解題:秀敬関係文書目録

執筆者

酒井真

はじめに-秀敬(ひでけい)氏の略歴-

 秀敬氏は、大正11(1922)年10月19日に岡山県に生まれた。昭和18(1943)年9月に広島高等師範学校文科第三部を卒業、昭和21年9月に広島文理科大学地学科地質鉱物学専攻を卒業した。その後、昭和21年9月広島文理科大学助手に着任し、昭和27年6月に広島大学理学部講師、昭和38年4月に広島大学理学部助教授となった。以後、教養部助教授、教養部教授、総合科学部教授を歴任し、昭和61年3月、広島大学を定年退官した。
 この間、研究の面では、四国地方に広く分布する三波川帯の地質構造、変成作用、キースラーガーの層序学的研究等を行い、主に構造地質学の分野で優れた業績をあげた。一方学内においては、学生委員会委員長をつとめ、大学紛争の解決に尽力した。また、将来計画特別委員会一般教育・教養部問題小委員会専門委員として、教養部の改組に取り組むなど、本学の充実、発展に貢献した。
 本目録には、上記の秀敬氏の経歴に関わる資料を所収しており、特に、本学在任中の資料が数多く含まれている。以下、秀敬関係文書の受入経緯および資料の概要について述べる。

1. 受入および整理の経緯

 平成21(2009)年、当時図書館が行っていた貴重資料調査に秀敬名誉教授資料の情報が上がってきた事について、石井道悦副図書館長から広島大学文書館の方に連絡を頂いた。また、それ以前に、秀敬氏が生前、大学紛争時の資料を大学にご寄贈下さるご意向であった事を今中比呂志名誉教授から広島大学文書館に伝えられてもいた。そこで、秀敬氏のご長男で当時、広島大学医学部皮膚科教授であった秀道広氏に連絡を取り、寄贈を受けることとなった。まず、平成21年1月に当初寄贈予定であった箱詰めされた資料を第一次受贈分として受け入れを行った。その後、秀敬氏の旧宅の資料調査を行い、第二次受贈分として受け入れを行った。
 整理にあたっては、第一次受贈分は内容別に箱詰めされていたので、形態による分類は行わず目録を作成し、目録には箱番号を付した。第二次受贈分は、形態別に大分類を定め、書類、書簡、書籍・雑誌等の3つに分類し、書類については、小分類として、研究関連、広島大学関連、その他の3項目を設定して目録を作成していった。なお、第二次受贈分については、資料の所在情報として、秀敬氏の旧宅の保管場所を目録に付した。

2. 資料の概要

 次に、秀敬関係文書の概要を紹介する。本目録に所収している資料は、2,219点であり、令和4年3月現在の状況は以下のとおりである。

Ⅰ. 第一次受贈分-316点

Ⅱ. 第二次受贈分-1,903点

1. 書類-1,127点

(1)研究関連-195点
(2)広島大学関連-534点
(3)その他-398点

2. 書簡-249点
3. 書籍・雑誌等-527点

 

以下、項目ごとの資料の概要について紹介する。

Ⅰ. 第一次受贈分

 本分類項目には、大学紛争関係の資料の他、野帳や地質図等の調査・研究関連資料、日誌、講義ノート、書籍等を採録した。

Ⅱ. 第二次受贈分

1. 書類

 書類には、書簡、書籍・雑誌等を除いた資料を採録した。また、本目録は、封筒単位で採録したため、封筒や袋等に書簡、書籍・雑誌等が入っている場合も、書類として採録すべき資料が入っている場合は書類として扱った。

(1)研究関連

 本分類項目には、秀敬氏が執筆した論文の原稿や下書き、メモ等の他、地質調査関係の書類やノート等を採録した。地質調査関係の資料には、個人研究の他、秀敬氏も参加していた金属鉱物探鉱促進事業団の広域調査関係の資料などがある。

(2)広島大学関連

 秀敬氏は、昭和27年6月に広島大学理学部講師となり、以後、昭和61年3月に定年退官するまで、理学部、教養部、総合科学部において教育・研究に携わった。本分類項目では、主にこの期間における広島大学関係の資料を採録した。内容としては、理学部、教養部、総合科学部関係の資料や大学紛争関係の資料、教授会や学生委員会等の会議資料や会議メモなどが多く含まれている。

(3)その他

 本分類項目には、上記(1)、(2)以外の資料を採録した。資料としては、秀敬氏の経歴に関する書類や、写真、学生時代の講義ノートなどがある。また、昭和20年10月から12月にかけて、広島文理科大学地質学鉱物学教室の研究者が行った被爆岩石調査に同行した秀敬氏の調査ノート(HK0203366)や当時の状況をメモした日記帳(HK0203370)などがあり、貴重な資料である。

2. 書簡

 本分類項目には、書簡、書簡のコピー、書簡の下書きを採録した。内容としては、研究・調査に関する書簡が多い。

3. 書籍・雑誌等

 本分類項目には、書籍、雑誌、冊子、機関紙を採録した。秀敬氏が学生時代に使用した教科書や広島大学の学内刊行物などが主なものである。

おわりに

 以上、秀敬関係文書の整理の経緯及び概要について述べてきた。本目録には、秀敬氏の研究や教育活動に関する多くの貴重な資料が所収されている。特に大学紛争関係の資料や多くの会議資料、会議メモ等は、本学の歴史を研究するうえでも重要な資料である。本資料が多くの人々に活用されることを望むものである。


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