メールマガジン No.61(2014年5月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.61(2014年5月号)
2014/5/26 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.文学研究科長からのご挨拶〜2期に向けて
2.新任教員挨拶 - 根本裕史准教授
3.「総合人間学」特別講義レポート
4.文学研究科(文学部)ニュース
5.広報・社会連携委員会より
    
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【1.文学研究科長からのご挨拶〜2期に向けて 文学研究科長 勝部眞人 】

  諸般の事情から研究科長2期目を迎えることになりましたが、この間の急速な大学改革の動きのなかで、やり残したことが山積みの状態にあります。

  曰くミッションの再定義、曰く大学改革の大きなうねり、曰く国際化推進のためのさまざまな手当…。おそらく、数年前と比較しても、最近の動きは展開が速すぎるように思われます。幸いなことに昨年広島大学は研究大学(RU)22機関に選定されましたが、それも裏を返せば、目に見える成果を求められるということでもあります。

  およそ人文学は、そうした費用対効果・ランキングといった“目に見える”成果とは無縁の世界にあるでしょうし、目先の評価にとらわれるべきものではないと思われます。多様な価値観、文化、学術的関心をぶつけ合って、人間存在の本質に迫る学問が人文学であります。

  とはいえ、“貧すれば貪す”の喩えではありませんが、政府財政状況の悪化で、学問を取り巻く環境が確実に変わりつつあることもまた事実です。これまでの常識が通用しなくなりつつあると言っても、過言ではないと思われます。

  こうしたなかで、人文学はどうあるべきなのか…。答えは簡単ではありませんが、一つのヒントは「温故知新」。変えてはならない本質部分は矜持を保ちつつ、いっぽうで時代の変化を見据えながら新たな対応を探っていくこともまた必要なことなのでしょう。

  このように大変な時期にさしかかっているのは事実ですが、人が生きていくためには楽しみもまた大事なことです。長らく中断していた文学部ソフトボール大会を、秋にはぜひ復活したいと思います。分野対抗戦で熱くなる日があってもいいのでは…と思います。 2年間よろしくお願いします。

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【2.新任教員挨拶 応用哲学・古典学講座准教授 根本裕史】 

  この4月に文学研究科、応用哲学・古典学講座に着任しました。大学で教育に携わるのは初めての経験になります。これから少しずつ教育・教務のことを学んでいく所存でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

  私は2009年に本学にて博士(文学)の学位を取得しました。その後、筑波大学での3年間の研究を経て、今年の2月まで中国青海省の青海師範大学にて研究に携わって参りました。このたび母校に舞い戻ることができましたのは光栄であり、また非常に責任のある立場であることを痛感しております。

  私の専門はチベット仏教です。特に14〜15世紀に活躍したツォンカパに由来するゲルク派の思想体系(時間論・論証学・仏陀観など)の解明を目指しています。ツォンカパはインド仏教の思想を網羅的に研究し、時には大胆な解釈を行ないながら、独自の視点で再構成を試みた人物です。ツォンカパこそがチベット仏教史の転換点になったと言っても過言ではなく、彼を境にして、チベットの学者達の問題意識は大きく異なります。そして、彼が築き上げた学問の伝統はチベットだけでなく、満洲、モンゴル、ロシアに広がり、現在に至るまで影響力を及ぼしてきました。ツォンカパのインド仏典理解を正確に分析し、彼を中心に据えてチベット仏教史を記述することは、内陸アジア文化を広く理解する上で非常に重要な意味を持っています。

 さらに、近年はチベットの古典文学や詩論にも関心を広げています。ツォンカパは卓越した思想家であると同時に、優れた詩人として知られています。そこでツォンカパの詩作品を紹介すると共に、チベット語美文詩の特徴やサンスクリット修辞学からの影響について明らかにしたいと考えています。

  今後は広島大学を拠点としてチベット学・仏教学の発展に貢献できるよう尽力します。そして、最先端の学問を創造する喜びを学生と共有したいと思います。

☆根本准教授のプロフィールは、こちらをご覧ください。

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【3.「総合人間学」特別講義レポート  総合人間学講座准教授 溝渕園子】

  4月15日、大学院の共通基礎科目「総合人間学」の特別講義が、リテラアワーを兼ねて開催されました。
 今年度は、学外からの特別講師に台湾東海大学文学部の蕭幸君先生(日本近代文学・表象文化論専攻)をお迎えしました。「眼差されるものから、眼差す者へ―映像から観る台湾、脱ポストコロニアル身体への試み」と題し、ご自身の経験談や映像資料を交えながら、映画にあらわれた台湾の歴史認識と文化状況の問題について、わかりやすくお話ししていただきました。

