メールマガジン No.19(2007年9月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.19(2007年9月号)
 2007/9/25 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.新任教員特集Part.2( 文学研究科准教授 今林 修 / 准教授 稲葉 治朗 )
2.文学研究科・文学部主催の公開講座のご案内
3.文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より

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【1.新任教員特集Part.2】
 文学研究科では、4月に6人の教員が着任いたしました。
前回に続き、2人の新任教員のコラムを掲載いたします。

○『地域方言』
言語文化学講座 准教授 今林 修

 私は、明治生まれの博多商人を父に、難波の商人の娘を母に、昭和になって38回目の4月に現在の福岡市早良区で産声を上げました。物心がついたころには、弟の肺炎の療養のために、一家は宗像郡福間町(現、福津市)に移り住んでいました。少年時代は、「わるそぉーぼうず」でしたから、「おぃしゃん」たちからよく「がられ」ました。博多祇園山笠で有名な櫛田神社の裏手を横目に「ひらり」に曲がると国体「ろうろ」との「かろ」に創業明治15年の「うろん屋」さんがあります。『かろのうろんや』といいますが、創業当時は特に屋号がなく、「かろのうろんやィ、うろん食ィ行コ」といっていたことから屋号になったそうです。博多っ子の「だ行」の発音は、「ら行」になるのです。音声学的には歯茎破裂音および歯茎摩擦音が歯茎側面はじき音に近く発音されます。最近知ったことですが、この訛りは、博多弁特有のものではなく、大阪、大和川南部の河内弁にもみられます。例えば、「よろがわのみるのんれ、はらららくらりや」です。生粋の博多っ子と河内の「いとさん」を両親に持つ私に「だ行」の発音ができるはずもありません。学会などでJacques Derridaの名前を口頭で発言しなくてはならない時などは、本当に冷汗ものです。
 そんな私でも、広島で学生生活を続けるうちに、「今日は、ぶちたいぎぃーのぉぅ
」と広島弁が優勢になりました。家内が岩国出身なので岩国弁にも通じています。家内の祖父母の会話には、「げにあついきぃのぉぅ」と古語すら散見することができます。岡山に職を得て住みついてから、かれこれ12年と半年が過ぎようとしています。子ども4人に恵まれ、岡山弁を自由に操る彼らと「ぼっけぇーあつうておえんなぁー」といって盆休みを過ごしました。
 のぞみ号が停まる駅でいいますと、博多、小倉、広島、岡山と東進してまいりました。今、述べてまいりました山陽新幹線沿いの地域方言への関心こそが、博士論文の研究対象になりました「ディケンズの文学方言研究」の内面的動機になったのではないかと思っています。Dickens研究といいますと、広島大学は、英語学、英文学を問わず、数多くの学者を輩出しております。3年ほど前に、ある好意的書評のなかに、「広島大学の英文科ではディケンズだけしか教えていないのだろうか?
まさかそんなバカなはずもあるまいが」と、前置きがあったぐらいです。もちろん心配ご無用です。前期は、Dickensも愛読した18世紀の代表的な小説を講読するようにしております。石川啄木の「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」の短歌に読み込まれているような郷愁を、英語文学作品を通して学生諸君と味わっていきたいと思っております。この短いエッセーが放言になっていないことを祈りつつ、今後ともよろしくお願い申し上げます。

○『着任のご挨拶』
表象文化学講座准教授   稲葉治朗

 2007年4月1日付けでドイツ文学語学分野に着任いたしました。日本では首都圏(東京都およびそれに隣接する千葉県松戸市)以外に住むのは初めてですが、今ではもうすっかりこちらでの暮らしにも慣れてきました。大学の内外で、いろいろな意味で常に新しい発見に満ちた日々を送っています。
 私の専門は言語学で、特にドイツ語を主な対象としています。「なぜドイツ語をやろうと思ったのですか?」と聞かれることがしばしばあるのですが、私の場合は極めて単純です:大学ではともかく第二外国語を取らなきゃならないので、とりあえず当時は主流だったドイツ語にしてみた。そのうちに、英語はみんな出来るんだから自分はそれ以外の外国語を出来るようになってみたい、それでドイツ語をもう少し真面目に頑張ってみよう、そんな気になって、3年次からの進学先をドイツ関係の学科に決めました。やがてドイツ語を少し深く勉強していくと、英語や日本語との類似点や相違点が見えてくるようになり、面白いな、(当たり前のことだが)英語だけが外国語ではないんだな、と思うようになりました。これは次に述べることとも関連してきます。
 次に「なぜ言語学か?」ということですが、これも大学時代に何気なく受けた選択必修の授業で「ことばって不思議だな」という印象を持ったことがきっかけです。
具体的に言うと、「なぜ人間は意識的な学習なしに自分の言語(の文法)を身につけることができるのだろうか?」という点です。例えば言語学を学んだことがない人で、「私は・・・」と「私が・・・」はどう違うのかと尋ねられて、すぐに答えられる人はおそらくほとんどいないでしょう。しかし大事なことは、このように我々は文法の規則を意識的には分かっていなくても、(例えば中学生くらいでも)その運用においては間違えを犯すことがなく、また瞬時にその使い方が正しいかどうか判断できるということです。つまり我々は自分の言語の文法に関しては、学びもしないことを「知って」いる、ルールを学んだことがないにもかかわらずルール違反を犯さないのです。これは全ての言語に当てはまります。そして言語というものは人間に特有のものである、言語こそが人間を人間たらしめているということを考えると、(他の分野の先生方からお叱りを受けるのを承知で言うと、)言語学こそが文学部で学ぶ人文科学(「人間とは何か」という問題の探求)の王道であるのではないかと思われるのです。
 最後に「なぜ広島か?」ということですが、これはとりあえず、山や海といった豊かな自然や美味しいお酒や牡蠣・お好み焼きなどに魅せられた、ということにさせていただきたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

