メールマガジン No.52(2012年11月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.52(2012年11月号)
 2012/11/26 広島大学大学院文学研究科・文学部
       
□□目次□□
1.「文藝学校」第10回記念講演会の報告
2.リテラ「21世紀の人文学」講座2012レポート
3.第6回広島大学祭ホームカミングデー「世界とふれあう/語学カフェ」レポート
4.文学研究科外国人留学生懇親会レポート
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より
      
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【1.「文藝学校」第10回記念講演会の報告 日本・中国文学語学講座教授 妹尾好信】             
 広島大学文学研究科とNPO法人本の学校が主催する「文藝学校」第10回記念講演会が、平成24年10月27日(土)・28日(日)の両日、鳥取県米子市の皆生温泉近くにある本の学校今井ブックセンターで開催されました。
  
 同講演会は、平成15年に米子・松江の2会場で第1回を開催し、以後は米子を会場にして毎年秋に開催してきました。広島大学文学研究科で行われている研究の一端を地域の人々の前で開陳して、人文学とはどういう学問なのかを知っていただくとともに、地元の高校生に進路選択の参考にしていただきたいという思いで始めた企画です。毎年必ず足を運んでくださる熱心なリピーターの方々も多く、学問の秋にふさわしい年中行事としてすっかり定着してきた感があります。
  
 今回は記念すべき10回目なので、10年ぶりに2日間の開催とし、通常の倍の6つの講演という拡大版となりました。特に2日目は主に高校生向けとし、午後には受験相談の場も設けることにしました。ポスターを作成して伯耆・出雲地区の高校に配布するなど、いつもに増して宣伝にもつとめました。実のところ、リピーターには年配の方が多く、ここ数年は高校生の姿がほとんど見られないことが残念だったからです。
  
 第1日目は、やや下り坂ながら前日の好天の名残で、朝には霊峰大山の姿がくっきりと望まれました。午後1時半開始でしたが、お昼過ぎには人が集まり始めました。中に、制服の高校生の姿がちらほら見られたのはうれしいことでした。この日の講演は、次の3本でした。
1.松本陽正:漱石『こゝろ』の魅力
2.J.G.サントニ:コルシカ島をご存知ですか?
3.位藤邦生:日本文学つまみぐい
  
 松本教授は現代フランス文学が専門ですが、今回は日本の文豪夏目漱石の代表作『こころ』について語りました。教科書教材として高校生にもなじみのある作品なので、西洋文学研究者らしい独特の視点で『こころ』という作品の魅力を熱く語る話は聴衆を惹きつけました。サントニ教授は、地中海に浮かぶフランス領のコルシカ等の自然・歴史・文化など、あまり一般の日本人が知らないことを、スライドを駆使してふんだんな画像資料を示しながら語りました。外国人教員による講演は「文藝学校」の歴史上初めてです。流暢な日本語のエスプリのきいた語り口で、会場はまるで地中海にいるかのような気分に包まれました。そして、ほぼ毎年行われている位藤名誉教授の講演は、リピーターの方々が最も楽しみにしているものです。今回は、『古事記』の倭健命の話を中心に、さまざまな蘊蓄(うんちく)を傾けて文学の面白さを説く内容でした。若い高校生に向けて発せられた慈愛に満ちたメッセージもきっと心に響いたことでしょう。
  
 そして、第2日目。前日の天気予報は芳しくなく、強い風雨となるかもしれないと言われていましたが、前夜降り出した雨は早朝には止んで、急速に回復しました。山陰では天気予報がよいように外れることはめったにないのだそうで、まことに幸運なことでした。2日目の講演は、次の3本でした。
1.稲葉治朗:ことばの不思議
2.妹尾好信:空中神殿出雲大社と『古事記』神話
3.山内廣隆:哲学―時代を凝視する思索
  
 稲葉准教授の話は、高校生を意識して、専門のドイツ語よりも日本語を主体にした音韻学上の諸問題を、身近な例を引きながら易しく説きました。1日目よりは多く来てくださった高校生の皆さんとのやりとりもとてもよかったと思います。妹尾の話は、『古事記』成立1300年を記念して、ご当地のヒーロー大国主命の話。近年大きな柱の跡が発掘されて、古代の出雲大社は天にそびえる高層建築だったことがわかりましたが、どうしてそんな高い建物が造られたのか、その理由が『古事記』に書かれていることを紹介しました。案外地元の高校生も知らないことのようで、『古事記』神話と歴史が無関係でないことを実感してくれたようです。最後の山内教授は、「文藝学校」始まって以来の哲学の話です。西洋の哲学ははるか古代や中世の古典的な学問ではなくて、現代を生きる我々にとっていかに役立つかということを、喫緊の課題である脱原発問題にからめて話しました。若い人も年配の方も、それぞれ心に感じるところが多かったことと思います。
  
