計画等が承認され、いよいよ初年度事業の実施を待つばかりとなりました。この機会に、この財団法人の設立経緯、意義及び事業の概要等について、ご説明したいと思います。

二. 財団法人設立をめぐる現状

現在、大学を支援する後援法人(財団)を有する大学は、百校近くの国立大学のうち約一割程度とみられ決して多くはありません。今回の設立許可は、平成三年に、大阪大学と奈良先端科学技術大学院大学に許可されて以来のことです。
聞くところによると、いくつかの大学が、設立に向けて検討あるいは計画中でありますが、募金活動がままならず資金面で課題を抱えているのが現状で、設立までにはまだまだというところです。ただ、大半の大学では、学内に国際交流や、学術研究などの基金を設けて、事業に取り組んでいますが、これは、委任経理金として大学の管理する経費として扱う方式で、運営面で自ずと制約があります。このため多くの大学では、財団法人化を望む声が高いようです。
近年、公益法人をめぐる不正事件等が多発していることから、政府は、今後これらの法人を整理していく方針を決めました。このような事情もあり、設立の際の審査・指導には、ことのほか厳しいものがあり、本財団法人の設立は多少の時間がかかりましたが、このたび、晴れて設立の運びとなりました。大変喜ばしいことであります。

三. 財団法人設立の意義

財団法人設立の意義については、昨年、設立発起人会の席上、発起人会会長(現財団理事長)の佐竹氏が挨拶されたとおりです(挨拶文抜粋参照)。大学は、有為な人材の育成と学術研究を通じて、社会に貢献することを使命としています。しかし、この十数年来、国の厳しい財政状況から、多様な事業に対応できなくなってきたことから、政府は、国の発展を真に志向する民間等からの外部資金を積極的に受け入れることを奨励するようになりました。大学を支援する財団法人の設立もそのひとつです。
大学を後援する財団法人の設立は、大学における教育研究活動そのものが、高度の公共性、公益性が高いということで、一定の要件を満たすものだけに設立が許可されます。財団法人は、基本財産の果実をもって事業を安定的に継続できることを原則としています。現在のような低金利時代の経済状況の中で、本学に財団法人を設立できたのは、十億円という多大のご寄附をいただいた株式会社佐竹製作所代表取締役会長佐竹覚氏のご高志とご英断の賜であります。
佐竹氏の御厚意を末永く銘記するために、この財団法人を「サタケ・ファンド」と呼ぶことにしたいと思います。

四. 財団法人設立までの経緯

株式会社佐竹製作所の創業百周年記念事業のひとつとして、佐竹氏の寄附申し出を受け、同氏の意向を末永く生かすため財団法人設立に向け、平成八年二月、学内に「広島大学支援財団設立策定グループ」(座長小笠原副学長)を部局長連絡会議の下に設けました。同グループは、事業内容などを検討するとともに、この趣旨に賛同する教職員に学内募金を呼びかけました。
平成八年七月三十一日には、設立発起人会が開催され設立趣意書が採択されました。これにより、設立許可申請書が同年八月文部省に提出され、平成九年六月十八日に設立が許可されました。それを受けて平成九年七月十七日、第一回目の財団法人評議員会と理事会が開催され、事業計画等が承認されたことは前述したとおりです。
なお、現在、財団法人の事務は専属の担当者一人(保手濱清利氏・前教育学部事務長)が従事しています。

五. 事業の概要

本年度承認された事業は、別表のとおりです。すでに応募要項等については各部局長あてに依頼されています。選考委員会が十月中に開催され、初年度の採択者が内定される予定です。

平成9年度事業概要
事項(事業の概要等)-事業件数及び助成額(予定)
 
1 教育・研究活動に対する支援

(1) サタケ研究助成金(教員(個人、グループ)の研究に対する助成) 50万円×6件

(2) 学術講演会、シンポジウム、セミナー等の開催経費の援助     30万円×5件

(3) 学術出版物への助成                      50万円×2件

2 教育・研究の交際交流に対する支援

(1) 教職員の海外研修への助成             30万円×10件

(2) 外国人研究者の受け入れ等に関する助成      30万円×4件

(3) 外国人留学生に対する修学援助         1800円×600件

  (留学生が民間宿舎等を借り上げる際の住宅総合保険料の支援)                    

(4) 国際シンポジウム等の開催経費の援助       30万円×4件

六. おわりに

本学が、かねてから長きに亘って切望してきた財団法人の設立は、佐竹氏のお力添えがなければ決して実現しませんでした。
私たちは佐竹氏のご寄附の趣旨を踏まえ、教育研究の面でご期待に応える必要があるかと思います。
また、出費多難な折学内募金に快く応じていただいたみなさんにも、改めてお礼を述べたいと思います。今後とも、本財団法人の活動にご理解を賜りたいと思います。 

【文・広島大学長 原田 康夫(総務部研究協力課)】

雨宮高等教育局長から許可証の交付を受ける佐竹氏
(左から雨宮局長、佐竹会長、佐竹副会長、原田学長)


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