メールマガジン No.48(2012年3月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.48(2012年3月号)
2012/3/19 広島大学大学院文学研究科・文学部
    
□□目次□□
1.平成23年度優秀卒業論文発表会
2.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ
3.リテラアワーレポート:就活性のためのソーシャルメディア入門
4.「2012リテラウィンターコンサート」レポート
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より
      
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【1.平成23年度優秀卒業論文発表会 】
  
 2月17日(金)文学部大講義室(リテラ)におきまして、「平成23年度優秀卒業論文発表会」が開催されました。今回のメールマガジンでは、その中から2人の卒業論文の要旨を紹介いたします。また、指導教員からも一言添えていただきました。
  
○'Salome and Women the 1890s-1920s: Oscar Wilde and the Female Dancers'
欧米文学語学・言語学コース 英米文学語学専攻  波多野うらら
    
 私は、'Salome and Women the 1890s-1920s: Oscar Wilde and the FemaleDancers'と題して、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を、20世紀初頭に活躍する女性ダンサーたちとの関係性から考察しました。
 イギリスで当時上演が禁止されたことがきっかけとなり、『サロメ』はキャバレーやミュージックホールといったポピュラーカルチャーの場で、20世紀初頭に登場した初期女性モダンダンサーたちによって頻繁に演じられるようになります。
  
 当時誕生したモダンダンスは、高度なテクニックを持たない彼女たちにとって、新たな自己表現の可能性を秘めた芸術でした。彼女たちは揃ってワイルドの描いたナルシストなサロメに自らを投影し、ダンスによって抑圧された感情や女性のセクシャリティーを表現しました。女性の社会進出がまだまだ困難であった時代に、彼女たちはサロメを通して社会的独立や自己表現の権利を獲得したと言えます。サロメが男性による芸術から女性を主体とした社会現象へと発展していく過程を、サロメダンサーの活躍に見ることができます。
  
 長編の論文に取り組むのは今回が初めてで、なかなか思うように筆が進まない時期もありましたが、常に的確な指導をして下さった指導教員の川島先生のおかげで無事書き上げることができました。
  
 今年の秋からイギリスの大学院に進み美術史の勉強をする予定ですが、卒論の執筆経験が今後の成長の糧となることを確信しています。
  
[指導教員のコメント:川島 健准教授]
 波多野うららさんの卒論は作品だけでなく、それが巻き起こした様々な社会現象をも分析の対象としています。したがってその論考は完結したものではなく、様々な可能性に開かれています。例えば、波多野さんはワイルドの『サロメ』が女性ダンサーのアイデンティティ確立に寄与したことを論じました。そもそも戯曲の登場人物に自己を投影するような態度は近代的なものであり、『サロメ』に霊感を得た女性たちをその同一化の系譜に位置づけることができます。また女性ダンサーたちを参政権の取得を目指した第一波フェミニストたちと比較しても面白いでしょう。波多野さんは卒論で金脈を掘り当てたところです。これからも粘り強く研究を続けてくれるものと期待しています。
  
○有川浩研究 ─ “大人ライトノベル”が秘める可能性
日本・中国文化学コース 日本文学語学専攻   長久 里彩
  
 『図書館戦争』、『阪急電車』、『フリーター、家を買う。』の映像化が記憶に新しい、人気作家有川浩。その有川が、「ライトノベル」出身の作家だということはご存知でしょうか。一般的に、「ライトノベル」は、「マンガ・アニメ風のイラストが表紙を飾る若年層向けのエンターテインメント小説」だと認識されています。書店で平積みされている色鮮やかなパーケージを目にし、自分とは関係のないジャンルだと思ったことがある方も多いかもしれません。
   
 有川は、自身の作品を〝大人ライトノベル〟であると説明します。更に、〝大人ライトノベル〟は「ライトノベル」とも「一般文芸(純文学・大衆小説等のライトノベル以外の小説全般を指す)とも異なるものであるとも述べます。〝大人ライトノベル〟は、本当に「ライトノベル」とは別のものになっているのでしょうか。「ライトノベル」ではないのならば、「一般文芸」として扱えるのではないでしょうか。これらの疑問を整理するために、本論文では、〝大人ライトノベル〟と呼称される有川の作品が、どのような特徴や性質を持っているのかを、いくつかの作品分析を通して考察しました。
  