 両日とも40数名の参加で、決して規模の大きな講演会ではありませんが、講師と聴衆の距離が近いだけに、終始なごやかな雰囲気で進みました。年齢層は10代の高校生から90代の女性まで実に多彩でしたが、皆さん熱心に興味津々で聴いてくださって、まさに生涯教育の場そのものでした。アンケートによれば、高校生の皆さんはこれから大学で学ぶ学問の一端に触れて目を開かされた気がしたとありますし、一般の方も高校生がいることで例年より新鮮な気持ちで聴くことができたとおっしゃっています。
  
 来年以降も「文藝学校」講演会は続けたいと思います。願わくば、高校生のリピーターも現れてほしいなと思います。特別な予算措置をしてくださった文学研究科長、さまざまお骨折りいただいた今井書店グループ、NPO法人本の学校の皆様、開催に際してご協力いただいたすべての方々に心より御礼申し上げます。また来年米子でお目にかかります!
                                
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【2.リテラ「21世紀の人文学」講座2012レポート】 
  
 2012年10月13日13時30分より、リテラ「21世紀の人文学」講座2012を広島市まちづくり市民交流プラザで開催しました。今年度も広島市のリカレント講座と提携し、100名近くの受講者にご参加いただきました。
  
 今回のテーマは、『古事記』が編纂されてから本年で1300年目を迎えることに鑑みて、「『古事記』から日本を読む」とし、日本史分野の西別府元旦教授と日本文学分野の久保田啓一教授による講演を行いました。
  
 西別府教授は「古事記は偽物?-おもに「古事記」の「序」をとおしてその成立を考える-」と題して、古事記の成り立ちと役割について読み解かれました。久保田教授の「本居宣長以前の「古事記」享受」では、江戸時代を中心に『古事記』がどのように読まれてきたのかを明らかにされました。  
 両教授のお話の後、会場からの質疑もあり、充実した公開講座になりました。
     
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【3.第6回広島大学祭ホームカミングデー「世界とふれあう/語学カフェ」レポート】 
  
 第6会広島大学祭ホームカミングデー文学研究科企画では、今年で7回目となる「世界とふれあう/語学カフェ」を開催しました。今回は、韓国、中国(新疆ウイグル自治区)、ベトナムの留学生が協力してくださいました。
  
 それぞれのお国の民族衣装を着てB153教室に三人(韓国・李容哲さん、中国・トウ亜斎娜さん、ベトナム・フィン・ヒエン・トロンさん)が登場すると、会場は一気に華やかや雰囲気になりました。進行役の川島優子准教授が会場の皆さんをそれぞれのお国のカフェに案内しました。
  
 今年の特徴は、飲み物の作り方の実演。新疆ウィグル自治区を紹介するトウ亜斎娜さんは、塩入りミルクティー、ベトナムを紹介するフィン・ヒエン・トロンさんはベトナムコーヒーを、「どのような時によく飲むのか」など話しながら実際に作っていただき、会場の皆さんにも飲んでいただきました。
  
 満員の会場は、始終和やかな雰囲気に包まれ、いつもの教室が国際交流の場となった楽しい語学カフェでした。(当日の様子は、東広島KAMONケーブルテレビで11月7日から1週間放送されました)留学生を代表して、トウ亜斎娜さんの感想を紹介します。
  
 トウ亜斎娜(比較日本文化学講座)
 日本に来て1年目の私は初めて語学カフェに参加しました。11月3日は私の24歳の誕生日でした。その日に、自分の故郷―中国新疆ウィグル自治区を皆さんに紹介し、少数民族の伝統的な飲み物―塩入りミルクティーを作って差し上げ、しかも、韓国とベトナムのおもしろいことも知ることができ、とても楽しくて、良い思い出になりました。皆さんとの情熱あふれる交流で、外国人である私が日本社会に受け入れられたと感じることのできた楽しい一日でした。
 留学生活には、勉強と研究することだけではなく、色々なことを経験し、様々な人々と出会い、日本と中国の間の理解を深め、友情の固い絆を強め、人生を豊かにすることは一番大事だと思います。日本の茶道には「一期一会」という心得がありますが、私は大好きです。「一生に一度しか出会いの無いものとして、悔いの無いようにもてなす」。出会う人にもてなすだけではなく、更に言えば、自分自身も悔いの無いように生活し、一度しかないものとして、頑張っていこうと思います。(トウ=人偏に冬)
  
