メールマガジン No.34(2009年11月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.34(2009年11月号)
200/11/26 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.新任教員紹介
2.第3回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあう語学カフェ」リポート
3.文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より

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【1.新任教員紹介】
 10月に着任された教員のコラムを自己紹介を兼ねて、掲載いたします。

○欧米文学語学・言語学講座 教授 小林英起子
ドイツ文学と私の旅 〜卒論に選んだ喜劇回想〜

 10月1日付で赴任しました小林英起子と申します。
専門は、ドイツ18世紀啓蒙喜劇と演劇論、演劇史、近代ドイツ文学です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 広島大学の前は、新潟大学で教えていましたが、関西の大阪産業大学、奈良女子大学、甲南大学、他に中学校高等学校でも教えていたことがあります。
 広島大学はキャンパスが大きくて、文学部棟近くの煙突オブジェのスケールには圧倒される思いです。気候が良くてゆったりしたキャンパスを歩いていると、研究棟が次々に姿を現し、学問のぶどう畑にいるかのようです。

 私は大学受験の頃、言語に興味があって、外国語を実践的に学ぶ外国語学部に入学しました。ですが、ドイツ語や言語学を勉強するうちに、教職やドイツ文学の世界にひかれ、卒論準備をするうちに文学研究の面白さを知り、もっと研究してみたくなりました。大学3年の冬休み前に、ゼミの先生から何冊か本を貸していただき、レッシング作『ミンナ・フォン・バルンヘルム』が気に入って、それを卒論の対象にしました。 辞書と首引きでレクラム文庫を何とか1冊読み、録音状態もよくない、ドイツ人俳優による上演のテープを想像力を働かせながら何度も聞いてみました。卒論はドイツ語と日本語と2部提出する決まりでしたので、手動タイプライターを何日も打っていたことを思い出します。
 この卒論がきっかけとなり、東京でさらに勉強をし、ドイツのケルンで専門の先生について研究することができ、現在の研究テーマに繋がっています。私はドイツ語を通して旅を続け、いろいろな人達と出会うことができました。

 卒論で読んだ『ミンナ・フォン・バルンヘルム』には後日談があります。
留学したケルン大学図書館の休息コーナーに、演劇カレンダーが貼ってあり、この喜劇の上演予定が偶然目に入りました。喜び勇んでデュッセルドルフのシャウシュピールハウス劇場へ観に行きました。ストーリーも覚えていましたが、クライマックスで女優さんが話す台詞に合わせて、私は主人公の台詞を一緒に口ずさんでいました。
大学4年の頃、主人公になり切って必死に朗読していた台詞のハイライトが17年経って、ドイツの劇場で自ずと口から出ていたのです。昔の自分とその時の自分が並んで観劇しているかのような不思議な懐かしい想いにとらわれました。
 レッシングの演劇と演劇論は、ドイツ文学語学専攻の演習で講義しています。ドイツ語や文学に興味を持った学生さんは、気軽に私の研究室を訪ねてきてください。

○欧米文学語学・言語学講座 准教授 川島 健
 2009年10月から広島大学で働くことになりました。
専門は20世のイギリス、アイルランド文学、特にサミュエル・ベケットというとても難解な作家の研究をしてきました。このように紹介すると「読書が好きなんですねえ」などとよくいわれますが、こそばゆい気持ちです。何故なら僕の本への動機はとても不純なものだったからです。

 高校時代、それまでは漫画や雑誌などで埋まっていた本棚をもう少し「カッコよく」したいと思ったことが発端です。本屋に行き「カッコいい」本はないか一生懸命に探した結果、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの『アンチ・オイディプス』という本を発見しました。
厚さ4センチはあろうかという分厚い装丁、光沢を帯び、緑と青を使った鮮やかな色遣い、そして意味不明なタイトルという3拍子揃った本に僕の虚栄心は疼きました。当時の1か月の小遣い以上の値をはる高価な本でしたが、本棚に「カッコがつく」ならとためらいもなく購入しました。

 本棚に収まった『アンチ・オイディプス』。
確かにその一角は「クール」に見えました。とりあえずはと手にとって読んでみることにしました。内容なんかひとつもわかりませんが、ただ圧倒されたのは意味不明のカタカナの羅列です。
「フロイト」、「マルクス」、「アルトー」、「ベケット」。それから「超コード化」に「脱コード化」。
なんだこれは...とんでもないものを買ってしまった気がしました。それ以後『アンチ・オイディプス』の装丁は怒りを帯びているように見え始めました。なるべく目を合わせぬようにしたものです。