 現在「ライトノベル」についてどのような議論が為されているのかをまとめた上で、作品分析に取りかかりました。その結果、有川は、「ライトノベル」的な手法にしがみつくこともなく、「一般文芸」に拘ることもなく、作品の中で様々な手法や仕掛けを試しているということが分かったのです。〝大人ライトノベル〟は、「ライトノベル」にも「一般文芸」にも(どちらも手法なるものが確立され、成熟したが故に)なくなりかけていた、「さまざまな手法を試す場」を再提出していると言えます。今回の論文では、小説の新たな可能性を生み出す「可能性」そのものを下準備した点に、〝大人ライトノベル〟の価値があるのだと結論付けました。
   
[指導教員のコメント:有元 伸子教授]
 「図書館戦争」や「阪急電車」が映画化・アニメ化されるなど、有川浩は現在絶大な人気をほこる女性作家である。長久里彩さんは、卒業論文において、まずは文献を渉猟してライトノベルの性質をあぶり出し、その上で〈大人ライトノベル〉というキーワードによって、有川浩を今日の文芸界のなかに鮮やかに位置づけた。卒論後半では具体的なテクスト読解を行い、有川作品がライトノベル的手法をとりつつ、検閲への批判やジェンダー問題などを織りまぜた社会派小説としても読めることを丁寧に分析した。今回の発表会では、パワーポイントで表紙画の変遷などを明示しながら卒論前半の理論編を説明し、聞き手に強いインパクトを与えていた。卒業後は本学の大学院に進学する。今後も優れた情報収集・分析力や高い表現能力を生かし、研鑽を積んでいただきたい。
  
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【2.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ 】
   
○インドネシア史研究とともに 総合人間学講座教授 植村 泰夫            大学3回生の時にインドネシア史の勉強を始めてから、40年以上たちました。当時も今も、この分野は日本の東洋史研究では極めてマイナーで、それで職を得て現在まで勤められたのはたいへん幸運でした。
  
 あの頃は手探り状態でしたが、新分野を開拓しようという意欲には燃えており、手に入る限りの国内所蔵の文献を収集し、必要な外国語は必死に独習しました。1977年12月、東南アジア史学会大会で初めて学会報告した時の緊張感は、未だに忘れられません。
  
 83年に広大へ赴任し、インドネシア実地調査に2回同行し、インドネシア史の授業を持つようになって、ようやく自分の研究の位置が少し見えてきました。そして90~91年のオランダ滞在で集めた文書を史料に95年に学位論文を提出し、やっと一人前のインドネシア史研究者になった気がします。総合人間学、比較日本文化学の授業では、こうしたインドネシア史研究の経験と蓄積を生かすよう努めてきました。
  
 いま退職に当たり考えてみると、やりたいことはまだまだたくさんあり、自分のペースで少しずつ研究を進めたいと思っています。末筆ながら、皆さまのご健康とご発展をお祈りいたします。ありがとうございました。  
  
○定年退職にあたって、文学研究科のみなさまへ 歴史文化学講座教授 曽田 三郎  定年退職にあたって、文学研究科の玄関近くに、著書を展示していただきました。
 単著、編著、形態は異なっていますが、これまで私は、できるだけ多くの著書を、いろいろな出版社から刊行することに努力してきました。大学での学問には、分野によって内容や意義に違いがあるように、成果の表し方にも相違があるように思います。
  
 執筆者の数、使用する言語、分量等、同じ論文といっても、人文学系と理工学系・医学系とでは差異があります。雑誌論文と著書という面でも、考えてみる余地があるのではないでしょうか。これらは両方ともに重要なのですが、人文学系の学問の場合は、とくに後者での研究成果の表し方に特色があるように思います。それは、人文学系の学問と社会を取り結ぶものの一つが本であると考えるからです。人文学系の学問の魅力を伝えるためにも、著書の出版は大切なことです。
  
 書店の本棚で、先生方の研究成果と出会えることを期待しています。
  
○退職のご挨拶に代えて 応用哲学・古典学講座教授 野間 文史
 高校3年間は下宿生活でした。下宿先は父親の仕事の関係で蒲鉾屋さんの二階。蒲鉾の製造は朝が早いので、職人さんとともに起きて、早朝に受験勉強をしていました。いまだに朝型です。さてその蒲鉾屋さんの長女のご主人が兵庫県で高校教師をしておられ、今治市への里帰りの折りに進路相談に乗ってくださいました。2年生で数学に躓き、3年生で英語に難渋し、強いて言えば漢文が好きだと申したところ、中国哲学という学問分野があり、広島大学には中哲で日本一の先生がおられると言って、文学部を薦めてくださったのです。運良く広島大学文学部哲学科中国哲学専攻に入学できた私は、その先生に巡り会いました。先師池田末利教授がその人。ちなみに推薦者であるご主人は広島文理科大学最後の卒業生で、池田教授の受業生でした。
  
