メールマガジン No.20(2007年11月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.20(2007年11月号)
2007/11/30 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.新任教員特集Part.3( 文学研究科准教授  伊藤 奈保子/ 准教授 後藤 秀昭 )
2.「2008 リテラ ニューイヤーコンサート」開催のお知らせ
3.広報・社会連携委員会より

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【1.新任教員特集Part.3】
 文学研究科では、4月に6人の教員が着任いたしました。前回に続き、2人の新任教員のコラムを掲載いたします。

○インドネシアの仏像との出会い
地表圏システム学講座(文化財学) 准教授 伊藤奈保子

 2006年5月27日早朝、突然の地震がジャワ島ジョグジャカルタ地域を襲った。当時、私は2004年に京都の国際日本文化研究センターにて学術博士の学位を頂いた後、この地区の大学へ非常勤講師として赴いていた。インドネシアにじっくりと腰を据えて、仏像や寺院、レリーフを心ゆくまで見ていたかったからである。

 世界遺産に登録されるロロ・ジョングラン寺院を始め、多くの寺院や家屋が甚大な被害を被った。亀裂の走った石造寺院は立入禁止、シャベルで家屋の瓦礫を掘り起こし、救援物資を運ぶ日々のなか、これからの自分の進む道を考えた。「亡くならずにいられたのは、まだする事があるからではないか。生かされている。」と、強く感じた。日本へ戻り、するべき事を見つめなおそうと思った。

 私はかつて、東京の古代美術品を扱う古美術商に勤めていた。ある時、インドネシアのジャワ島出土の金銅仏を手にする機会を得た。驚いたことにその像は、日本の真言宗の本尊である「大日如来(金剛界)」と同じ形状であった。インドネシアは現在イスラーム教徒が9割を占め、仏教は1割にも満たず、密教が伝播していた認識はほとんどされていない。けれども大日如来はまさしく密教に属する仏像である。推定制作時代は8〜9世紀頃。日本では、最澄・空海らによって密教が中国の唐から日本へもたらされた時期にあたる。すなわち2つの地域において、ほぼ同時期に、同じ形態をおびた「大日如来」が存在していたこととなる。このことは何を意味するのだろうか。私は、それを契機にインドネシアでの仏教、特に密教の痕跡を研究し始めた。気がつくと、会社を退社、再び学問の世界へ足を踏み入れていた。学位拝受後は、迷うことなくインドネシアへ向かった。そして、2006年5月、あの朝を迎える。

 ヒロシマは、新幹線で通る度、その間、黙祷をささげる場所だった。この地に降りることは、できれば避けたいと思っていた。しかしインドネシアで地震を経験した後は違った。広島大学で教員募集があった時、この地にこそ行くべきだと感じた。チャレンジだった。縁があり、呼んで頂き、今日に至っている。 日本において『インドネシアの宗教美術−鋳造像・法具の世界−』を出版し、インドネシアと日本に、ほぼ同時期、密教が流伝していたことを論証、またインドネシアの農村部に小学校を創設する活動を、少しずつだが仲間と始めた。インドネシアの1躯の仏像との出会いは、私をここまで導いてきてくれている。先のことはわからないけれど、今後研究を深めると共に、微力ではあるが何かを伝えていけるような人になれればと願っている。

○西条盆地は暖かい
地表圏システム学講座(地理学) 准教授 後藤秀昭

 数年ぶりに東広島に戻ってきました。キャンパスが美しく整備され,気持ちよく散策したり,通勤できることをうれしく思っています。一方で,学生・院生として在籍していた頃との違いや前任校との違いを感じています。多様な専門分野の教員からなる教育学部に所属していましたので,一人一研究室の体制で交流の乏しい環境にありました。文学部では,研究の近い教員や学生からなる教室を単位に日常の生活を送ることが多く,日々たくさんの刺激を受けることができ,楽しく過ごしています。そのなかで,地理学の本質やおもしろさをどう伝えていくかに苦心しています。

 「西条は暖かいですね」と授業で話したことがあります。寒いと感じている学生が多いため,驚いた表情を見せました。私は広島大学に転任してくるまで東北地方で生活していたため,西条盆地は,立冬を過ぎて寒くなってきたとはいえ,暖かいとしみじみ感じます。去年までは,寒くなると体調が悪くなり,春が待ち遠しかったので,東広島は過ごしやすく,ありがたいと感じています。これは,寒さを例にして,基準があることで地域が位置付けられることを伝えようとしたものです。地理学は地域を相対化して考えていく学問と言われています。それぞれの学生の中にある固定した地域観から抜け出して,世界の見方の幅を広げてほしいと思っています。