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【4. 文学研究科外国人留学生懇親会レポート】
  
 11月12日(月)18時から文学研究科外国人留学生懇親会を学士会館レセプションホールで開催しました。今回は、外国人留学生56人、学生チューター3人、教職員21人、合計80人の参加がありました。新入生の自己紹介やピアノ演奏、ビンゴゲームなどで和気あいあいと楽しい時間を過ごすことができました。当日、ピアノ演奏をしていただいた何維さん(比較日本文化学専攻)の感想を紹介します。
  
 私は幼い頃、とても無口な子でした。音楽の世界に入ってからはじめて心の扉を開くようになったんです。「音符は世界共通の不思議なランゲージ」と私のピアノの先生がそう言ってくれました。言葉は通じなくても、奏でられるメロディーで人と人の心は必ず通じ合えます。音楽の魔力、言葉の魅力、そしてコミュニケーションの重要さは今回の留学生懇談会で私は改めて認識していました。今は「国際的な人材」が求められる時代が到来しました。我々は自分の属してる国、自分の研究分野に閉じ込めるのではなく、幅広い知識を身につけ、人脈を広げる能力が必要だと思います。
 懇談会で自分のピアノで人に喜んでもらって、我々は親睦を深めるだけでなく、留学生同士が交流を深める場としても大変有意義なものであると感じました。今後も皆さまとコミュニケーションの機会があるとうれしいです。ありがとうございました。
  
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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】
  
○日本中世英語英文学会第28回全国大会を開催します
【日時】2012年12月1日(土)・2日(日)
【場所】大学院文学研究科 東広島キャンパス
      
○内海文化研究施設 第25回季例会公開講演会を開催します
【日時】2012年12月10日(月)
【場所】大学院文学研究科 B104号教室[東広島キャンパス]
    
○「2013 リテラ ウィンターコンサート」を開催します
広島大学大学院文学研究科主催リテラ ウィンターコンサート 2013 WINTER CONCERT
【日時】平成25年2月16日(土)14:00開演(13:30開場)
【会場】広島大学サタケメモリアルホール(広島大学東広島キャンパス内)
【ステージ構成】広島交響楽団木管五重奏
 ☆入場無料
  
〇サテライト展示1階ロビー【コレクション企画展示】のご案内
 11月から文学研究科サテライト展示を『愛/LOVE』に模様替えしました。「愛」といっても色々あります。恋人たちのものだけでなく、家族の愛、動物への愛などもあるし、またその表現の仕方もさまざま。英文学の資料が表す”愛”をご覧ください。今回、サテライト展示としては初めて動画展示もしています。お近くにお越しの際は、是非ご覧下さい。
  
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【6.広報・社会連携委員会より 川島優子】
  
 今年度より二年間、広報・社会連携委員会の委員を務めさせていただきます川島優子です。よろしくお願いいたします。
 本号には、妹尾先生による「文藝学校」第十回記念講演会の報告、ホームカミングデーに開催された「語学カフェ」の報告および留学生の感想、「外国人留学生懇親会」の報告および留学生の感想を掲載しております。
 「語学カフェ」では司会を担当させていただきましたが、多くの市民の方々にお越しいただき、和やか且つ活気にあふれた楽しいひとときを過ごすことができました。今年は、日中、日韓関係が悪化し、政治の世界のみならず、経済界、民間レベルにまでも大きな影響が及んだ年になりました。「国」というものを良くも悪くも強く意識させられた一年だったように思います。しかし「語学カフェ」でとても楽しそうに自国の文化を紹介してくれる留学生たち、またそんな彼らの話に熱心に耳を傾け、様々な質問を投げかけてくださる市民の方々の姿を見ていると、「国」というものはあくまで一人一人の人間の集合体なのだということに改めて気づかされました。「木を見て森を見ず」という言葉は本来マイナスの意味で使われますが、こういう時こそ、「森ばかりでなく木を見る」姿勢が大切なのだと教えられた思いです。
 こうした「一本一本の木をきちんと見つめる」気持ちを忘れることなく、引き続き広報・社会連携委員会のお仕事をさせていただきたいと思っております。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  勝部眞人
編集長:広報・社会連携委員長  友澤和夫
発行:広報・社会連携委員会

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