 その後、本を買うたびに『アンチ・オイディプス』の隣に置いて、ご機嫌をとったりして、いつの間にか部屋中が本で埋まってしまいました。今でも読むふりをしたり、仲のよさそうな本を周りに配置して気をなだめたりしています。でもそれは時に逆効果で、互いに喧嘩し始める本も出てきました。いまでは何冊もの本が僕の研究室で怒っています。
正直にいうと読書はあまり好きではありません。でも怒られるのはたまらんと思いながら勉強をしてきました。いつかはこの本たちにほめられるような研究をしたいと思っています。

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【2.第3回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあう語学カフェ」リポート】
 第3回広島大学ホームカミングデーでは、昨年と同様「世界とふれあう / 語学カフェ」を開催しました。
今年は、広島文理科大学創立80年の記念の年。文学研究科・理学研究科共催企画として、理学研究科からも韓国の留学生に担当していただきました。

 生活習慣や観光スポット、また、あいさつや旅行の時に使う簡単な日常会話。これらをジェスチャーをまじえながら、一生懸命紹介していただきました。お越しいただいた皆さんも大変熱心で、毎年来てくださる方−リピーターもいらっしゃいました。
 講師をしていただいた留学生の皆さんに感想を寄せていただきましたので、紹介いたします。

◇Huynh Hien Trong(フィン ヒエン トロン)さん【ベトナム】

 日本史専攻、フインヒエントロンです。大学院博士課程前期1年生です。
今年2009年、広島大学創立60周年記念および広島文理科大学80年記念ということで、世界とふれあう語学カフェで母国の文化を紹介させていただき、たいへん感謝しております。今回含めて2度目の母国の文化を日本人のみなさんに紹介することになりました。2度目は多少緊張感がなくなりましたが、それでも言い忘れたこともありました(笑い)。
 私は、ベトナム伝統衣装Aodaiアオザイの従来とその歴史について紹介をいたしました。いうまでもなく、東アジアの国々と東南アジアの国々の社会、宗教、思想などの面における文化は中国から影響を受けました。ベトナムも例外ではありません。
見た目でチャイナドレスという人もいるでしょうが、ベトナム人独自の伝統として世界にその姿は広がっていっています。
 今回は、中国と韓国の文化についてもたくさん勉強になったと思います。
こういった文化交流は私たち留学生に関わらず日本人にも他国の文化への理解度を高める機会だと思います。日本人学生も日本の文化を紹介していただければと思います。そうすると、日常での生活に役立つことになるかもしれません。もっと日本のことを知りたいのは留学生の関心だと思います。来年も母国の独特性をもつ文化を紹介するつもりです。楽しみにしています。

◇金 聖憲(キム ソンホン)さん【韓国】

 今回語学カフェというすばらしい企画に参加させていただいて、非常にいい経験ができたと思います。
 最初はどんなことを話せばいいんだろうと悩んでいて、やらなければよかったとも思っていました。それでもせっかくだからやろうと思って資料をつくっていると、自分でも自分の国のことがわかってないような気もしたので、発表のときが少し心配でした。
 しかし、終わってから考えてみると、自らも国のことを知るいい機会だったのではないかと思います。また、そのときに参加されたベトナムや中国のほかの方々からもいい話を聞くことができてとても満足しています。
 次はもっと多くの国から参加して、まだ知らない新しい話もたくさん聞けたらいいと思います。

◇左 曼麗(サ マンレイ)さん【中国・湖南省】

 比較日本文化学講座の左曼麗と申します。
今回の語学カフェで発表させていただいて、本当にうれしかったです。
私は今年の10月に広島大学に留学し始めたので、日本語の能力はまだまだ足りなくて、今回発表するとき、皆さんは辛抱強く聞いていただいて、本当に感謝しています。
 今回は自分の国、故郷・湖南省についての紹介しました。
私は発表を準備することで、もっと自分の故郷が好きになりました。それだけではなく、前の担当者の発表を聞いて、ベトナムと韓国、この二つの国の国情のことも勉強になりました。
このような行われることによって、異なる国に住んでいる人々は親しくなれるではないかと思います。これからも異文化のコミュニケーションに微力を尽くしたいと思っています。

◇梅 梅(バイ バイ)さん【中国・湖南省】

 今回の大学祭「語学カフェ」に参加できて、本当に光栄に感じております。この「語学カフェ」において、私は担当の留学生として、自分の国についてのことを紹介することができて、本当に嬉しく思っておりました。
 それから、様々な国の担当者の話を聞いて、その有名で面白い文化と風習をよく知ることができました。それは「語学カフェ」のおかげです。そのいい雰囲気と楽しさは私に非常に深い印象を残しておりました。また、機会があったら、ぜひ参加したいと思っております。