 期待していたとおり、池田教授は当時の中国学界に重きをなしておられました。9年間の学生生活の期間に広島大学の多くの優れた先生方の講筵に侍りましたが、やはり池田教授の授業が強く印象に残ります。現在の日本では絶学の危機に瀕している甲骨学・金文学の手ほどきを受けたのは貴重な経験でした。
    
 しかしなんといっても厳しい漢文読みの演習で鍛えられたことは忘れがたい。中でも『左伝注疏』の演習。学生生活修了から15年後、幸いにも母校に就職することができた私は、池田教授の顰みに倣って学部の演習に『左伝注疏』を選び、以来20余年間続けてきました。そして全60巻のうち巻1から始めて巻12までで今日を迎えた次第。退職後もこのまま巻13以降の訳注を続けたいと思っています。日暮れに近く、巻60までたどり着くには、まだ遙かに遠い道のりですが。
  
 さても昭和41年の入学以来、広島大学文学部に育てられ、広島大学文学部・文学研究科で教育・研究に従事できたのは、まことに幸福なことでした。多くの卒業生・修了生のみなさま、どうもありがとうございました。教職員のみなさま、どうもありがとうございました。今後の文学研究科の益々のご発展をお祈りいたします。
    
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【3.リラアワーレポート:就活性のためのソーシャルメディア入門 広報・社会連携委員 衛藤 吉則】 

 1月17日(火)に、本文学部の卒業生でソーシャルメディア研究の分野で幅広く活躍されている藤代裕之氏(学習院大学・早稲田大学政治学研究科非常勤講師)をお招きし、リテラアワーを開催しました。その内容は、翌日の中国新聞にも掲載されました。その記事を紹介したうえで、藤代氏と聴講した学生のコメントを以下に掲載します。
  
 広島大大学院文学研究科は17日、就職活動をする学生たちにツイッターやフェイスブックなどの有効な活用法を伝える「就活生のためのソーシャルメディア入門」を東広島市鏡山のキャンパスで開いた。文学部出身で元新聞記者のジャーナリスト藤代裕之さん(38)が講師を務めた。学生や教職員約40人が受講した。藤代さんは、フェイスブックなどで自分の経歴や思いを発信することで「自分を見つめる機会になり、特長を伝えやすくなる」と説明。企業や従業員との出会いにつながる一方で、「いい加減な内容ならば、企業が閲覧する可能性もあり、やらない方がいい」と警告もした。
(「交流サイトで就活指南 広大」中国新聞、18日朝刊5面、中国総合)
  
○藤代裕之氏のコメント「地方大学から未来を拓くために」  
 人生は分からないものです。決して優等生でもなかった私が、それだけは自信を持って言えるのですが、母校の教壇に立つ日がくるというのだから… OBにとってとても光栄な出来事は、小さなチャンスと色々な人と想いがつながった結果でおきた「奇跡」のようなものです。
  
 文学部出身というと就職や仕事で「役に立たない」と言われることも多いと思います。長引く不況と就職活動の厳しさから、資格の取れる理系学部の人気が高まっているようです。しかし、不透明な時代だからこそ考える力が必要です。それは文学部で学べることです。学生時代には気づかなかったけれど、視野の広さと考える深さは、ずいぶん鍛えられました。
  
 東京のいくつかの大学で教えるようになって思うのは、地方の国立大学の教育環境は本当に恵まれています。けれども不利な点もあります。東京など都市部への距離があり、刺激的なイベントも少ない。ソーシャルメディアはそこで補えるツールです。
  
 大学を卒業して故郷の徳島に帰って新聞社で働いていたころは、あまり不利な点を実感することはありませんでしたが、ソーシャルメディアを利用するようになって、差をすごく感じるようになりました。場所を超えて人とつながれることにより、第一線で活動している人たちの努力や問題意識の高さが伝わってきたのです。要するに自分は「世界」を知らなかっただけだったのです。
  
 大学生や若いビジネスパーソンが、ソーシャルメディアを駆使して世界とつながって様々な活動をしています。東日本大震災でボランティアや復興支援をしたり、ウェブサービスをつくってアメリカの起業家や投資家にプレゼンしたりしている学生もいます。社会は大きく変わってきました。まだまだ地方ではソーシャルメディアを使っている人は少ないのかもしれませんが、ソーシャルメディアを使うことで、地方のいいところを享受しながら、東京や海外とつながって戦う事ができるのです。もちろんソーシャルメディアを使わないという選択もありますが、理解した上で使わないか、知らずに使っていないかというのは、全く違うのです。チャンスというのは、突然やってくるというのではなく、チャンスと思えるかどうか、なのです。
  