  蕭先生の硬軟自在の巧みな語りと気迫のこもった講義内容、普段なかなか目にする機会のない映像資料に引きこまれていき、100名を超える参加者が集まった会場は、90分という時間枠が窮屈に思われるほどの熱気に包まれていました。

  受講者からは、この講義を通して「死者の記憶と共にあり続ける生」や、「文化を成り立たせる様々な力のありよう」、「戦争をなくすために文学にできること」について考えさせられた、という声が聞かれました。

 「総合人間学」特別講義も3回目を迎えました。当講義は公開講演会としても開放しており、参加者の輪が、文学研究科から他研究科の教員・学生や学外の研究者へと広がりを見せています。こうした交流の場が、知のネットワークのあり方を考える上で何らかのきっかけになればと願っています。

  この特別講義に参加した学生の感想を紹介します。

○博士課程前期(比較日本文化学) 上田なつの

  台湾を舞台とした映画は見たことがなかったので、この講義を受けて、見てみたいと思いました。 映画の表面的な主題に隠されたメッセージを考えて鑑賞したいと思います。『セデック・バレ』では、原住民のイメージが型にはまったものであり、原住民側に視点を置いた作品であるため、 鑑賞する人々が偏った見方をしてしまう可能性があるのではないかと思いました。また、「映画は歴史的倫理を背負うか」という問題を考えさせられました。映画は様々な人が鑑賞し、影響を与えるものであるため、歴史的倫理に対する責任が全くないとは言い切れないと感じます。
 
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【4. 文学研究科(文学部)ニュース】

○リテラ「21世紀の人文学」講座2014を開催します    
【テーマ】「第一次世界大戦とはいかなる戦争だったのか」
【日時】2014年12月6日(土)13:30~16:40
【場所】広島市まちづくり市民交流プラザ
申込受付開始は、10月1日からです。
詳細は決まり次第、文学研究科HPでお知らせします。

〇サテライト展示1階ロビー【コレクション企画展示】のご案内
 5月から文学研究科サテライト展示を、【シェイクスピア生誕450周年】として文学部が所蔵し、受け継いできたシェイクスピア関係のテクストと、現代演劇や映画の形で生まれ変わり続けてきたシェイクスピア作品の一部を紹介しています。お近くにお越しの際は、是非ご覧下さい。
 
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【5.広報・社会連携委員会より 広報・社会連携委員長 吉中孝志】

  文学研究科の運営組織の顔触れは、隔年で変わります。この4月もその時期で、我がチームの大エース勝部研究科長は続投ですが、広報・社会連携委員会は、委員長を含め全員が新メンバーとなりました。今後もより充実した広報・社会連携活動につとめる所存ですので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

  好調なカープの打線のように投打が噛み合って、応援してくれる人たちの期待を裏切らないばかりか、にわか「カープ女子」ならぬ、にわか文学部ファンさえ作る勢いで、と思っています。

  最近、ある学生さんから聞いた話ですが、文学部の学生は、他の学部の学生たちから「いいね、君は遊ぶん学部なんだね。」と言われているらしい。朝から晩まで授業や実験でびっしりのスケジュールをこなす他学部の学生と比較すると文学部の学生は暇だらけ、休みだらけらしい。う~ん、やっぱりそうなんだろうか。で、この「遊ぶん学部」というレッテルは、純粋に羨ましがられているのか、馬鹿にされているのか。

  実はこれは深い意味を持つ問題であるような気もします。本学の学長いわく「学問は最高の遊びである」という一種の比喩表現が、文学部や文学研究科の多くの学問の場合、単なる比喩というよりも実際にそうなのではないか。実はあの、実学に対する虚学という学問領域の本質と重要性にも関わっているように思います。

 それで、もしも私が「いいね、君は遊ぶん学部なんだね。」と言われたら、本当は、私が若き日、毎日毎日、たくさんの本を読みながら想像力の翼で飛翔していた文学青年だった頃、友人がいつも言っていたように胸を張って答えたいのです。「羨ましいだろ。でもオレは暇だけど忙しんだ」と。ただただ忙しくて忙しい今の境遇からすると、ああ、あの頃にもう一度戻りたい。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長 勝部 眞人
編集長:広報・社会連携委員長 吉中 孝志
発行:広報・社会連携委員会

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