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【2.文学研究科・文学部主催の公開講座のご案内】

 今年も「21世紀の人文学」講座を開催いたします。
4年目を迎える今年は、哲学思想や応用倫理学の視点から、今日のさまざまな社会問題や日常的な哲学用語を紹介します。この講座を通して、私たちの生活の背景にある物の見方や原理を学び、そこにひそむ問題の真相と克服方法を一緒に考えてみませんか。

「21世紀の人文学」講座2007「現代に生きる哲学」

日時: 平成19年11月17(土)、24(土)、12月1日(土)13:00〜15:30  会場: 広島市中央公民館
定員: 50名 (先着順受付)
申し込み締め切り: 11月7日(水)

【プログラム】
第1回 11月17日(土) 『環境と生命を考える』
 山内廣隆(文学研究科教授)
  「環境倫理の最前線−ドイツ実践的自然哲学から学ぶ」
 松井富美男(文学研究科教授)
  「生命倫理の最前線?カントから学ぶ」 

第2回 11月24日(土) 『教育とモラルを考える』
 衛藤吉則(文学研究科准教授)
  「教育問題を哲学の視点から考えてみませんか?」
 越智 貢(文学研究科教授)
  「私たちはどこまで自律的か?」

第3回 12月1日(土) 『身近な生活を哲学する』
 赤井清晃(文学研究科准教授)
  「西洋古代・中世哲学からみた現代のことば」
 近藤良樹(文学研究科教授)
  「人には親切に?「ふれあい」以上をきらう現代人」 

受講対象 : 高校生・一般
会場 : 広島市中央公民館大集会室 広島市中区西白島町24番36号
           アストラムライン 城北駅下車 徒歩3分 
        市内バス 広島バス23号線及び23−1号線 西白島下車 徒歩3分
   ※会場には駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。

申し込み : 統一テーマによる講座ですので、3回の講座すべてに出席いただく
       ことを希望します。
申し込み方法:電話・ファックスまたはEメールで『氏名・住所・電話番号・年齢』
              をご連絡ください。
        電話番号:082-424-6620
        FAX   :082-424-0315

締め切り:11月7日(水)
共催/(財)広島市ひと・まちネットワーク 中央公民館

【問い合わせ先】
広島大学大学院文学研究科 
〒739-8522 東広島市鏡山1-2-3 TEL:082-424-6620

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【3.文学研究科(文学部)ニュース】

○「日本文化と造形芸術」展開催のお知らせ(2007年10月9日〜10月26日)

 多数の現代芸術作家のご協力により、文学研究科初めての芸術展が始まろうとしています。文学研究科が所有する研究資源と現代作家の造形芸術がどのよに結びついていくか、是非、足を運んで直接ご覧ください。

○第56回広島大学大学祭文学部企画「世界とふれあい / 語学カフェ」開催のお知らせ

 大変好評いただきました前回と同様、4人の留学生(中国・香港/南京、トルコほか)に協力いただいて、お国で好まれているお菓子やお茶を飲みながら、簡単な日常会話や文化・習慣などをお話いただく「語学カフェ」を開催いたします。

日時:平成19年11月3日(金曜日 文化の日) 13時30分から
場所:文学部1階・B153講義室

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【4.広報・社会連携委員会より 山本 庸子】
 広島大学がある賀茂台地にも秋の虫たちの鳴き声が響く季節になりました。今年の異常といえるほどの猛暑を味わった身体には、秋の訪れにほっとしている今日この頃です。さて、芸術の秋、味覚の秋、スポーツの秋…いろいろな秋の楽しみ方がありますが、私がお奨めする秋…それは、芸術の秋です。
 いよいよ、文学研究科が主催する「日本文化と造形芸術」展が10月9日から始まります。大学在学中の若いアーティストから有名な芸術家の方々、総勢24人の芸術家のすばらしい作品が広島大学西条キャンパスに集まろうとしています。
現代アートと古代・中世・近世・現代の研究資料を並べて鑑賞することによって、繋がっている何かを感じていただけたらと思っております。会場に足をお運びいただけない皆様には、HP上で作品を鑑賞いただけるように、随時更新していきますので、そちらの方でお楽しみください。では、今後ともリテラメールマガジンをご愛読いただき、文学研究科が皆様にとって身近な大学として感じていただけるように努めていきたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  富永一登
編集長:広報・社会連携委員長  岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会

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