メールマガジン No.24(2008年5月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.24(2008年5月号)
2008/5/26 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.文学研究科長からのご挨拶 ( 文学研究科長 富永 一登)
2.今月のコラム
中国訪問リポート(総合人間学講座教授 植村泰夫、応用倫理・古典学講座教授 松井富美男)
3.『人文学へのいざない』刊行について
4. 文学研究科(文学部)ニュース
5.広報・社会連携委員会より

------------------------------------------------------------------

【1.文学研究科長からのご挨拶】

広島大学大学院文学研究科長
広島大学文学部長
富 永 一 登

 広島大学文学部・大学院文学研究科では、十分な学識と個性豊かな人間性を身につけた人材を育成することを目指して、日々教育研究活動を行っています。
 文学部・文学研究科の学問である人文学は、思想や生活や言葉を通して文化の有り様を考え、それらを創造する過去から現在に至る人間の心に迫るものです。その人間の心は、もちろん一つではなく個性豊かですから、より多くの人々と触れあうことは、人文学にとってとても大切なことだと思います。
そこで、私たちは「21世紀の人文学」という公開講座などを通して、広く学外の人たちと触れあう機会を設けてきました。私たちが研究している人間の叡智を、より多くの人たちと共有し、現在あるいは未来に活かしていくことを願ってのことです。
 「リテラ友の会」は、私たちと皆様方との連携を双方向的に行える"場"であり、文学部・文学研究科と社会とのつながりをより一層緊密にしていくパイプとして貴重な存在です。皆様からの声と私たちの声とが響き合うようになれば、人文学の将来にとって大きな力になります。
 皆様とともに、大学や社会になくてはならない人文学研究の存在感をアピールできるようにしていきたいと思っています。遠慮のないご意見をお寄せいただければ幸いです。

-----------------------------------------------------------------

【2.今月のコラム】中国訪問リポート  
2007年度中国訪問旅行暫定報告書
総合人間学講座教授 植村 泰夫(東洋史学)

3月24日(月)
 総合人間学講座メンバー7名(田中久男、水田英実、植村泰夫、河西英通、佐藤利行、高永茂、竹広文明)と市来津由彦(中国文学思想文化学講座)、妹尾好信(表象文化学講座)の9名は、広島空港を9時00分発MU294便で出発し、上海浦東空港に9時50分(現地時間:日本との時差は−1時間。以下、同じ)に到着した。直ちにタクシー2台に分乗して、国内線空港である虹橋空港へ向かう。おなじみの大渋滞に巻き込まれて、長沙行き飛行機出発(MU5361便:12時50分)に辛うじて間に合う時刻に到着する。長沙に14時30分着。迎えに来てくれていた湖南大学の車で直ちに宿泊先の麓山賓館に向かう。休息後、18時から夕食を兼ねて湖南大学外国語学院スタッフと懇談。

3月25日(火)
 8時30分に麓山賓館出発。9時に湖南大学到着。大学本部を表敬訪問し、章競副校長(=副学長)他と会談。次に外国語学院を訪問し、日本語スタッフ他と会談。10時30分から岳麓書院見学。その後、昼食を兼ねて副校長ほか大学スタッフと懇談。14時から17時まで講演(佐藤「漢字・漢語・漢文」、妹尾「「源氏物語千年紀」ということ」)と、広島大学及び広島大学付属図書館の紹介(佐藤、田中)を行う。聴衆は湖南大学以外の教員、学生も含めて延べ200名程度。講演終了後、質疑応答が行われた。18時から夕食を兼ねて湖南大学外国語学院スタッフと懇談。

3月26日(水)
  佐藤はMU5358便、MU293便で上海を経由して帰国。残りのメンバーは8時30分に麓山賓館出発。9時から外国語学院で講演。午前中は市来「広島大学文学研究科中国思想文化学分野で何が学べるか」、竹広「日本の伝統技術たらら製鉄の歴史−文学研究科考古学分野の研究活動の一コマから−」、高永「日本語に入ってきた外来語はどのように発音されるか」、昼食を挟んで午後は河西「比較日本文化学は何をめざすか」、植村「1960年代初めにおけるインドネシア華人の同化問題」、水田「「哲学」と「思想文化」の間」。講演終了後、水田が広島大学文学研究科の紹介を行う。その後、質疑応答。予定の時間を超えて18時過ぎまで討論が続いた。持参した『文学研究科紹介パンフレット』、『2007年度合宿授業報告書』、『文学研究科募集要項』、『文学研究科紀要』、HISHなどは全て捌けてしまった。終了後、夕食を兼ねて日本語学スタッフと懇談。