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【3. 文学研究科(文学部)ニュース】

○広島大学大学院文学研究科・文学部主催公開講座
リテラ「21世紀の人文学」講座2009 −広島から多喜二を読む−

【講師】友澤 和夫(文学研究科地表圏システム学講座教授)
「もしや蟹工船、さらば蟹工船−蟹工船ブームと日本経済の未来−」  

【講師】瀬崎 圭二(日本・中国文学語学講座准教授)
「<身体が殺されている>ということ」

【日時】2009年11月28日(土)13時30分〜16時30分
【場所】広島市まちづくり交流プラザ研修室C(〒730-0036 広島市中区袋町6番36号)
【受講料】無料
【受講対象】高校生・一般 定員60名(先着順受付)

■申込方法
電話・ファックス・Eメールで『氏名・年齢・電話番号』をご連絡下さい。

■問い合せ先
広島大学大学院文学研究科 運営支援室グループ
TEL:082-424-6606  
FAX:082-424-0315
E-mail: bun-soumu☆office.hiroshima-u.ac.jp
    (☆を@に置き換えてください)

◇◇申込人数にまだ余裕があります。当日受付でも受講できます。◇◇

○「瀬戸内海の過去・現在・未来シンポジウム
 -新しい希望にあふれた瀬戸内海世界の創造に向けて- 」

【日時】 2009年12月12日(土) 13:00〜16:45
【会場】 広島大学大学院文学研究科・文学部1階  B104講義室
■内容
1.パネラー報告

片岡智氏 (福山市歴史資料室) 「近世瀬戸内の社会空間—信頼と競争の交差点—」         
印南敏秀氏 (愛知大学)  「瀬戸内の文化—里海—」
フンク・カロリン氏 (広島大学) 「瀬戸内海を楽しむ」

2.特別スピーチ
秋田明大氏 (呉市) 「 瀬戸内に生きる 」

3.パネル・ディスカッション
片岡智氏、印南敏秀氏、フンク・カロリン氏
八幡浩二氏(尾道学研究会幹事)、長谷川尚道氏(NPO法人かみじまの風理事)

■主催
広島大学地域貢献研究
「民俗学者宮本常一の著書・蔵書活用法プロジェクト」
周防大島文化交流センター

■共催
広島大学大学院文学研究科比較日本文化学プロジェクト研究センター

■お問い合せ
広島大学大学院文学研究科 河西研究室
〒739-8522 東広島市鏡山1-2-3
TEL:082−424−6633
E-mail: kawanish☆hiroshima-u.ac.jp 
(☆を@に書き換えてください)

☆参加申込不要・入場無料

○「2010リテラ ウィンターコンサート」
広島大学大学院文学研究科主催 リテラ ウィンターコンサート 2010 WINTER CONCERT −広島交響楽団木管五重奏−
【日時】2010年2月20日(土)14:00開演(13:30開場)
【会場】広島大学サタケメモリアルホール(広島大学東広島キャンパス内)
【入場無料】
第6回目となる今年度は、昨年と同様、フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットによる木管五重奏をお楽しみいただきます。第1部では、広島大学内で活動する「パンフルート同好会」にも演奏していただく予定です。どうぞ、お楽しみに!
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【4.広報・社会連携委員会より  河西 英通】

 第3回ホームカミングデーに合わせて「よみがえる青春 写真展」を行った。
昨年に次ぐ2回目だが、今年は「広島文理科大学創立80年追懐」ということで、理学研究科・理学部との共催となり、あちらからも貴重な写真を提供していただいた。文学研究科・文学部からはすべての教室からというわけではなかったが、戦前の「学宝」級の写真から、キャンパス移転時の写真まで、さまざまな青春が展示され、往時がよみがえった。

 展示しきれなかった写真も数多い。役得で楽しませてもらったが、つくづく思ったのは、かつての学生の顔の「古さ」である。やはり、昔の若者だ。いまどきこんな顔をしている広大生はいない。移転直前の東千田の若者たちの顔ももはや古い。たった20年や30年でこうも若者の顔が変わるものだろうか。そんな思いで遠い日の青春像に思いを寄せた。

 しかし、「新しさ」もあった。現在、文学研究科・文学部に在職している幾人かの先生方の若き日の顔の新鮮さには驚いた。若い!アノ先生にもこんな青々とした日々があったのか・・・。考えてみれば当たり前すぎる話なのだが、あらためて驚いてしまった。「○○先生って、イケメンだったのネ」との声も聞かれたことも付け加えておく。

 古びたアルバムのなかの「古さ」と「新しさ」。ひとが老いるとは、若者が人生の達人になるとは、いったいどういうことなのだろうか。東千田の青春たちが歩んだ道を深い想いで追懐しえた秋の一日であった。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  富永一登
編集長:広報・社会連携委員長  河西英通
発行:広報・社会連携委員会

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