 大学で周囲の友達とだけとう狭い世界ではなく、広く世界を見据えてほしい。選択肢、つまりチャンスは、問題に直面していけばいくほど人には見えにくくなっているものです。たとえば、就職活動の終盤で希望の業界に行き詰って他の企業を考えても、既に募集が終わっていることがあります。活動前から好奇心を持って、いろいろな業界や企業を調べておけば選択肢が増えます。それがチャンスを創るということですし、未来を拓くということなのです。ソーシャルメディアというツールを使って地方から未来を切り拓いていってもらいたいと思います。
    
○「藤代裕之氏の講演を聴いて」文学研究科 人文学専攻 2年 秋吉 和紀
 去る1月17日、私が所属する西洋哲学研究室の大先輩、藤代裕之氏による「就活生のためのソーシャルメディア入門」と題された講演を拝聴した。 "ソーシャルメディア"(以下、SMと略記する)とは、近年利用者が増加しているmixi、twitter、Facebookなどといった情報発信媒体の総称である。
   
 藤代氏は、このSMを、「個」のメディアであると述べた。なぜなら、新聞やテレビといった旧来のマス・メディアでは、情報発信は記者や有識者といった一部の担い手だけに限られたものであったが、他方、SMは、一個人が "日記"や"つぶやき(ツイート)"などを通して、社会の不特定多数の人々に広く意見を述べ、創作を発表し、記事を書き、商品の評価を掲載することができるものだからである。
  
 このようなSMを藤代氏は様々な人とつながるための「武器」として、就職活動の場面やあらゆるビジネスシーンで活用することを説いた。藤代氏は講演のなかで、グーテンベルクの活版印刷術を引きあいにだしながら、SMが成熟しつつある現代を「メディアの変革期」と位置づけていた。グーテンベルクが改良したとされる優れた活版印刷の技術が、その後の宗教改革のみならず、人々の認識や学問知のあり方にも変革をもたらしたことは、今更言うまでもない。
  
 YouTubeに中国漁船衝突映像が投稿されたことや「アラブの春」でFacebookが重要な役割を果たしたことを考えると、SMが現代社会に多大な影響を与えているのは確かである。では、それが人々の認識や学問にどのような変化をもたらすか。人文学を専攻する一学生として、藤代氏のユーモア溢れる講演を聴きながらそのようなことに思いを巡らせた、夕暮れの一時であった。(*なお、講演の感想の書くにあたって、藤代裕之『発信力の鍛え方 ソーシャルメディア活用術』を参照した。)
  
 以上、両名によるリテラアワーを受けての感想でした。
なお、藤代氏の活躍は、以下のインターネットサイトでみることができます。ご参照ください。
・著書『発信力の鍛え方』(PHPビジネス新書)
・ブログ「ガ島通信
日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員としての活躍

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【4.「2012リテラウィンターコンサート」レポート 山本 庸子】 
  
 2月18日(土)広島大学西条キャンパス内サタケメモリアルホールにて、広島交響楽団弦楽四重奏をお迎えして『文学研究科主催 第8回 リテラウィンターコンサート』を開催いたしました。当日は、早朝に降った雪が残る厳しい寒さでしたが、東広島市内外からたくさんの方々にお越しいただきました。
  
 今回は、第1部に東広島で活動されている団体「邦楽グループKAMO」に出演していただきました。本番前、大事そうにジャケットの内側に尺八を入れておられたのでお聞きしたところ、「尺八は冷えると音律が下がるので温めているんです。音程を保つのがたいへん難しい楽器なんですよ。」と教えてくださいました。そのようなデリケートな楽器で編成されているとは思えないほど、箏、三弦、尺八、しの笛、つづみ(鼓)、和太鼓による演奏は、邦楽=「春の海」という私のイメージを一変させる、とても現代的で迫力のあるものでした。
    
 第2・3部の広島交響楽団弦楽四重奏による演奏は言うまでもありません。特に第2部のメイン曲、ハイドンの「ひばり」では、高い技術に裏付けされたパフォーマンスを聴かせていただきました。毎回アンケートでも皆さんに好評をいただいているのが,チェロの伊藤さんの進行です。的を得た曲目解説とユーモアのある話で客を引き付け、聴くことに集中させるテクニックはどこで腕を磨かれたのでしょうか。また、表情豊かに演奏されるヴァイオリンの山根さんに魅了された方も多くいたようで、「演奏者が楽しそうだと聴いている私たちも楽しく幸せになる!」との感想をいただきました。
  