3月27日(木)
 湖南大学が用意してくれたスケジュールに沿って、毛沢東の生家、劉少奇の生家ほかを見学。夕方に長沙に戻り、湖南大学スタッフと夕食を兼ねて懇談。

3月28日(金)
 市来はMU5358便、MU293便で上海を経由して帰国。残りのメンバーは湖南省博物館を見学。その後、昼食を兼ねて湖南大学外国語学院スタッフと懇談。15時30分発のMU5362便で上海へ移動(17時着)。上海師範大学の迎えの車で同大学ゲストハウスに入る。18時過ぎから同大学日本語学スタッフと夕食を兼ねて懇談。

3月29日(土)
 9時から上海師範大学外国語学院スタッフと懇談。その後、同大学の準備してくれたスケジュールに沿って上海市内見学。17時35分浦東空港発MU293便で20時15分広島空港着。

○倫理学分野教員の中国訪問概要報告
応用倫理・古典学講座教授 松井 富美男(倫理学)

 倫理学分野の教員(近藤良樹・越智貢・松井富美男・衛藤吉則)は、研究科長裁量経費を得て、去る2008年3月24日から3月30日(松井は4月2日)まで中国重慶市の長江師範学院及び重慶大学で「日本文化と倫理」と題する統一講演や講義を行うと共に、部局間協定等の話し合いをしてきました。

 重慶市は中国南西部に位置する政治・経済・文化の中心都市で、人口3,000万を擁する4番目の中央政府直轄市です。日中戦争時に国民政府が重慶市に遷都したので旧日本軍から空爆され、また数年前にはサッカーの試合中に反日感情が表面化したところでもあります。近年日本企業の重慶市進出に伴い、日本語への関心がこの地域では急速に高まっており、私たちは熱烈に歓迎されました。 

 卒業式翌日の3月24日早朝広島空港を出発し、上海経由で夕方重慶空港に到着。空港に着くや長江師範学院に直行。そこで広島大学客員研究員だった王官成教授ならびに外事所長の李鵬程氏に迎えられる。その夜は長旅の疲れから全員熟睡。

 25日の午前中は李所長の案内で長江師範学院キャンパス(附属博物館、附属図書館、烏江研究所など)を見学。午後からは外国語系文化祭の一行事である日本語スピーチコンテストに審査員として参加。夕方19:00から20:30まで近藤、越智、衛藤の3人が別々の会場で講演。各演題は「浦島太郎の時間感覚、桃源郷の時代感覚」(近藤)、「インターネット依存の問題」(越智)、「日本的思考のパラダイム」(衛藤)。聴衆は学生や教員などで、各会場100人ぐらい、延べ300人程度の参加。講演終了後は戴偉院長主催の晩餐会に出席。

 26日はフーリン郊外の世界遺産芙蓉洞見学。27日の午前中松井は50人程度の学生及び教員を前に公開授業を行う。その間、近藤・越智・衛藤の3人はフーリン博物館見学。午後重慶大学へ移動。楊紅日本語学科長に会い、重慶大学キャンパスや三峡博物館などを見学。夕方は余渭深外国語学部長主催の晩餐会に出席。

 28日は重慶郊外の世界遺産大足見学。29日は松井(9:30-11:00)、衛藤(11:00-12:30)、近藤・越智(2会場14:30-16:00)の順で講演。各演題は、「日本文化における形式美と倫理」(松井)、「自由主義の教育と「日本的思考」」(衛藤)、「浦島太郎と桃源郷の時間感覚−天国と地獄は、永遠である−」、「Information Technology and Ethics」(越智)。越智は英語で、他は日本語でスピーチをする。聴衆は重慶大学の学生や教員の他に四川外国語大学の大学院生なども含めて延べ700人程度。なお、その間午後2:00から重慶大学学長補佐と会見。今回の訪問を機に相互交流の抱負を語り合う。

 30日に近藤、越智、衛藤の3人は先に帰国。松井は部局間協定の話し合いのために重慶に残る。4月1日まで長江師範学院の戴院長、王副書記、李所長、趙外国語学科長らと個別会談。ほぼ合意の方向で決着。またその間、日本語教員と会食しながら日本留学の相談に応じる。4月2日夜松井帰国。

 今回の中国訪問のニュースは、長江師範学院、重慶大学の各大学のトップページに速報で伝えられただけでなく、新華社のHPを通じても全国的に報じられました。
なお、長江師範学院とは目下部局間協定文書を作成中です。また私たちの中国訪問のフォトは倫理学教室のHPでも紹介していますので、こちらもご覧ください。

-----------------------------------------------------------------

【3.『人文学へのいざない』刊行について】
広島大学大学院文学研究科長
広島大学文学部長
富 永 一 登

 広島大学文学部・文学研究科では、人間学の復興を掲げて、日々新しい知の探求を行い、広島大学文学部・大学院文学研究科では、十分な学識を身につけ、個性あふれる豊かな人間性を培い、人間が築き上げてきた過去の叡智を確実に継承するとともに、現在あるいは未来に活かしていく人文学の創造的発展を目指しています。「温故知新」です。
人間が築き上げてきた過去の叡智を確実に継承するとともに、現在あるいは未来に活かしていく人文学の創造的発展を目指しています。「温故知新」です。