 ところで,私は地形学を研究し,活断層の運動特性を明らかにしようと努力しています。地形の発達を断層の動きや地殻変動と関連づけながら考えています。断層の動きは,地震を引き起こしますので,地震災害に直結します。自然災害は地域的な偏りがあり,その場所のもつ地形などの特性に依存します。人間が生活している地表面をどう利用しているか,災害にどのように手を尽くしていくかなど,環境としての地形についても考えていきたいと思っています。

 先日,学生を連れて四国の中央構造線に断層地形を観察しに出かけました。断層崖が単なる田んぼの畔だったのに衝撃を受けた学生が少なくなかったようです。生活者のいる地形や,遠くにある特別な対象としてではなく,身近にある地形や地域にも分析的な目を向けられる,科学する心を学生には養ってほしいと思っています。そのために,学問研究のおもしろさを伝える努力をしたいと思っています。一人でも多く,大学院生が入学してくれるようにと願いながら。
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【2.文学研究科(文学部)ニュース】

○「2008 リテラ ニューイヤーコンサート」開催のお知らせ

 文学研究科主催の「リテラ コンサート」も今年度で4回目の開催となります。今回も広島交響楽団の皆様のご協力により、フルート四重奏(フルート・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)、をお楽しみいただきます。
ゲストとして、広島を中心に活動しているマリンバ&パーカッションアンサンブル「BIG MARIMBA」に、演奏していただきます。
どうぞ、お楽しみに!

【日時】平成20年1月26日(土) 14時開演(13時30分開場)
【会場】広島大学サタケメモリアルホール(広島大学東広島キャンパス)

☆入場無料☆

【プログラム】
1部:「BIG MARIMBA」ステージ
2部:広島交響楽団フルート四重奏
 エルガー:愛の挨拶
 バッハ:管弦楽組曲第2番〜ポロネーズ
 モンティ:チャルダッシュ
 プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」〜誰も寝てはならぬ
 サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」〜白鳥
 モーツァルト:フルート四重奏曲 第2番 ト長調 K.285a
3部:広島交響楽団フルート四重奏
 チャーチル:「白雪姫」〜いつか王子様が
 デヴィッド&ハフマン:「シンデレラ」〜ビビディ・バビディ・ブー
 アンダーソン:ブルー・タンゴ
 久石譲:「天空の城ラピュタ」〜君を乗せて
 新井満:千の風になって
 弾厚作:君といつまでも
 弦哲也:天城越え
 アダムソン:80日間世界一周

【お問い合わせ】
  広島大学大学院文学研究科部局長支援グループ
     Tel 082-424-6620 / Fax 082-424-0315
     (〒739-8522 東広島市鏡山一丁目2番3号)

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【3.広報・社会連携委員会より 岡橋 秀典】

 No.18、19、20の3号にわたって、新たに着任された先生6人に、自己紹介を兼ねたコラムを執筆いただきました。いかがでしたでしょうか。
学部内の皆さんにも楽しく読んで頂けたのではないかと思っています。地味ではありますが本委員会にしかできない企画になったのではないかと秘かに自負しています。 今号でも、「西条は暖かい」という題目に意表をつかれ、インドネシア大地震という大変な事態に虚をつかれて、一気に読んでしまいました。

 9月から11月にかけ、本委員会は重要企画を多く抱え、忙しい毎日を過ごしました。本研究科のチャレンジ新企画である「日本文化と造形芸術」展は、準備段階での心配をよそに、作家の皆さんの献身的なご協力を得て、十分成功と言える成果をあげることができました。また、大学祭の「世界とふれあい/語学カフェ」も留学生の皆さんの協力で、多くの来場者に楽しんでもらえたと思います。目から鱗の話が多く、委員一同も大いに楽しませて頂きました。これらの行事は、文学研究科の本来業務からはややはみ出した内容であると言えますが、将来の文学研究科像につながる要素をもっていたと思います。

 来年1月末には、文学研究科主催で恒例のリテラコンサートを開催します。昨年とはひと味違った構成になっていますので、ぜひ足をお運び下さい。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  富永一登
編集長:広報・社会連携委員長  岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会

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