 ところで、毎回、会場内のお子様の声についてのご意見をいただいておりますが、リテラコンサートは、東広島市内でレベルの高い生の演奏を無料で提供することで、社会貢献活動の一端を担うことを目的として開催しています。小さなお子様を連れた方、仕事や家事に追われる方など様々な方に、音楽に触れる豊かな時間を楽しんで頂きたいと思っていますので、どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします。
  
 来年度もリテラコンサートを開催いたしますので、皆様楽しみにお待ちください。
 
 最後に司会を担当した高橋祐太さんから感想を寄せていただきましたので、ご紹介いたします。
  
 司会を務めさせていただいた文学部3年生の高橋です。
大勢の前で話すのは得意ではなく、はじめは少し緊張してしまいました。コンサート開幕早々にとちってしまい、「間違えました!」とアナウンスしてしまった場面もあったのですが、会場の暖かな雰囲気のおかげで、リラックスして話すことができました。また、舞台袖からではありますが「邦楽グループKAMO」さんの伸びやな邦楽の調べと、「広島交響楽団」さんのバラエティー豊かな曲目の演奏を楽しませていただきました。演奏者も観客も、音楽を通して一体感を体験することができる素晴らしいコンサートだったと思います。私にとって非常に良い体験になったと思います。最後に、今回司会をさせていただくにあたり色々とお世話していただいた方々や、温かい目で見守ってくださった会場の皆様に改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
   
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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】
  
○リテラアワー:2012年度「総合人間学」特別講義
【演題】 最近のアメリカにおける日本史学
【講師】 ハーバード大学教授 デビッド・ハウエル氏  
【日時】 2012年4月10日(火)16:20~17:50
【場所】 広島大学 文学研究科大講義室B204(リテラ)[広島大学東広島キャンパス]
【主催】 総合人間学講座
    
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【6.広報・社会連携委員会より 井内 太郎】
  
 昨日、新聞を読んでいるとき、ふと紙面の片隅に目をやると、感慨深い記事が私の目にとまりました。英語の代表的な百科事典で244年間にわたって出版されてきた『ブリタニカ百科事典』の書籍版が、2010年版をもって書籍としての発行に幕を閉じるというものでした。『ブリタニカ』といえば、1768年にスコットランドのエディンバラで初版が発行されてから、現在はそこから数えて第15版(全32巻)が市販されています。日本語版としては、第15版が『ブリタニカ国際大百科事典』(1974年)として発売されました。この事典は、18世紀ヨーロッパの啓蒙主義の時代に、フランスやスコットランドなどで自由な人間精神による知識の進歩と共有を信じる知識人を中心に行われた百科事典の編纂運動の1つの成果であり、まさに当時の知識人の英知を総動員した人類の知の宝庫といってよいでしょう。
  
 近年はこうした百科事典や辞書などの浩瀚で場所をとる書籍が邪魔者扱いされ、書籍版のCD-ROM化が進んでいることは、世の流れといえます。私の洋書講読ゼミでも、学生たちはコンパクトな電子辞書を持ってきてボタン一押しか二押しで簡単に英単語や英熟語を引き当てます。彼らには辞書をめくってやっとお目当ての単語にたどり着いた時の感動はわからないでしょうね。
  
 また昔の史料のデジタル化も急速に進んでいますが、私は文字が書かれた紙や羊皮紙に実際に触ったり匂ったり、書き手の筆致やインクの濃淡をみたり、さらに書状などにまとわりついた埃が16世紀のものというだけで感動してしまいます。書籍版には、それでしか味わえない多くの感動があるのであり、デジタル化世代の学生ともそのような感動を共有できればと思ってやまない今日この頃です。
  
 本号は23年度メルマガの最終号となります。本号には、平成23年度優秀卒業論文発表会の様子や退職される先生方のごあいさつを掲載させていただきました。私も2年間のメルマガ編集長ならびに広報・社会連携委員長の任期を終えることになりました。この2年間、メルマガ発行、リテラコンサート、サテライト展示、各種公開講座など様々な企画を通じて、広島大学文学部の知の営みを社会に還元すべく努力してまいりました。
 今後も広報・社会連携委員会が架け橋となって、文学部と皆様の間で学ぶことの喜び、知ることの喜びを共有できればと思います。
  
「楽しんでやらなきゃ何事も身につきはしません(No profit grows where isno pleasure ta'en.)」(W.シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第一幕第一場より)  
  
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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  山内廣隆
編集長:広報・社会連携委員長  井内太郎
発行:広報・社会連携委員会

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