 ただ、近年の知的競争の中にあって、人文学への関心は低下傾向にあります。法人化後の大学では、すべての学問において、競争力・実践力が問われ、目に見える形でその有用性が求められるようになっています。ところが、人文学の大半は、目に見えない心の有り様を追究し、経済性や効率化とは別次元で知的能力を発揮するものです。
 かつて人文学は、全ての学問の基礎として重要視されていました。科学技術よりも文学が重んじられていたのです。しかし今は、現実の諸問題に対して即効性をもたない学問として、社会の片隅に追いやられてしまった感があります。これには、人文学研究者自身にも問題があったと言えなくもありません。細分化された専門性にこだわるあまり、視野が狭くなり、「無用の用」の力を示すことを忘れてしまっていたのではないでしょうか。

 そこで、今、人文学研究の最前線に立つ教員が、人文学への情熱を募らせた原点を自ら思い起こし、それを広く社会に発信して、人文学諸分野への関心を高めるために、『人文学へのいざない』を刊行しました。教員自身が互いの学問への理解を深め、より多角的な視点で人文学を総合的に考える契機にしようという思いも込めてです。

 人間の思考は、時代を超えて存在し続けています。現在の世界は、人間が長年の歴史を経て構築してきたものです。その人間は何を考え、どのような生活を営み、言葉によって何をどう表現してきたのか。「人間とは何か」を探求し続けるのが人文学です。

 現代社会の中で、自分はどのように生きていこうとするのか。国際的な異文化交流の中で日本文化はどのような位置を占めているのか。複雑な人間関係の中で自己をどう表現するのか。自然と人間の共存をどのようにはかるのか。本書の中に、そのような思いを抱いたことのある皆さんの琴線に触れるものがあれば、これにまさる喜びはありません。

 本書を通して、皆様との交流がより深まれば幸いです。引き続き、ご支援ご協力をよろしくお願いいたします。

『人文学へのいざない』(広島大学大学院文学研究科教務委員会編)
2008年3月3日発行、 溪水社、800円
本書は書店で販売されています。直接購入を希望される場合は、TEL.082-246-7909(溪水社)に、お問い合わせ願います。

-----------------------------------------------------------------

【4. 文学研究科(文学部)ニュース】

○文学研究科サテライト館
 広島大学の標本資料や研究成果を紹介する総合博物館サテライトの第3弾として、文学研究科のサテライト館がオープンしました。
 第1展示スペース(1Fロビー)では、【コレクション企画展示】【角筆常設展示】のほか、本研究科構成員の出版物を展示した【楓文庫】、実物大の【ハムラビ法典】を公開しています。
 第2展示スペース(2F)では、国内及びイランの【考古学出土遺物コレクション】を展示し、調査・研究の成果を解説パネルで紹介しています。
 中庭には、【移設古墳】や文学に関わる植物を集めた【文学の小庭】もあります。

 広島大学角筆資料研究室は、広島大学総合博物館のサテライト施設として、随時、資料の公開展示、研究施設の見学が可能です。

詳しくは、広島大学総合博物館HPをご覧下さい。

------------------------------------------------------------------

【5.広報・社会連携委員会より(広報・社会連携委員会委員長 河西英通)】

新委員長からのご挨拶

 この4月から、広報・社会連携委員会委員長に就きました河西です。一言ごあいさつ申し上げます。文学研究科への着任が昨年4月ですから、私自身が広報の対象であり、「右も左も」どころか、上も下も、前も後もわからない状態ですが、前任の岡橋秀典先生が敷かれたレールに乗って、広報業務・社会連携業務を進めて参る所存です。なによりも、(これも岡橋先生のスタイルですが)「活発な議論」「楽しい議論」をめざしたいと思っております。試行錯誤、右往左往の連続になるかもしれませんが、委員の皆さんと力を合わせて進めて参りますので、なにとぞよろしくお願いいたします。
 なお、いろいろと隠し玉(隠したままで終わるかもしれませんが)を準備していますが、皆さまからもアイデアを頂戴したいと思っております。この点もよろしくお願いいたします。

////////////////////////////

リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  富永一登
編集長:広報・社会連携委員長  河西英通
発行:広報・社会連携委員会

広島大学大学院文学研究科・文学部に関するご意見・ご要望、
メールマガジンへのご意見、配信中止・配信先変更についてのご連絡は
下記にお願いいたします。
広島大学大学院文学研究科 情報企画室
 電話 (082)424−4395
 FAX(082)424−0315
 電子メール bunkoho@hiroshima-u.ac.jp

バック・ナンバーはこちらでご覧いただくことができます。

////////////////////////////

 

 


up